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「あ?」

「え?」

 俺たちは、開いた口が塞がらなかった。

 囚われの姫君だと思って来たら本当に姫みたいな待遇だったのだ。

 まあ、旭山がヘヴンさんの事を好きならぞんざいな扱いをするはずないな。うん、思いつかなかった。

「デウス!助けにきてくれたのね!」

「え?うん……そのつもりだったんだけど」

 なんだか幸せそうな生活を送っているのを見て、その気は無くなってしまった。

「ヘヴン殿!無事でござったか!」

 俺とは対照的に無事を喜ぶ鳥羽が、ヘヴンさんに駆け寄っていく。

「サムライさん!あなたこそ無事だったのね!」

 手を取り合って再開を喜ぶ二人に旭山は口を挟む。

「無事だなんて、あたりまえじゃないか。フレイムヘヴンは我々の仲間だ」

「仲間?無理矢理攫っていったくせによく言うでござる」

 鳥羽の中では無理矢理攫っていった事になっているらしい。

「何度も言うが、フレイムヘヴンは望んでここにやって来たんだよ?君達にどうこう言う権利はないはずだ」

「ああん?何言っちゃってくれてんのよ!このスカポンタン!」

「スカポンタン!?フレイムヘヴン、そのような言葉は使っちゃ行けないよ」

「何度だっていうわよ!このスカポンタン!」

 ヘヴンさんは荒々しく立ち上がった。

「あたしはみんなに迷惑がかかると思って仲間になるって言っただけよ。デウスが迎えに来てくれたなら真っ直ぐ帰るわ。あなたにも組織にも何にも興味がないもの」

「え……黙って僕の話を聞いてくれていたじゃないか!」

「つまんないからお菓子食べてただけよ!このスカポン!」

 略した!

「で、でも、一度saiに……組織に入るって言ったんだからそう簡単には抜けられないよ?」

「え?嘘……そんなつもりじゃなかったのに……」

 鳥羽が二人の間にずいっと入っていく。

「では、どうしたら抜けられるでござるか?」

「そうだね……前例がないからちょっと……」

「ならば」

 鳥羽が竹刀(柄のみ)を旭山に突き立てる。

「拙者らが決闘で勝ったら抜けるという事で良いでござるか?」

 旭山があっけにとられた顔をしている。

「あ、さっき皇とも決闘してこの場所を教えてもらったんです。仕掛けて来たのは向こうですが」

 そのせいで鳥羽の中に決闘=いう事を聞いてもらえるという図式が出来上がったのだろう。いきなり決闘と言われても普通の人ならぽかんとしてしまうだろう。それはしょうがない。旭山が普通かどうかは判断しかねるが。

「そういうことか。まあいいだろう。君が戦うのかい?さっき僕にぼろ負けしたようだけど」

「ぐ……」

 鳥羽が黙ってしまった。俺の方を見てくるが、俺はもちろん戦う気はない。

「ヘヴンさんが戦うのが筋じゃないかなー」

 俺はヘヴンさんを見た。

「デウス……?」

 ヘヴンさんの俺を見る真っ直ぐな目。そして、彼女はゆっくりと微笑んだ。

「いいわ」

 俺はほっと胸を撫で下ろす。正直ヘヴンさんがこの中で一番戦闘力があると思う。

「私、デウスに全て託すわ」

「はあっ!?」

 何言ってんすか!

「俺、だって全然戦えないよ?負けるよ?」

「以前のデウスならそうかもしれない。でも、あなたは過去の記憶を取り戻した私のソウルメイト、デウス・エクス・マキナでしょう?その力さえあればあんな奴なんて一瞬で時限の歪みに落っことしてしまえるはずよ」


 忘れてたーーーーーーー!


 そういえば、ヘヴンさんを信頼させるためにそんな嘘もついていました。

「ほう?君も力に目覚めたのかい?」

「あ、ああ」

 俺は嘘を嘘で塗り固めていく。自分でも最悪だって思ってる。

 しかし、同時にあのときに誓った気持ちを思い出した。

 自分自身に正直に生きる。

 俺は今、それをするべきなのだ。

「分かった、フレイムヘヴン。俺を信じてくれて嬉しいよ。君のために全力で戦おうじゃないか」

 頭の中でちかちか何かが光っている。ああ、これはニューロンとシナプス。俺は今、旭山に勝つために必死で考えているんだ。

「デウス。私の魔力を全てあなたに預けるわ」

 まずあれをあれして、その後であれをして。あの状態になったらもしかしたらヘヴンさんの援護が出来るかもしれない。というか、別に勝たなくても目くらましだけして逃げればいいのでは?それなら何とかなりそうだ。よし。


 ちゅ。


「ん?」

 今、頬に何か柔らかいものが押し付けられたような……。

 横を見るとヘヴンさんが真っ赤な顔をしてうつむいている。

 鳥羽と旭山は反対に真っ白な顔だ。

 俺は自分の頬を触る。

 何か、少し湿っている気がする。

 まさか。

 まさか。

「……………………」

 引きつる右頬を押さえて、俺は旭山に対峙した。

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