868.もしかして具合悪いの?
翌日には王太后であるマルレーネ様の許可が出たそうで、皆でバルシュミューデ公爵家のお茶会へ参加が決まった。バルシュミューデ公爵ロルフ様とリースフェルト公爵イザーク様のお二人が、王宮で当日の留守番を務めてくれるの。
「あなたは休んで平気なのね?」
「ああ、そのためのロルフ殿とイザーク殿だ」
胸を張って堂々と言い切るヘンリック様に、くすくすと笑ってしまう。お仕事を押し付けたのに、誇っているんですもの。王宮を空にしたらまずいと気づいて、すぐにお願いしたらしいわ。
「次のお茶会では、あなたとティール侯爵のお二人で留守番ですわね」
「……うむ、仕方ない」
渋々といった顔で頷いている。順番ですよ、子ども達もちゃんと順番を守るのですからね。親が手本にならなくては……微笑んで付け足すと「当然だ」と言い切った。
バルシュミューデ公爵家主催のお茶会で、一応接待役は夫人であるユーリア様になる。でも夫のロルフ様は王宮に詰める。それって大丈夫かしら? もしかしたらヘンリック様が無理を通したのかも! 子ども達がお絵描きしている間に、フランクを見つけて尋ねてみた。
「お茶会の主催をされる家の旦那様、ですか」
「ええ、ヘンリック様が休むために出仕してくれるらしいの」
「問題ございません。通常、お茶会は奥様である夫人の社交になりますので、午餐とは違います」
午餐は、お昼から午後のお茶にかけての時間でゆったりと食事をする。晩餐会の昼間バージョンね。それならば、家としての正式な社交になると教えてもらった。夫人の社交は女性同士が集まって情報交換をしたり、交友を深めたりする。
家として客人を招く午餐では、当主夫妻が人を招く形だった。家同士の契約だったり、交流だったり、もっとスケールの大きな話になる。王宮で昼間に貴族を集めて食事会をする場合などが、これに該当するみたいね。
「ありがとう、助かったわ」
「いえ。こうして尋ねていただくほうが助かります」
それに関しては申し訳ないわ。私が貴族の慣習に疎いから、突拍子もないことを始めちゃうの。陰で笑うのではなく、表からきっちり叱って教えてくれる人の存在は大切だった。
「頼りにしているわ。よろしくね」
くいっと裾が引っ張られ、斜め下を振り返る。ローズだった。少し離れた場所で、ユリアーナが顔の前で両手を合わせて「ごめんね」と口を動かす。部屋から逃げてきちゃったの?
しゃがんで視線を合わせる。弟妹やレオンの時から行ってきた習慣は、自然と体を動かした。スカートの中で、こっそり座ってしまえばいいの。見えないはずよ。
「どうしたの? ローズ」
「あたち、きぉち……ぁるぅ」
気持ち、ある? いえ、その前に顔色が青白いわね。もしかして、気持ち悪いの?




