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 鳥羽は歩きながら、今まであった事を話してくれた。

「拙者、あの男に破れた後に無力感に苛まされて、一人修行をしていたのでござる」

 その修行というものは、竹ひごを砂場に立て竹刀で斬り掛かるというものだったらしい。それもなんと、俺の家の真ん前の黒森公園でやっていたのだそうだ。警察に通報されなくて何よりである。

「拙者の夢は、小さい頃にアニメで見た真空切りでござった。刀で風を起こし、かまいたちを作って敵を攻撃する。そのために親に無理を言って剣道を始めたのでござる」

 ヘヴンさんと同類、というか中二以前という事はかなり筋金入りの中二病(小二病?)だったのだろう。

「しかし、現実では無理だと知り素直に諦めてしまったのでござる。ヘヴン殿は、諦めずに毎日毎日鍛錬を重ねてあの技を習得したというではないか。拙者、自分が恥ずかしくなったでござる。それで、結果が出るまではヘヴン殿の前に顔を出さない覚悟で修行をしていたのでござった」

 鳥羽は大きく息を吐いた。

「そこで急に声をかけて来たのがさっきの折井殿、小師匠でござった」


「ねえ、鳥羽君」

「はっ」

 鳥羽が声の方へ顔を向けると、折井の姿があった。鳥羽は見た事があるけれども、誰だかは思い出せない。

「何してるの?」

「しゅ、修行でござ……修行ですが」

「もっと効果的な修行があるよ」

「効果的……でござるか……?」

「そう、着いて来て」

 鳥羽は怪しいと思いながらも、深くは語らない折井の姿勢に興味をそそられてついて行ってしまった。そこで出会ったのが師匠だった。

 長い茶髪を後ろでまとめた、ジャージの女の人だった。身長は鳥羽に比べてかなり小さく、最初は年下かと思ったと言う。

「今は名乗れない、それでもいいか?その代わり絶対にあなたを強くしてみせる」

「わ、分かったでござる」

 師匠はそういうと、にっこり笑った。

「ではこの紙にサインを頂きます☆」

「へっ?」

 差し出された紙は白紙だった。

「この辺に、そう、下の方にサインお願いします」

「ここでいいでござるか?」


「え?お前サイン書いたの?」

「…………でもそうしないと強くなれないって言うのでござるよ?」

 俺は鳥羽の馬鹿さに呆れた。

「後からなんか請求されたらどうすんだよ?」

「はっ!その可能性は考えてなかったでござる!」

「……まあいいや、続き話して」

「いや、それからは特に無いでござる」

「ないの?」

「師匠に背中に思いっきり気合いを入れられて、しばらく毎日素振りをするように言われていたでござる」

「それだけ?」

「それだけでござる」

「それで強くなったの?」

「そのうち真空切りが出来ると仰っていたでござる」

「…………………………」

 俺は呆れすぎて何も言えなくなってしまった。

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