1
翌日、朝。
「遅いでござるよヘヴン殿ー、デウス殿ー!」
待ち合わせ場所の駅に着くと、鳥羽が思いっきり手を振っていた。周りのサラリーマンの視線が鳥羽に集まり、一瞬でそらされていく。
「ごめんなさいね。デウスが寝坊しちゃったの」
「つーか早すぎだろ。こんな時間に渋谷行ったって何もやってねーよ」
時刻は朝七時、駅には通勤のサラリーマンがそこそこいる。俺たちの学校は創立記念日だけど、今日は普通の平日だった。
「鳥羽さ、その格好なんだよ」
鳥羽はだっさいラグランのTシャツに、色褪せたジーパンをはいていた。さらに足下は体育の授業用の真っ白な運動靴だ。
「デウス殿こそ!」
俺はカッコいいTシャツにカッコいいジーパンとカッコいいコンバースをはいている。渋谷にぴったりのお洒落な格好である。
「うるさいわよ。どっちもジャスコファッションじゃない」
ヘヴンさんは毎日着ているレースだらけの黒いワンピースに、どこに持っていたのか黒い日傘をさしている。肌の露出が極端に少ないが、暑くないのだろうか。
彼女は確かにジャスコファッションではなかったが、すれ違う人や、同じ車両の人の視線をこれでもかというくらいに集めていた。
1時間足らずで渋谷についてしまい、早速時間を持て余した。それもこれもわが町、黒森町と神奈川県を田舎だと思い込んでいた田舎者のヘヴンさんのせいである。
「だから悪いって言ってんじゃないの」
某ハンバーガーチェーンで、フライドポテトを三本づつ食べながらヘヴンさんがふてくされた。
「そうでござるよ。それにゴールデンウィークだからって昼間で寝ているような生活を送ってはいけないでござる。拙者の用に365日五時に起き、体を鍛えてこそヘヴン殿を、ひいては世界を守れるんでござるよ」
バニラシェイクをズビズビ啜りながら鳥羽が擁護した。
「はいはい。つーか朝からよくそんなもの飲めるよな」
俺はコーヒーを啜りながら適当に流した。
店内には朝まで遊んでいたのか机に突っ伏して寝ている人や、仕事前なのかパソコンで何かやっているスーツ姿の人がいて結構にぎわっていた。俺たちのように気合いをいれすぎて早く着いてしまった学生っぽいひともちらほらといる。
「そういえば、今日って平日なんだよな」
「でも拙者達の学校は創立記念日だから大丈夫でござる」
「うん。それは知ってるけど――」
俺は残りわずかなケチャップをポテトにこすりつけているヘヴンさんに向かって話しかけた。
「ヘヴンさんの学校はおやすみ大丈夫なの?」
ガタッ。
ヘヴンさんがコーラをこぼした。
――――。
一瞬店内の全ての音が消えたかと思った。
「だ、だいじょぶだから」
ヘヴンさんが紙ナプキンでコーラを拭きながら言った。
「いや、まあ大丈夫ならいいんだけどね」
俺は深入りすることが出来ずに立ち上がった。
「デウス殿、どこへ行かれるでござるか?」
「いやーちょっとね」
俺は二人を置いて喫煙エリアへと向かった。




