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喫煙エリアは、フロアの一部がガラスで仕切られていて、中には煙が大量に渦巻いていた。
「うっ」
あまりの煙さに思わず声を出してしまう。俺は一人席に荷物を置いた。念のため灰皿を取ってきて、横にライターを置いた。
俺は煙草が吸えない。
もちろん未成年だから法律上も吸うことは出来ないのだけど、買う勇気もなければ吸う勇気もない。
それでも煙草を吸う大人の男の姿に憧れ、行き着いた先が『煙草を吸っている振り』であった。
常にライターを持ち歩き、暇なときにはベンチに座って火をつけて遊ぶ。時々は煙草を吸おうとしてポケットを探る振りもする。
それが俺の格好良さへの答えだった。
ちなみにコーヒーも好きではない。ましてやブラックなんて飲めたもんじゃない。
俺はこっそり持ってきた砂糖とミルクを、冷めたコーヒーにぶち込んだ。
そしてカバンからノートと筆記用具を出すと、疑問に思った事を箇条書きにしていった。
ヘヴンさんが選んだのは、なぜ俺なのか。
ヘヴンさんの正体とは。まさか、ただの中二病の不登校だと言う落ちはないだろう。
初日に見た炎、あれはマジックなのか、それとも……。
そして、ヘヴンさんを追っている”組織”について。
ただのストーカーの戯言なのか、それとも本当に組織的なものなのか。
色々ありすぎてよく分からなくなってきたので、紙にまとめて整理しようと思ったのだ。
まず、ヘヴンさんの正体だけれど……………………。
頭に激しい衝撃を受けて、俺は飛び上がった。
「すみません!」
目の前には半透明の板があり、手元には灰皿、ライター、よだれでだらだらになったノートが置いてあった。
「へ?」
なんだここは。頭がぼんやりしている。
「デウス!起きなさい!」
起きる?そうだ、俺は寝てたのだ。
「もうお店が開き始めているでござる。早く行くでござるよ」
俺はノートに今起きていることをまとめようとしていたところで睡魔に勝てず、寝てしまったらしい。というか、ちょっとくらい寝てもいいやと思って机に突っ伏した記憶がある。
ノートには数行しか文字が書いていない。
「えっと、どこまで書いたんだっけ……」
「何やってんのよ」
「うわっ」
ヘヴンさんが覗き込んできたので、思わずノートを体の後ろに回す。
「えっと、何か書いてあるでござるな」
それを鳥羽に取り上げられてしまった。
「『ヘヴンさんの正体?→不明。女子高生、生主 なぜ俺に?→偶然かも 炎について→本人に聞く』……?これはなんでござるか?」
「あ、いやー最近起こってることについて、頭ん中じゃ整理つかなくなったから書き出そうとしてたんだよね。その途中で寝ちゃったんだけど……」
「だからこそこそこんなところに隠れてたわけね。おかげで探すのが大変だったわ」
「それは……すみません……」
「でもいいのよ、どっちにしろこのサムライさんも寝ていたし、私はその間に魔力を蓄えることが出来たわ」
鳥羽も寝ていたのか。鳥羽の方を見上げると、あからさまに視線をそらした。魔力を蓄える……ヘヴンさんも寝ていたのだろうか。
「あとそのノートのことだけど――」
「これもすみません!」
俺はノートを鳥羽から素早く奪い取り、畳んでトートバックの中にしまった。
「怒ってなどいないわ。その疑問に、答えて上げるわよ」




