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10

 篁が叫び、皇に駆け寄った。

 皇はぐったりとしている。ネットがなければ地面に打ち付けられていただろう。

「皇殿!」

 鳥羽が駆け寄り皇を抱き起こそうとするが、篁に手を払われてしまった。

 俺は少し離れたところからその様子を見ていた。

「……うっ」

「皇!?大丈夫か!?」

「……うん……それより旭山に……」

「痛いのか?大丈夫か?」

「……うん…………」

「いいか、無理するな」

 篁はゆっくりと皇を地面に寝かした。

「皇殿、拙者避けられると思って……すまんでござる……」

 鳥羽はすっかり落ち込んでしまっている。

「お前のせいじゃない。気にするな。もともとこいつは体が弱いんだ」

 篁が、フォローを入れた。鳥羽は少し明るい表情になったが、後半の意味を理解すると更に険しい顔をした。

「それより、鳥羽が勝ったんだ。約束通り旭山のところまで案内してもらおうか」

 俺が言うと、篁は憎々しげに俺を見た。

「…………ちっ」

 小さく舌打ちすると、どこかの住所を吐き捨てるように言った。俺は慌てて携帯のメモにそれを残す。

「旭山はそこにいる。行きたきゃ勝手に行け。俺は皇を病院に連れて行く」

 そういうと、皇を軽々と持ち上げて去っていった。

「……皇殿は……大丈夫でござろうか……」

 鳥羽は呆然と、二人が去っていった方を見る。

「多分な……もしかしたら仲間に治癒する能力の奴がいるかもしれないし、治る見込みがないのに決闘なんて申し込んだりしないだろ」

 絶対に攻撃を当てられない、という自信があったのかもしれないが。そのことは今言うべきではない。

「そうでござるな……せっかく旭山の居場所を教えてもらったのでござる。ヘヴン殿を救いにいくのが先決でござるな!今の拙者なら旭山も倒せるでござるよ!はっはっは」

 鳥羽は、不安を振り払うように、無理矢理に笑った。


 家が近かったので、一度家に帰り旭山のところへ向かう。

 家にある棒状のもの(箒とか傘とか)を、竹刀の代わりに鳥羽に渡そうと思ったのだが、断られてしまった。

「拙者、折れてしまってもこの刀で戦いのでござる」

 鳥羽がそういうのなら仕方がない。俺は自分が使えそうなものを適当に見繕ってカバンに入れた。


 旭山の居場所は、同じ市内だが随分遠いところにあると検索して分かった。

 俺たちは言葉少なにバスに揺られ、見知らぬ土地の見知らぬ家の前にたどり着いた。

「ここでいいのでござるか?」

「携帯にはそう表示されてるし、住所も同じっぽいけど……」

 ただの一軒家だった。かなり大きい平屋だったが、雑草がぼうぼうでろくに手入れもされていないようだ。人が住んでいる気配はない。

 表札が外された後が残っている。その横のインターホンを押してみたが、スカスカで手応えがなかった。挙げ句、四・五回押したところで戻ってこなくなってしまった。

「すみませーん、誰かいませんかー」

 戦いに来たのに何とも間抜けだが、俺は家に向かって声をかけた。

 ガチャ、とドアの鍵が外れる音がする。

 薄く開かれたドアから、旭山が覗き込んでいるのが見えた。

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