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正しい異能の使い方  作者: 蜂末 新
イキルサイノウ
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「まず、私の正体だけど、烈火の魔女フレイムヘヴンよ」

 場所を移動して、ファミレスの4人席。ヘヴンさんは堂々と言い放った。

 彼女の隣では鳥羽がミックスプレートをもぐもぐ食べていた。ライス大盛り、ドリンクバーもセットだ。朝からよく食べれると関心するより呆れてしまう。俺とヘヴンさんはドリンクバーのみの注文だ。

 ハンバーガー屋では人が多すぎて不安だというので(あと鳥羽が腹減ったというので)移動したのだが、ここもそれなりに混んでいる。

「そして次に、どうしてデウスが私のソウルメイトだと分かったかということだけれど」

 俺が言いたいのはそう言うことではなく、どうして俺がソウルメイトにされてしまったのかということだった。しかし、ソウルメイトが誰でも良かったとなるとヘヴンさんの設定が崩れてしまうのだろうと思い、黙って聞いていた。

「ヴァルプルギスの夜にシュヴァルツヴァルトにいたからに他ならないわ」

「だからそれが訳分からないっつってんの!」

 俺は机を思いっきり叩いて立ち上がった。しかし、周りの客が一斉にこっちを見たのでそっと座り直す。通路挟んで隣の席のギャルと目が合ってしまった。

「デウス殿、ヴァルプルギスの夜は4月30日から5月1日に掛けての夜のことでござるよ」

 ライスをメロンソーダで流し込み、鳥羽が言った。ヘヴンさんはその横でしきりに頷いている。

「そしてシュヴァルツヴァルトとはドイツ語で黒い森。つまり黒森公園を指していると考えられるでござる」

 ヘヴンさんは頷く首を止め、鳥羽を見つめた。

「その通りよ。さすがねサムライさん」

「え?それって常識なの?なんなの?」

「毎年ヴァルプルギスの夜にはシュヴァルツヴァルトで魔女が大集会を行うのでござる。ヘヴン殿が烈火の魔女ならそのくらい知っていて当たり前のことでござろう」

「なんでお前は知ってるの?」

「ふっ、世界の平和を守る者ならあらゆる事に精通していて当然でござるよ……」

 鳥羽は格好良くフォークを回し、海老フライを突き刺した。その様子をヘヴンさんがうっとりと見つめている。なんだこれ、面白くないな。

「第一次世界大戦が起こったのは?」

「1914年でござる」

「サラエボ事件は?」

「1914年でござる」

「3・1独立運動は?」

「1919年でござる」

 俺の持ち駒は全て消失した。鳥羽は勝ち誇ったようにフライドポテトを食べた。いつの間にか皿は空になっている。なんだこれ、面白くないな。

「あのさあ」

 ヘヴンさんが、イライラしながら俺たちの会話を遮った。会話に入れなかったのがそんなに嫌だったのか。

「気にならないの?私の”炎“」

「気になります」

 あやうく自分から話しをそらしてしまうところだった。

「あのパソコンで見たやつでござるか?」

「うん。それもだけど……」

「今から全て話すわ……そう、あれは私が10歳になった頃だった……」

 それからヘヴンさんは、魔法

モノ

との出会いから始まる壮大な話をしてくれた。しかし残念ながら俺は全く覚えていられなかった。その中にはアニメや漫画のタイトルがたくさん出てきたが、全て右から左に抜けていくようだった。

「む、その『魔装戦記・ディストピア』というのは……」

「魔法の力をまとった鎧をまとって戦う戦士達の哀しみを描いたSFアニメよ。あなたも当然見ていたでしょう?」

「いや、拙者は裏でやっていたMHKの『頑張れヒジカタくん!』を見ていたでござる。クラスでどっちを見ているかで紛争が起きたでござるなー。懐かしいでござる」

「MHKなんて子供の見るものじゃない」

「いや、あの番組は子供向けに分かりやすくしてはいたものの、史実に基づき独自の視点で新撰組を描いたいい作品でござった。また見たいでござるなー」

 俺はドリンクバーをお代わりにいった。

「魔法少女ルミナスでやっていた霊能力をあげる方法が、ろうそくの火を手でかざして力を放出するってやつで――」

「それは地獄教師の方だと思うでござる。ルミナスでやっていたのは磁石をつかったやつでござろう?」

 俺は鳥羽のメロンソーダにガムシロップを5個分入れた。恐らくすごい甘さになっているはずだ。鳥羽がジュースに口を付けるのを今か今かと待っていたが、ヘヴンさんと話し続けていていっこうに飲む気配がない。その間に俺のコップが空になってしまった。今度は何にしようか。というか、そろそろお腹がすいてきたような気もする。何か注文しようかと思い、メニューを手元に寄せた。

「それから毎日修行を続けていたら今の力が身に付いたのよ」

「なるほど、何事も修行が大事だという事でござるな」

 ハンバーグ類は重すぎるし、かといってフライドポテトなんかじゃ足りないしなあ。こんな事ならさっきのハンバーガー屋で何か食べてくれば良かった。あ、ケーキとかあるな。これにしようかな。

「炎の魔女にしては力が足りないと思っていたの。その時前世の記憶が蘇り、私の半身がいる事に気付いたのよ」

 いや、でもケーキは少し可愛らしすぎるのではないだろうか。クールな俺のキャラが崩れる。

「それがデウス殿だったのでござるな」

「ん?」

 急に俺の名前を呼ばれた。

「デウス殿、なぜメニューを見ているのでござるか!?」

「え、ケーキが」

「そっちが聞きたいって言うから説明しているのに!何よその態度!」

「あ、ごめん、なんか話し長いから」

「これでもかなり省略した方なのよ」

「そうなの?」

「もう、デウスってば。いいわ、また最初から話してあげる」

「ええー、いいよ……鳥羽、今までの話要約してよ」

「え?いいでござるが……」

 鳥羽は横目でヘヴンさんを見た。ヘヴンさんはむすっとしている。そして、「トイレ」と一言言うとカバンを持って立ち上がっていってしまった。

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