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「えっと、じゃあ、始めっ!」
決闘なんてどうやって始めればいいのか分からない俺が、何故か号令をかけるはめになった。こんな始まりでいいのか。
鳥羽は走って一気に間合いを詰めた。柄を握った右手を逆手で皇の顔に突き立てる。
皇はそれを少し顔を動かしただけで避けた。
鳥羽は攻撃の勢いで右に半回転しながらしゃがみ、手を地面について足を掛けようとする。
しかし、皇は軽くジャンプして攻撃を避けた。
俺には鳥羽しか動いていないように見える程、皇は最低限の動きしかしていない。
まだ鳥羽は、防具をしていない人に攻撃するのにためらっているだけのようにも見える。寸止め出来るようにしているせいで簡単に避けられてしまうのかもしれない。
鳥羽が柄ごとアッパーカットを食らわせようとする、皇は少し後ろに体を反らしただけだった。
皇が体勢を整える前に左手を振るう。しかし、それも少ししゃがんだだけで躱されてしまった。
「クソっ、なんで当たんないんだ?」
鳥羽の攻撃は、素人目に見てだが下手ではないと思う。俺なら避けられずにフルボッコだ。ジャスティスサムライを名乗るだけはあるのだろう。
しかし、全く体力の無さそうな、しかも背が高いので的がでかい皇に擦りもしない。俺はイライラしていた。
鳥羽はもっとイライラしているようだった。
どんどん攻撃が荒くなり、矢継ぎ早に手と足を繰り出す。皇の避けるであろう先にも先手を打って攻撃を仕掛ける。更にその先に。更にその先の先に。
猛打だ。
しかし、すべてをのらりくらりと躱されてしまった。
それも、最低限の動きで。
皇は避けるだけなので、どんどんネット際まで寄っていった。追いつめられているはずなのに、その顔に焦りは見られない。
むしろ楽しそうですらあった。
「どうして断ち筋が見えるのでござるか……って顔だね」
決闘が始まってから初めて、皇が言葉を発した。
「ボクにはキミが考えている事が分かるのさ」
「何を戯言を」
言いながら鳥羽が柄を繰り出した。
ゆっくりと左に一歩進み、皇はそれを避けた。
「戯言じゃないけど、それならそうでいいんだけどね。思ったより頑張るからボクなりの敬意を称したつもりなんだけど」
「そうでござるか」
言い切るか言い切らないかで、鳥羽の猛襲が再び始まった。
皇は追いつめられて、もう後ろには避けられない。それでも、さっきまでよりは運動量は上がったものの全て避けてしまう。
鳥羽の体力が切れたときが、この決闘の終わりだと俺は思った。
次の瞬間、風もないのに床に散らばっていた吸い殻が高く舞い上がった。
「え?」
皇が、驚きの声を上げる。
その一瞬だけ、反応が遅れた。
人工芝が、ちぎれて舞った。
鳥羽の足が、皇の腹にめり込む。
大きくネットを揺らし、皇が後ろに倒れ込んだ。
「皇ーーーーーーーーっ!」




