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ゼムナ戦記 フルスキルトリガー  作者: 八波草三郎
窮すれば通ず

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旭の太平(3)

 結論として、ZACOF(ゼイコフ)とゼオルダイゼの直接交渉は無しになった。なにより、当該国にまともな政府機能が残っていなかったのもある。星間管理局が仲介して捕虜引き渡しおよび賠償金などの立替を行い、戦争終結の運びとなる。


「ご尽力感謝いたしますわ」

 メーザードのキトレイア・イブストル大統領から直接感謝の言葉を賜る。

「いえ、僕は業務として従軍しただけですので」

「でも、ライジングサンの戦果を上回るものは連合軍の中にはいないでしょう?」

契約料金(フィー)分くらいは働いた自負がある程度です」

 労いをもらえば疲れも爽やかなものになる。

「あいかわらず君は謙虚だな」

「あなたほど多忙ではありませんよ、ワイアット国務相」

「メーザードの復興もう少しだ。首都ザーディラにもかなり活気が戻ってきた。今は戦勝ムードで盛り上がっている。また来てくれ」


 沈鬱な空気が蔓延していた街も変わりつつあるらしい。強かな指導者を得た国家は国際社会でも伸び代を発揮するだろう。


「いずれ遊びにお邪魔します」

「そう言わずにだな、君になら頼みたい仕事は山ほどある」

「遊びでなら、です!」


 国家の依頼(オーダー)など複雑で難しいものはとうぶん御免だ。のほほんと宇宙を飛ぶ仕事が良い。


「なあ、来てくれ、ルオー」

 間を置かずホーコラのザロ・バロウズ首相から連絡がある。

「たまにエルゲンの野郎が素っ頓狂な政策をさも自慢げに持ってきやがるんだ。説得するのが大変なんだよ」

「それは民間軍事会社(PMSC)の仕事ではありません。さっさと人員拡充して軌道会だけで議会の半分を取ってください」

「言ってもなぁ、人材育ってないからしばらくは連立与党でどうにかするしかないって」

 国家事業のほうは順調そのものでも悩みは尽きないらしい。

「そのうちヘルガさんの牧場には行きますのでその帰りくらいは顔を見せますよ」

「俺はオマケなのかよ」

「友人なんだからそのくらいでいいんじゃないです?」


 友達だと言えば、嬉しそうに相好を崩す。そのときに悩みを聞いてやれば満足だろう。


「おや、ケイティさん、どうしたんです?」

 今度はコッパ・バーデからだった。

「どうしたはないでしょ? 新メニューが溜まってるんだから早く来て。じゃないと、オリガが爆発しちゃう」

「それは危険ですね。近いうちに伺います。オーサムさんとの結婚も近いんでしょう?」

「そっちはそんなに忙しくないの。エシュメールで常連さん招いてお披露目式するだけ」

 タイミングを合わせてお祝いに行こうと思っている。

「フュリーとレンケもルオーやクーファに会いたいってうるさいんだから早くしてね」

「可哀想なんでパットも歓迎してくれるよう説得しておいてくださいね」

「あ、忘れてた」

 相方が憐れである。


 しかし、いかんせん、コッパ・バーデに行くとクロスファイト運営がなにか言ってきそうで腰が重い。こっそりと伺いたいところ。


「お元気?」

 今をときめく女優ロザリンド・メーガスンからだ。

「お忙しいのでは?」

「ええ、忙しいけど、それはあなたもでしょう? ニュース観たわ。今なら遠慮なく連絡取れそうだったから」

「やっと一段落です。時間が空いたんでクゥと一緒にあなたの作品を追いかけますね」

 ロザリンドが「ありがとう」と返してくる。

「ディルフリッド監督からオファー来てるんだけど、できればライジングサンとセットでって言ってるの。近いうち空かない?」

「映画のお仕事です? それは平和でいいですね。ゆっくりしたあと連絡させてもらっていいです?」

「嬉しい。じゃあ、監督にも伝えとくわ」


 通信が切れてから今の体制での問題に気づいた。ゼフィーリアはまず顔出しをお願いされてしまうだろう。任務的に難しいだろうから困らせてしまうかもしれない。要相談である。


「デヴォーさん、例の件ですけど」

 空いたところで連絡する。

「なあに?」

「困りますって。契約料金(フィー)っぽいの受け取ったらダブルブッキングで星間法の民間軍事会社細則にぎりぎり触れてしまうんです」

「じゃあ、ぎりぎりセーフってことになさい」

 押しが強いのは言わずもがな。

「それを判断するのは僕じゃないんですってば」

「黙っておけばいいわ」

「ゼフィさんがいるの知っててどの口で言うんです? 管理局は僕の首根っこを押さえたくて仕方ないのわかってくださっているものと」


 どんな違反の代償を求められるかわかったものではない。絶対に隙を見せてはいけない相手である。


「あら、なんの話かしら」

 折り悪く当のゼフィーリアが操舵室(ステアハウス)に顔を見せる。

「ななな、なんでもないです!」

「へぇ」

「ゼフィーリア、あなた、ライジングサンを辞めないの?」

 不都合に感じてるらしい。

「ええ、ギャランティはとってもいいもの。ヘヴィーファングのメンテも苦労しないし、こんないい環境他にないわ」

「そう、じゃ、多少は大目に見なさい。じゃなきゃ、その眠そうな男にモンテゾルネの仕事を受けるよう説得して」

「詳しい話を聞いてもよろしいかしら?」


 ゾッとしない話にルオーは操舵室(ステアハウス)から逃げ出した。

次回最終話『旭の太平(4)』 「帰省したときくらいゆっくり寝させてくださいよ」

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― 新着の感想 ―
更新有り難うございます。 割と立場弱いですよね、ルオー君。
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