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ep16 怠慢を極めんとするものは勤勉となる

「春香さーん、次のお客さん入ります!」


ルミカの声が店内に響く。


「よっしゃ、いくぞ!」


私はオイルを手に取り、気合いを入れ直した。


今日も満員御礼。ありがたい話だが、正直体が悲鳴を上げている。


ルミカも顔には出していないが、明らかに疲れが溜まっている。


メンズエステ春香は、今や町でもちょっとした人気店だ。


常連客もつき、新規客も増えてきた。


ルミカという即戦力が加わったことで、売上は単純に1.5倍。


だが、それ以上に忙しくなった。


施術士2人で回すには限界が見えてきている。


「楽して稼ぐつもりだったのに、なんでこんな働いてるんだろう…」


私はふと天井を見上げて呟いた。


怠慢を極めるつもりが、今ではすっかり勤勉に働いている。


これが「楽をするために努力する」というやつか。


「もうだめだ…新人、雇おう」


私は施術後の休憩時間にルミカに宣言した。


「えっ、新人さんですか?」


「そう。私たちだけじゃもう回らない。あと二人くらい欲しい」


「でも、どんな人が来るんでしょうか…」


ルミカは少し不安げだ。


確かに、まともな人が来るとは限らない。


それでも、背に腹は代えられない。


こうして、「メンズエステ春香」の人材募集が始まった。




翌日。


「じゃあ、ここに『施術士見習い募集』って書いて貼るぞ」


私は店の入り口に、手書きの張り紙を貼り出した。


「どんな人が来るんでしょうね…」


ルミカがワクワク半分、不安半分といった顔をしている。


「ま、待ってればそのうち来るでしょ」


春香は楽観的だった。


しかし、その考えが甘かったことを後で思い知る。




「俺の腕力で客のコリをぶっ潰してやるぜ!」


最初に現れたのは、筋肉隆々のオッサンだった。


どう見ても冒険者上がりだ。


「いや、うちはそういうの求めてないんで」


丁重にお引き取り願う。


「えっと〜、私、触るのってこうですかぁ?」


次に来たのは、力が入っているのかすら分からないほどの天然系お姉さん。


「うーん…え、えろいが……ごめん、ちょっと違うかな」


これも不採用。


「僕、根性あります! 体力も自信あります!」


やる気だけは異常にある青年も来たが、求めているのはそういう方向性ではない。


「いや、そういうんじゃなくて…」


こちらも不採用。


「若い頃はモンスターの背中を揉んでたのよ」


最終的には、元冒険者のおばあちゃんまで現れた。


「いやいやいや、もう何でもありかよ…」


私は思わず頭を抱えた。


まともな人材は来ないのだろうか。


そんな時だった。


「すみません…求人を見たんですが…」


現れたのは、ふわっとした雰囲気のおっとり系美女だった。


胸元に視線が吸い寄せられる。


爆乳である。


「本を買うお金がなくて…働きたいなって…」


「本?」


「はい。読書が趣味で…」


見るからに優しそうで、癒し系オーラを放っている。


「……合格!」


即決だった。


「えっ、いいんですか〜?」


「いいんです!」


「やったぁ〜…」


ゆるゆると喜ぶ彼女。


名前はシルビア、20歳。ニートとのことだった。


すでにお店の看板になりそうな逸材だ。




その数時間後。


「失礼しまーす!」


今度は元気いっぱいな声が響いた。


入ってきたのは、若くて可愛らしい女の子だった。


スラッとしたスタイルに、緑色の髪、元気一杯の笑顔がよく似合う。


だが、一番目を引いたのは……耳だった。


尖っている。


エルフだ。


「春香さん、エルフですよ、エルフ!」


ルミカが興奮している。


「あなた、施術士に興味あるの?」


「はいっ! でも…私、ドジで…すぐ転んじゃったり…」


たどたどしく話す様子も愛らしい。


「……合格!」


これも即決だった。


耳が尖っているだけで採用に値する。


名前はアルム、18歳。


ちょっと頼りないが、それもまた良し。




こうして、施術士見習い2名を迎えることになった。


爆乳おっとりお姉さん、シルビア。


可愛らしいドジっ子エルフ、アルム。


「これで4人体制だな!」


私は満足気に頷く。


楽するために人を増やしたはずなのに、

新人教育が待っている。


怠慢を極めんとするものは、勤勉になる。


「よーし、みんなで稼ぐぞー!」


春香は気合いを入れて拳を突き上げた。


こうして、メンズエステ春香の新たな日々が始まる。

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