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俺たちは、少し先にある廃バッティングセンターに忍び込んだ。フェンスをよじ上り、金属の階段を上り、破れたネットをくぐり抜ける。受付などがある建物の部分は施錠してあるものの、グラウンド(?)に通じる部分のフェンスには大きな穴が開いていた。
中にはビールや酎ハイの空き缶、スナック菓子のゴミが散乱していた。タバコの吸い殻もある。ネットの穴も、フェンスの穴も、誰かが開けたものだったのだと俺はようやく気付いた。
なぜこんなところに来たのかと言うと、決闘をするのなら人目につかないところではないと言う篁の意見に従い、皇がここを選んだのだ。確かに一階部分は駐車場になっており、周りから見られる心配はない。地元の人でもあまり知らない場所なのになぜ知っているのかと、俺は疑問に思った。
「皇、やっぱりお前は下がってろ。俺が代わりに戦うよ」
「だめだよ、ボクにも勝てないってことをあいつに教えてやらなくちゃ」
鳥羽はまるでアスリートのように腕を伸ばしながら、心底どうでも良さそうに言った。
「どっちでもいいでござるよ。早く始めるでござる」
俺がこの戦いを止めなかったのは、交換条件を付けたからだ。
鳥羽が勝ったらヘヴンさんの下に連れて行くように言ったのだ。まあ、どちらにしろ鳥羽には断るつもりはなかったらしいが。
「鳥羽、なんかいるものあるか?」
俺はカバンの中を探ったが、街で貰った(なんかエロい)ティッシュとか財布とか、ろくなものが入ってなかった。
「いや、それよりこれを預かっていて欲しいでござるよ」
鳥羽は俺に、ポケットの中の財布や携帯を預けた。
「拙者はこれで十分でござる」
そして、柄だけになってしまった竹刀を振った。
「じゃ、ボクも行くよ」
「皇、本当にいいのか?」
皇は半笑いで頷いた。
「ボクの能力については篁が一番良く知っているでしょ?」
能力……。一番恐れていた事だ。
旭山は見えない糸を操る能力を持っていた。その仲間の皇と篁も何かしらの能力を持っていているとは思っていたが、その片鱗は見えなかった。
もし、強力な能力を持っていたら鳥羽に勝ち目はないだろう。それどころか、俺も危ない。
しかし、今までの彼らの話の中で皇は旭山よりも弱いと言っていた。それに皇や篁が強かったなら、ヘヴンさんにその力を見せつけて脅して仲間にした方が話が早い。それをしなかったのは、出来なかったからだと思う。
俺はそこに掛けた。だから決闘に乗ったのだ。というか、もはやそこに掛けるしかなかった。
「皇、一つ約束してくれ」
「うん。いいよ」
「鳥羽が参ったって言ったら、それでお前の勝ちでいいな?」
「うん。もちろん。最初からそのつもりだ」
「鳥羽」
「……なんでござるか?」
俺の言う事を察したのだろう、あからさまに嫌そうな顔で鳥羽が答えた。
「勝てよ!」
「無理そうならすぐに参ったと言え」という言葉を飲み込んで、俺は親指を突き上げた。俺が条件を付けたのにその言葉は余りにもひどい。言うのを止められてよかった。
鳥羽は笑って親指を上げた。
そして、二人はグラウンドの真ん中に進む。
俺と篁は、少し離れて続いた。




