表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/27

ep19 異世界で羽を伸ばす~ユノフェルン温泉旅行記~」

「……もう働き詰めは嫌だ!」


朝から次々と訪れる客をさばきながら、春香ははついに叫んだ。


「えっ、春香さん!? 突然どうしました?」

「儲かってるんだから、たまには贅沢してもいいだろ! 慰安旅行だ!温泉だ!温泉旅行に行くぞ!」

「温泉旅行……?」


ルミカが目を丸くしている横で、受付を手伝っていたシルビアが「温泉……」と少し興味を示し、タオルを畳んでいたアルムも「耳まで浸かれるお風呂ですか?」と期待に満ちた顔を見せた。


春香は拳を握って宣言する。冒険者の客に聞いたのだ。


「癒しの里・ユノフェルン! 魔法の温泉郷だってさ。疲れが吹き飛んで、美肌効果もあるらしい。もうこれは行くしかないだろ!」


「行きたいです!」「私も!」「耳、浸かりたい!」


こうして、急遽『メンズエステ春香』は数日間の臨時休業を決定。

4人で慰安旅行に出ることになった。



馬車に揺られること半日。

途中、馬車を降りて山道を歩くこと3時間。

過酷な山道が続いた。


ようやく辿り着いたその場所は、噂以上の楽園だった。


「ここが……ユノフェルン……!」


辺り一面に広がる花畑。

風に揺れる草花がキラキラと光っている。

空気まで甘い香りに包まれていて、歩くだけで癒されそうだ。


「わぁ……!」

「きれい……」

「耳がピクピクします!」


ルミカ、シルビア、アルムも感動しきりだった。


宿は老舗旅館『湯宿フォルナハ』。

異世界なのに、まるで高級旅館みたいな落ち着いた雰囲気だ。


絨毯敷きの広間に魔法のランプが優しく灯っている。

出迎えてくれた仲居さんは、おっとりとした笑顔で言った。


「ようこそ、お嬢様方。ごゆるりとおくつろぎくださいませ」


私たちはもう、癒される気しかしなかった。


「うわぁ~ピンク色のお湯です~!」


最初に飛び込んだのはルミカ。

効能は疲労回復と美肌効果。


「すべすべです~!」

「そりゃ良かったな」


春香は隣で赤いお湯に浸かっていた。

これは血行促進、活力回復の湯。


「ふぅぅ……血行良すぎてのぼせそうだわ……」


湯けむりの向こうでは、シルビアが黄金色の湯に浸かっている。


「若返る……若返るかも……」

「元ニートのお姉さんが若返ってどうするんだよ」


一方、青いお湯に入ったアルムは耳まで浸かって、うっとりしていた。


「魔力、満タンです……」


夕食も豪華だった。


山菜の天ぷら、川魚の塩焼き、魔獣肉のステーキ。

異世界グルメのフルコースに、全員が無言で食らいついた。


「……あぁ、幸せ」

「ほんと……」


美味しいものを食べて、温泉に浸かって、のんびりする。

こんな贅沢が異世界でできるなんて思わなかった。



そして夜。


浴衣のような部屋着を選び、4人でゴロゴロしながらおしゃべり。


「春香さんって、なんでそんなにお金好きなんですか?」

「こっちに越して来て、最近はそんなにお金って必要無いんじゃないかとも思ってるよ。

でも今は必要なんだ。あんた達を養わないといけないしね。

まぁ今日は、みんなでご飯が食べられる、温泉に来れる。それで十分だろ」

「春香さん……!」


春香は久しぶりの酒を飲みながらしみじみと思った。


「これが、異世界で稼いだ金の使い道ってやつか……」


ルミカが笑って、「また来たいですね!」と言う。

シルビアも「本、いっぱい買うのもいいけど、こういうのもいいですね」と頷いた。

アルムも「耳、ずっとポカポカしてます」と嬉しそうだった。


小さくうなずく。


「また来ような、絶対」


こうして、異世界慰安旅行は最高の時間になった。


明日からまた頑張れる。

そんな確信を胸に、私は心地よい眠りに落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ