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第九節 棒の勇者、決戦に向けて(下)

「助けてー!!」

「ウキャキャ────!!」


 カヨの閉ざされた瞳は突然の乱入者によってあっけなく開かれた。


「そこどいて蜘蛛!! ……って行き止まりかい!」


 バコンッ


 ショウはセルフ突っ込みをしながら壁に激突した。

 カヨの意識は一連の行動によりはっきりと戻った。とりあえずカヨはショウに駆け寄り声をかけることにした。


「おいショウ、ショウ!?」


「あ、カヨさん……良かった、合流できたんです──って臭ッ!」


 鼻血を出しぼんやりとした表情を浮かべていたショウは急に飛び上がり、カヨから距離を取った。

 カヨの服には緑っぽい粘液がへばりつき、蜘蛛の巣効果で更に粘っこくなっている。


「失礼な! それより何だあの猿は?」


「ウキキ初めまして。ワシは斉天大聖というしがないモンキーです……」


 猿はへらへら自己紹介する。

 身長は人間の女くらいだがやたら豪勢な服に身を包んでいる。東洋のキモノとかいう奴だろうか。

 頭に金の輪をつけているが、これは余り服装とあっていない……お洒落のつもりならセンスはよろしくないようだ。

 斉天大聖は見たところ丸腰だが、今までの魔物の中でも最高クラスのオーラを感じる。決して油断は出来ない。


「ウキャキャ……、貴様が真の『棒』の勇者だな……! 匂う、匂うぜぇ!」


「いやこれは蜘蛛の粘液の臭いだよ」


「…………まあいい! 貴様が『如意棒』を使うのに相応しい奴かどうか試させてもらう!

 如意棒を持ってかかって来い!! モンキー」


 そう叫ぶや否や斉天大聖はいきなり飛び掛かってきた。

 咄嗟に避けると猿は行き止まりの壁にぶつかった。


「カヨさんこれを!」


 その間にショウから何かを受け取る。手のひらでキャッチしたそれを開くと、中には赤い小さな棒があった。


「何じゃこりゃ?」


 カヨが右手で赤い棒を摘み上げる。すると、


「うおっ!」


 途端に右手の『棒』の字が今まで無い程に激しく光った。

 その余りにものまばゆさに斉天大聖も含め全員が目を閉じる。その場で固まっていた蜘蛛達も光によって一匹残らず逃げ去ってしまった。


「……うおお」


 光が止んだ時に、カヨの手には棍棒と同じ程の長さの赤い棒──『如意棒』があった。


「これは……」


「いざ尋常に勝負! モンキー」


 我に返った斉天大聖がカヨへとひっかき攻撃を繰り出す。カヨは避けると高らかに──


「伸びろ如意棒!」


 ……………………。


「伸びろ如意棒!」


 ……………………。




「あれ!? 如意棒が伸びない!」


 カヨは信じられない様子で手元の如意棒を見つめる。如意棒はもちろん物言わない。


「何だこりゃ! こいつめ! こいつめ!」


 頭に来たカヨは如意棒をガスガス壁や床にぶつけたり、叩きつけたりした。

 しかし如意棒は若干土で汚れただけで何の反応も無い。


「どういう事だ……」


 カヨはうなだれるしかない。斉天大聖はそんなカヨの様子を見て腹を抱えて笑っている。

 カヨはとりあえず土埃を拭うため、如意棒をさすった。





「え!?」





 すると、今まで何も無かったはずの如意棒が急に伸び始めた。

 更に続けてこすると如意棒はどんどん底無しに伸びてゆく。


「そうか! 如意棒はこすると大きくなるんだ!」


「何か卑猥だなオイ!」


 とはいえショウの言ってる事は正しいようだ。

 暫らく擦らないでいると如意棒は勝手に縮んでいき、元のサイズに戻った。


「なるほど、こういう使い方すんのか。……やい猿! かかって来やがれ!!」


 カヨが通常サイズの如意棒を斉天大聖に向けながら宣言する。

 斉天大聖はようやく笑うのを止め、カヨに向き直った。


「くくく……! ワシが五十年守り続けたその如意棒を使う価値が貴様にあるのか見極めてやろう」


「五十年って大した年数じゃねぇじゃん。お前みたいな長生きしてるだけのエテ公に私が負けるかよっ」


 カヨが右手の中指を立てて挑発すると、斉天大聖は面白いようにそれに引っ掛かり、顔を真っ赤にして暴れだした。


「ふんがー!! このスケぜってぇ殺す、モンキー!!」


 斉天大聖は案の定何も考えず、カヨに向けて猛ダッシュしてきた。カヨは難なくそれを──


「──ッな!!」


 予想を遥かに上回るスピードで斉天大聖の両手がカヨの首を捉えた。振り払おうにも力が強くまるで離れない。


「殺す殺す殺すゥ! このアバズレめェ!!」


 斉天大聖の顔は鬼神のごとき怒りで塗れていた。

 カヨは胸の内から溢れだす恐怖を何とか飲み込み、如意棒を擦る。


「死ね死ね死ね………………、ウキッ!」


 首を絞める事に躍起になって他の事に何一つ頭を巡らせなかった斉天大聖は突然腹に食い込んだ棒に驚き、手を離す。


 そのまま地面に転がり込んだカヨは激しく咳込んだ。斉天大聖はさっきとは別の意味で腹を抱える。

 先に立ち上がったのはカヨだった。


「えぇい! 伸びろ、如意棒!」


 弱気な心を吹き飛ばすかのように無意味に大声を張り上げ、如意棒を力強く擦る。

 如意棒はそれに応えるかのように増長しそして、


「ウキャアッ」


 斉天大聖の顔面を捉えた。しかし如意棒の勢いは止まらず哀れな猿は引きずられ続け、壁に衝突。


 しかし斉天大聖も流石なもので、額から吹き出る血にも構わず再び猛進してくる。


「よっ……はあ!」


 カヨは今度は早めに避ける。斉天大聖は方向転換を試みようとしたが勢いを付けすぎてそれが出来ない。


「もらったっ」


 カヨが斉天大聖が激突するであろう場所に如意棒を伸ばす。


「モンキー!」


 だが斉天大聖は壁に向かって右足を突き出しそのまま蹴り上がり宙を舞う。


 カヨは予想外の動作にたじろぎ一瞬固まる。


「うっ!!」


 斉天大聖はその一瞬に飛び込んだ。

 カヨは斉天大聖のクロスチョップをもろに食らい壁に衝突した。

 その衝撃に胃の中身が逆流する。


「ゲホゲホッ……!」


「貰ったわーい!!」


 その場で嗚咽するカヨにこれぞ絶好の機会と再び宙より急降下した斉天大聖の蹴りは、外れた。


「危ないカヨ!」「ウキィ!」


 斉天大聖がカヨの眉間にぶつけるはずだった右足には深々と包丁が刺さっていた。斉天大聖はバランスを取り切れずそのまま転倒。


「……はぁっ」


 ピーターの助けにより一命を取り留めたカヨは吐き掛かった物を痰にして飛ばす。


「サンキュー、ピーター」


 そう言うと足元がふらつく斉天大聖に今度はカヨから仕掛けに行った。

 カヨと斉天大聖の打ち合いが続く。

 斉天大聖はピーターの包丁によってバランスを取りにくくなり、動きが目に見えて愚鈍になった。

 さりとてカヨもかなり消耗し、頭が揺れてるのか若干目眩がする。


 両者の実力は今、負傷による調整で均衡していた。



「俺達には何も出来んのだろうか……」


 ピーターが嘆息する。


「無理でしょう。さっきはまぐれ当たりであの猿の右足を捉えましたけど、両者共にあのスピードです……手の出しようがありませんよ」


 ショウの言う通り、カヨと斉天大聖は今や二人の目に全く止まらないほど速くなってきている。


 斉天大聖は右足の負傷があるとは思えない程速い。カイナ村まで乗ってきたペガサスよりも速いかもしれない。


 一方カヨも『超絶勇者武器』如意棒に慣れてきたのか、同じく負傷しているにも関わらずどんどん加速している。今までのカヨには達しえなかった領域だ。



「僕ら完全に脇役ですねえ」


「いんや、他愛も無い雑魚キャラだろうよ」


 二人はカヨの成長を目の当たりにして、自虐する事しか出来なかった。


「ちいっ!」


 カヨの足払いが避けられると、斉天大聖は懐に飛び込みアッパーを狙う。

 アッパーが外れるとカヨが如意棒を斉天大聖に向けて伸ばす。

 斉天大聖は伸びてきた如意棒を動体視力で掴み取り、カヨを引っ張る。

 かと思えばカヨが如意棒ごと斉天大聖を持ち上げ、壁に向けて叩きつける。が、斉天大聖は咄嗟に飛び退き、事無きを得る。


 このような互いに攻撃が当たらない時間が刻々過ぎる。カヨも斉天大聖も一歩も引かない。


「ウキウキィ!」


 斉天大聖がフライングタックルをかまそうとして来たため、カヨは地面に向けて如意棒を放ち、瞬時に天井まで上がり躱す。


 斉天大聖は受け身を取ると如意棒のバランスを崩すため足払いを左足で行う。

 しかし、足払いが当たる直前に如意棒は縮み、カヨは宙を舞った状態から盛大な踵落としを繰り出す。


「──ギィ!」


 決まった。


 カヨの放つ踵落としが斉天大聖の眉間を直撃した。


「もう一丁!」


 カヨは地面に着地するまでにダメ押しで如意棒をよろめく斉天大聖へと伸ばした。

 斉天大聖はその攻撃は楽に躱したが、ダメージが大きいのか露骨にふらついている。


「ウキ……ウキャ……」


 今が攻め時だ。


 カヨは斉天大聖の懐まで大胆にも飛び込んだ。

 万全の斉天大聖なら、楽々躱され、カウンターを受けただろう。

 しかし今の斉天大聖は露骨に反射速度が落ちており、カヨが目前まで差し掛かった所でようやく右に跳ね退いた。


 が、カヨはあくまで強きに攻める。

 へろへろの斉天大聖は跳ね退いた時にバランスを崩し、転倒してしまった。

 カヨはそこに飛び蹴りを仕掛けた。


「貰ったあ!!」

「ウキィィィ!!」


 凄まじい速度で蹴りを放ったカヨを、斉天大聖は何とか意地で躱し切った。


「まだまだ……ウキ……」


 カヨは地面へと飛び蹴りの体勢のまま近づいていく。今のままではこのまま地面に激突だろう。

 だが今の彼女には如意棒がある。


「ぬおおお!」


 カヨは如意棒を伸ばし、地面に突き立てるとそのまましならせ、壁を蹴り、再び斉天大聖へと飛び蹴りを披露したのだ。


「んな……モンキー……!」


 先程よりも更にスピードが増した飛び蹴りは安堵し切った斉天大聖にはもはや対応出来ない。



「私の勝ちだ……」






 全てが終わったそこには、華麗に着地したカヨと、不様に失神した斉天大聖がいた。

 カヨは力尽きてその場に座り込んだ。ショウとピーターはカヨの元へ駆け寄る。


「カヨさん! やりましたね」


「無理すんなよ。そのまま座っとけ」


「ああ……」


 カヨは力無く答える。戦いが終わって急に疲れがどっと押し寄せたのだ。


 と、安堵していた三人の前に急に立ち上がった斉天大聖が歩いてきた。


「そんな! まだ生きてたなんて」


「ウキー……」


 斉天大聖はもはや抵抗する気力の無いカヨを見つめ、


「見事なり……」


 と目を細めた。


「素晴らしい実力、気力、そして勇気だった。まさに『棒』の勇者にふさわしい。

 『超絶勇者武器』如意棒は貴様に託そう」


 急に穏やかな口調になった斉天大聖に三人は目を丸めた。

 カヨは若干回復したのかふらふらと壁にもたれながら立ち上がった。


「お前はどうするんだ……?」


 弱々しく尋ねるカヨに斉天大聖は無邪気に、まるで子供のように歯を丸出しにして笑いながら言った。


「貴様らがまた武器を返しに来るまで眠りに就く。本来ワシは霊体だからな。

 中々楽しかったぞ、……カヨ」


「私もだ猿。魔王復活は阻止してやるから安心して寝てろ」


「フッ……。

 じゃあな! ──モンキィィィィ!!」


 斉天大聖は右腕を掲げ、手を振るとそのままスッ、と消えてしまった。

 カヨは柔らかく微笑む。実力を認め合った仲だからこそ出来る、爽やかな笑みだった。



 カヨが回復するのを待って、三人は来た道を引き返し始めた。


「もう大丈夫か?」


 先頭に立って松明を照らしながら進むピーターが、カヨに話し掛ける。


「何の何の。時間もあるし村で一晩寝れば充分だよ」


「いやあしかしおっかない猿でしたねぇ。まあカヨさんは少し時間掛かり過ぎな気はしますけど」


「はっはっは、言うなお前」


 上機嫌なカヨは如意棒を伸ばして前にいるショウに当てる。が、予想以上に勢いづき


「ぎゃあああ! 痛ァ! 後頭部割れるよぉ!」


 ショウは後頭部を押さえてうずくまった。


「ははは、悪い悪い」


 そう言いながらカヨは足を止めず、黙々と先導するピーターに着いていった。


「ちょっと待って下さいよぉ!」


 ショウは後頭部を押さえつつ先々進むピーターとカヨを追い掛けた。


 三人は安堵しながら進んでいた。そして階段へと差し掛かる。


「────!?」


 まずピーターが驚愕し、固まった。

 何事だとカヨが階段を覗き込むと驚き後ずさった。

 最後にショウが二人を追い抜かそうとして腰を抜かし、転がり出た。


 三人が通ってきた階段には、蜘蛛が隙間無く埋め尽くしていた。


「逃げるぞ!」


 一番足の速いピーターがまず駆け出し、次に満身創痍のカヨが走り出した。

 腰を抜かしたショウはなぜかうつ伏せのまま凄まじいスピードで前進し、逃げ出した。

「はあっ、はあっ……、どうすんだ!? またさっきの道に引き返すのか!?」


 蜘蛛達は後方に溢れんばかり存在している。普段のカヨ達ならもっと速く逃げ切れただろう。

 しかし今はカヨが斉天大聖との戦いで消耗し、ショウが腰を抜かしたためうつ伏せからの匍匐前進で進んでいるためいつもより数段遅い。


「三又の岐路を真ん中に行けば井戸に出る! そこから脱出できるはずだ……」


 そう言いながらピーターは背後を振り返った。

 蜘蛛達との距離は徐々に縮まってきている。このまま逃げ切るのは非常に厳しいだろう。


 三又の岐路はまだまだ遠い……、しかし蜘蛛達はどんどん近づいてくる。

 そしてついに蜘蛛達の内の何匹かがカヨ達に飛び掛かってきた。


「えいやあとお!」


 カヨは如意棒を伸び縮みさせて蜘蛛達を打ち落とすが、数が多い。


「カヨ、ショウ! 避けろ」


 ピーターは持っていた松明を蜘蛛達の中に放り込んだ。

 光を嫌う蜘蛛達はたちまち動きを止める。しかし松明を避けて蜘蛛達は再びカヨ達を追い掛け始める。

 ほんの少しの間時間稼ぎできただけだった。


「後少しだっ! 日が差し込んでくる場所まで奴らは追ってこない!」


 カヨ達はようやく着いた三又の真ん中に迷わず進み、走り続ける。


「まだ追ってくるぞ!?」


 しかし執拗に蜘蛛達は追ってくる。井戸までは後僅かだ。


「よし、着いたぞ!」


 ピーターが外へ通ずる井戸へと出る。が、


「な……!?」


 外は日が暮れかけていた。日は井戸の中にまで差し込まない。

 カヨは如意棒で必死に蜘蛛達を刺し、突き、殴って、押さえる。


「今のうちにはしご登っとけ!」


 カヨは後ろの二人に声を掛ける。ピーターははしごに手を掛けたが、


「こ、腰が……、ピーターさんおぶって」


「世話のかかる奴だなぁ」


 腰をいわしているショウは自力ではしごを登る事が叶わずピーターにおぶってもらった。


「結構重いなあお前……」


「ハハハ、成長期ですから──」


「早くしろお前ら! 時間が無いぞ!」


 ショウをおぶったまま和やかに話し始めたピーターをカヨが一喝する。

 この辺りに二人に危機感が足りない事が伺える……。


 二人が登る間、カヨは一人如意棒で攻撃し始めた。飛んできた蜘蛛を打ち落とす作業は中々に苦痛で、疲弊し切った体には堪える。


「まだなのかよ!」


 カヨは登る二人に声を掛けるが、


「た、高いところは……!」「ピーターさん固まらないで早く!」


 ピーターはある程度の高さで動けなくなっていた。彼は高所恐怖症の気があるらしい。

 ショウは下ろうとするピーターを宥めるが、段々登るどころか下がっていっている。


「ああくそ! 早く行けって言ってんだよ!」


 痺れを切らしたカヨは如意棒をピーターの尻へと放った。


「ぎゃああああああ!!」


 井戸内にピーターの悲鳴がこだまする。その勢いのままピーターは凄まじいスピードではしごを登り切ってしまった。


「──! 登り切れた!」


 ピーターはいつの間にかはしごを上がり切っていた自分に驚いた。

 ショウは腰が痛いのか、傍らで座っている。


「よし、じゃあ私も──」


 登るか、と言う言葉を発する事は出来なかった。

 背後で押さえていた蜘蛛達がカヨの隙を突いてのしかかったのだ。


「んな……く……くそ……」


 如意棒で刺すにしても数が桁違いだ。更に蜘蛛は重くて身動きが上手く取れない。

 蜘蛛の一匹がカヨの左腕に噛み付いた。余りの痛みに体が痺れる。


 いや、痺れるのは痛みのせいではない。蜘蛛の牙には毒が入っていたのだ。

 こうやってじわじわ獲物を弱らせて捕食してるのだろう。


「…………ぅ」


 容赦無く群がる蜘蛛に身体中を巡る毒。

 もはや今のカヨに声を出す元気は欠片程も無かった。


「──ヨ──って────!」「──さ──!」


 耳に遠くから微かな声が聞こえる。耳を傾けるがよく聞こえない。

 もっと集中すれば……。

 カヨは最大限まで残った感覚を聴覚に傾ける。


「カヨ──棒を────伸ばせ────く!」


 ピーターの声だ。

 聞き取りづらいが大体わかる。「カヨ、如意棒を空に伸ばせ」だろう。


 カヨは右手の指先に意識を傾ける。幸いな事に未だカヨは如意棒を握っていたようだ。


「……は……は……」


 自分で聞いてて笑うくらい情けない声を出しながらもカヨは天を如意棒で仰ぎ、伸ばす。


 最後に残っていた力はそれで使い果たした。果たして如意棒はピーターとショウの元まで届いただろうか?


 カヨはそれを知る事なく、意識を失った。

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