876.妻そっくりの優しさ ***SIDEヘンリック
レオンが「ゆんも」と強請るので、義父殿とも交えて、男四人で寝ることにした。まあ、義父殿は遠慮していたのだが、悲しそうなレオンに「だめ?」と聞かれたら、あっさり陥落だ。これは俺でも白旗を上げるパターンだな。
先日使った客間を使うことにして、フランクに支度を頼む。すぐにイルゼが現れて、準備は整ったと告げられた。寝着も運ばれており、順番に風呂へ向かう。ふと……騎士団が所有する大きな風呂場を思い出した。何度か早朝の鍛錬の後、使わせてもらったが。
あれのような大きな風呂を作ったら、皆で入れるな。それも悪くないと考えたが、普段は義父殿やユリアン、エルヴィンもいないのだった。残念だがアマーリアは一緒に入ってくれないだろう。その前にフランクやイルゼに叱られるか。
あの二人は俺にとって、事実上の両親みたいな立ち位置だ。叱って、抱きしめ、甘えさせてくれた。今でも「叱られるだろう」と思えるのは、彼らが正しく導いたからだ。感謝しているし、今後も頭が上がらない。
外では立派な公爵閣下でも、家の中では頭の上がらない相手がいてもいいさ。
「お父様、ねこ……アイも一緒!」
寂しいから猫も一緒に寝たい。素直に強請る息子に、少しばかり考える。アマーリアならどうするだろう。許可するか? それとも明日にしましょうと言い聞かせるか。
「俺が連れてきてやるよ」
考えている間に、ユリアンが飛び出していった。あの闊達さは、アマーリアも手を焼いていたな。期待の眼差しを俺に向けるレオンに「ユリアンが連れてくるから、一緒に休もう」と告げた。途端に、大喜びで飛び上がる。
座っていたソファーの反動もあって、勢いよく伸びた。ごんと顎にぶつかって激痛が走るも、レオンが頭を押さえて蹲っている。
「痛いのか? たしか……」
アマーリアが何か歌っていたっけ。
「痛いの、痛いの、飛んでいけ」
義父殿がそう唱えて、レオンの黒髪を撫でる。そのまま俺の顎に触れ、はっと我に返った様子で固まった。もしかして、エルヴィンとユリアンあたりと間違えたのか? 子ども扱いされて、嫌ではなかった。むずむずした不思議な感覚に襲われ、そのまま手に頬を寄せる。
「あ、すまない。さすがに失礼だったか」
「いえ。俺はあなたの義息子ですから」
エルヴィン達と同じ扱いでいい。義父殿が微笑むと、アマーリアに似ていた。騙されやすくて家族の生活を困窮させて、領地も奪われた人だが……親としては正しかったのだろう。だからアマーリアは優しく育った。
微笑み返そうとしたところで、「まだ、いたいたいの」とレオンが訴える。慌てて俺と義父殿が小さな頭を両側から撫でた。




