ep13 施術士見習いルミカ、特訓と成長
開店準備が終わり、今日も一日が始まる。
春香はふと、隣で鏡を見ながら髪を整えるルミカに目をやった。
(…そろそろ、あいつも一人前に育てないとな)
最近、ルミカの施術は固定客もついてきて、それなりに形になってきている。
ただ。
「ルミカ、最近どう? 施術、手応え感じてきた?」
「はい! でも…まだピリピリ頼りかなって」
「だろうな」春香は腕を組む。「そろそろ電気だけじゃなく、手技覚えろ」
「手技…ですか?」
「そう。指圧とか力任せじゃなく、アロマ使ったオイルマッサージ、リンパを流して老廃物も流す。…あと、メンズエステならではの”ギリギリ”を攻める施術な」
「ギリギリ…!?」
ルミカが頬を染めてうろたえる。
春香は笑って「もちろん、やりすぎはダメよ。スペシャルはまだ早い。」と言い添えた。
「大事なのは触り方。撫でたり押したりさわさわしたり。筋肉や血管を意識しながら、老廃物を押し流して、気持ちよくさせる。力じゃない、手のひらと指の使い方だ」
「はい…! でも難しそう…」
「最初はね。でも、覚えたら強い。ルミカの武器になる」
こうして、ルミカの『手技習得特訓』が始まった。
営業後、春香が施術ベッドに横になり、ルミカがオイルを手に取る。
「じゃあ、今日はふくらはぎからやってみな」
「はい…失礼します」
ぬるっとした感触が肌を滑る。
「もっとゆっくり。撫でるんじゃなく、筋肉を押し流す感じで。親指だけに頼るな、手のひら全体で包み込むように」
「えっと…こうですか?」
「力入れすぎ! あと、指先ガチガチにしてたらダメ。もっと脱力!」
「あわわ…!」
ルミカの額に汗がにじむ。
最初はぎこちなかった手つきが、何日も練習を重ねるうちに変わっていく。
ある日
「春香さん、この辺…詰まってますね」
「あぁ、そこ張ってるな。いいじゃん、ちゃんと感じ取れるようになってきたな!」
「本当ですか!? やった…!」
ルミカが喜ぶ姿に、春香も内心ホッとする。
「いい調子。でも、ルミカの武器、”電気”もある。電気と手技、両方合わせれば、他の施術士にない施術ができる」
「はいっ! 電気も手技も…最強になります!」
ある日、ルミカが一人で常連客を担当することになった。
「ルミカちゃん、今日は頼むよ~」
「はい、よろしくお願いします!」
オイルを手に取り、緊張しながらもゆっくりふくらはぎから流し始める。
(春香さんに教わった通りに…)
徐々に肩まで上がるころには、客はすっかりリラックスしていた。
「おぉ…、めっちゃうまくなってるじゃん!」
「えっ!? 本当ですか?」
「気持ちいいよ~。ピリピリもいいけど、この流れるような手さばき…ヤバいな」
施術が終わった後、ルミカは満面の笑みで報告に来た。
「春香さん、今日…褒められました!」
「おぉ、やったじゃん! もう見習い卒業か?」
「え、まだまだです! でも…嬉しい!」
春香も、胸が熱くなるのを感じた。




