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【書籍重版】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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725.すごく贅沢な時間だわ

 家庭菜園の植物は順調、ラルフの回復も良好ね。お茶会のお誘いは出したし、お土産のはつか大根の準備も手配した。ユリアンから返事が来たので、春祭りの予定も立てて……あら、意外と忙しかったわ。


 貧乏だったシュミット伯爵令嬢時代は、どうしたって時間が足りなかった。お料理を作る、掃除、草抜き、屋敷の修繕、繕い物、洗濯……とにかく手が足りなかったの。食器洗いをユリアーナが手伝ってくれるようになって、本当に助かったくらいよ。


 お買い物はユリアンが担当してくれたし、お金はお父様が必死にやり繰りした。エルヴィンは他家に手伝いに出て、多少なり賃金をもらっていたわ。皆でぎりぎりで家を維持して、家庭菜園もあの頃に試したの。でも手が足りなさ過ぎて、雑草に埋もれてしまった。


 ほとんどが収穫前に枯れてしまったの。栄養不足もあるし、雑草が作る日陰で萎れていた。水やりの時間もなかなか取れなかったもの。使用人がいれば違ったでしょうね。ただ賃金を払う余裕がなかった。住み込みでお小遣い程度も一般的だけれど、それすら賄えなかったの。


 あの頃に想像した貴族の奥様やお嬢様の生活は、日々着飾ってお茶を飲む。優雅に読書をして、時間が余れば刺繍をする。毎日風呂に入って豪華な食事を楽しみ、月に何度か夜会に呼ばれるから着飾って出かけると思っていた。


 実際、想像に近い生活もできるでしょうね。でも弟妹の面倒を見ていた私は、贅沢すぎる生活に馴染めなかった。誰かに命じたり頼んだりするより先に、自分が動いてしまう。そのほうが早いし、任せる習慣が身についていない。


 家庭菜園の土が湿っていくのを見ながら「すごく贅沢な時間だわ」と呟いた。可愛い我が子が素敵な友人と、夢中になって楽しい時間を享受している。それを目の前で見ているなんて……。


「お母様、こっちも!」


 拙かったレオンの言葉もだいぶ上手になった。隣でローズも「ありぇも」と指で示す。人参とは明らかに違う葉が生えていた。


「本当ね、何の芽でしょう」


 微笑んで首を傾げれば、ラルフが札を見つけた。レオンがじっと見つめて、読めるところまで口に出す。それをラルフが補った。


「だい……?」


「だいこん、です」


 こそこそ話しているのに、全部聞こえてしまう。もちろん、聞いていない振りをするわ。口の中で「だいこん」と繰り返して練習したレオンが、立ち上がって走った。


「らいこん!」


「まあ、大根だったの? 二人とも物知りね」


 話す間に、手の離れたローズがトマトの苗に近づく。小さい葉っぱを掴んだので「ちぎってはダメよ」と伝えた。頷いて手を離すも、なぜか指先の匂いを嗅ぐ。これって、猫もやるわね。わざわざ触れておいて、その匂いを確認するのよ。


「おか、しゃ……くしゃっ!」


「トマトの匂いね。嗅いだことあるはずよ」


 うーんと悩むローズを見て、ラルフとレオンがすぐに真似をした。葉っぱを撫でて匂いを嗅ぐ。それから葉っぱに顔を近づけた。チクチクしないかしら?

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― 新着の感想 ―
GW中も毎日の更新ありがとうございました。 シュミット伯爵令嬢時代のお暮らしぶりは現在の私の状況と似ております。 雑草が手強くて おほほ! 公爵夫人におなりあそばしても、考え方が成り金になれないアマ…
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