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「デウス殿!」

 鳥羽が小声で、しかし鋭く言った。

「どうし――」

「しぃーーーーーーー」

 俺が喋ろうとすると、鳥羽は口に人差し指を当てて黙らせた。

 そして、かすかな目の動きだけで前を見ろと指示する。その方向数メートル先には、見覚えのある真っ白いおかっぱ頭が見えた。

「あ、あいつもごっ!」

 途中から、口を鳥羽の大きな手で押さえられてしまった。

「気付かれたら面倒でござる」

 鳥羽は俺を建物の影に引きずりこんだ。

「どうするんだよ?」

「このまま尾行つけるか、無視するかでござるな」

「どっちだよ」

 俺はこっそり建物の影からおかっぱを覗いた。おかっぱは一人だけだ。そして、三人の女の子に囲まれて、握手を求められていた。

「なあ、あいつ有名人かなんかなの?」

「さあ、拙者は知らないでござる」

 鳥羽は俺の上から顔を出す。

「モテてござるな」

「なんだろうな、変な髪型なのに」

「逆に考えるでござる。あの髪型が似合う程のイケメンなのだと……」

 その時、おかっぱと目があった気がした。

 俺と鳥羽はあわてて首を引っ込める。

 その引っ込めた首ねっこを乱暴に後ろから掴まれた。

「うっ」

「何奴!?」

 押さえられた首を、無理矢理後ろに捻る。

 俺たちの首を掴んでいるのは、おかっぱだった。

 もう一人が、後ろにいたのか。

 後悔する思考を痛みが遮断した。ギリギリと首を掴まれる手に力が入れられる。

「許さない……」

 指先が、爪が、首に深く食い込んで来ているのを感じる。この分だと血も出ているだろう。

「何が、でござるか?」

「何がじゃない!キミが旭山を傷つけたんだろ!?」

 叫び声に、町の人々がこちらに目を向けた。

「皇!!!何やってるんだ!」

 前にいたおかっぱ(篁の方だろう)が女の子をはねのけてこちらに走ってくる。てっきり俺たちを攻撃してくるのかと思って全身をこわばらせていたが、杞憂だったようだ。すぐに俺たちを掴んでいる皇の手を振りほどいてくれた。

「皇、落ち着け、こんなとこ人に見られて、どうするつもりだ?」

「どうなってもいいよ、別に」

「…………皇」

 一瞬、篁が黙る。

「旭山が……いや、気がすんだか?」

「どうだかね」

「なにがしたいんだ?」

「旭山の敵討ちだよ」

「旭山は別に気にしてないだろ?」

「旭山が気にしてなくても、ボクは気にするんだ」

 皇は鋭い視線で篁を睨みつける。

「……分かった、好きなようにやれよ」

「……篁、キミのそういうところ、ボクは嫌いだよ」

 皇は呆れた声でそういうと、鳥羽の方を向いた。

「鳥羽君、キミに決闘を申し込みたい」


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