886.お茶会をおすすばん?
レオンはご機嫌でヘンリック様のお膝に座り、私が差し出すご飯を食べた。二人一緒に構ってもらえるのが嬉しいようで、にこにこと笑顔だった。これでローズが寝込んでいたら心配だろうけれど、先ほど元気に手を振り合ったので安心しきっている。
甘えてべったり懐いたレオンに、ヘンリック様もずっと笑顔だった。よかったわ、あの落ち込みようでは、こちらが辛くなるものね。ユリアンは手が痛いので、肉などをお父様がカットして渡した。それを見たレオンが「おなし!」と声を上げる。
「本当、赤ちゃんね」
くすくす笑いながら揶揄ったら、あの子、お父様に向けて「あーん」と口を開けたの。驚いたお父様が押し込んだフォークの肉が、鼻にぶつかって大笑いした。赤ちゃん扱いされて拗ねるどころか、調子に乗って食べさせてもらうなんて……ユリアンらしいわ。
ユリアーナも「こんなユリアンは嫌」と拗ねるかと思いきや、大笑いした。きちんと口を手で覆ったけれど、あの大笑いでは台無しね。淑女らしさはないわ。
食事が終わって移動したところで、リリーがディの容態を伝えてくれた。お乳を飲んで、尿もちゃんと出ている。熱もなく落ち着いていると聞いて、ほっとした。様子を見に行きたいけれど、赤ちゃんは弱いから。数日我慢しましょう。
「ローズが元気になって良かった。お茶会には連れていくのか?」
「迷っているの。お医者様に相談かしらね」
感染する病かどうかも判断してもらいたい。そんな話をしていたら、お父様が口を挟んだ。
「もし置いていくなら、その日は私とエルヴィンが対応できる」
「ありがとう、お父様。もし手を借りるようならお願いするわ」
使用人もいるから、平気だと思う。でも家族がいたほうが安心できるなら、手を借りるわ。そんな話をしている大人をきょろきょろと見て、レオンが手を挙げた。
「どうしたの? レオン」
「んと、ぼく……ろじぃとおすす番できる」
おすす……番? おすすばん……お留守番! 頭の中で変換した。すぐに思いつけて良かった。待たせたら、レオンが気にしちゃうもの。
「お留守番してくれるの? ルイーゼ様が来るけれど、平気?」
「るぅ?」
確認に頷き返すと、真剣に考え込んだ。レオンの悩む姿がまた可愛いの。こてりと肩に耳が付きそうなほど傾けて、それから反対に倒す。顔は真剣で、唇が少し尖っていた。さらさらの黒髪が、首が揺れるたびに頬や首筋を滑る。お人形みたい。
「ローズが元気になれば、皆で行けるわ。だから明日まで待って考えましょうね」
医師の判断次第、別の逃げ道を用意したら笑顔になった。ヘンリック様のお膝が気に入ったのか、胡坐を掻いた膝に座る。お父様が手招きしてレオンをお菓子で釣った。素直に走っていくレオンは、お父様のお膝でお菓子を齧る。
教育や躾の面では良くないけれど……我慢させちゃったものね。今回は仕方ないわ。




