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【書籍重版】契約婚ですが可愛い継子を溺愛します【コミカライズ進行中】  作者: 綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢をよろしく
第五章

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724.もう芽が出ているの?

 散歩に出発してすぐ、追いかけてきた侍従から手紙を受け取る。差出人はユリアンだった。あの子ったら、また名前を省略して……。何度言い聞かせても、直らないんだから。


 開封して中に目を通す。数歩前を歩くレオンがちらりと振り返った。ラルフに促され、また前を向いて歩きだす。並んで歩く二人の間にローズが挟まった形よ。少し音の外れたローズの歌が響く。この子、音痴なのかしら? それとも子守唄を歌った人がズレていた?


 再び手紙に視線を落とす。書かれていたのは、数か月先までの予定だった。頭のほうに、春祭りの予定が追加されている。参加できそうね。


 離れに到着するので、手紙を畳んでポケットに入れた。そうそう、貴族の服は基本的にポケットがないと思っていたの。そうしたら、夫人や令嬢のロングワンピースには大きなポケットが二つ、隠しポケットが一つあるのが一般的だったわ。


 逆に平民の服のほうがポケットが少ないのよ? というのも、布をたっぷり使ったワンピースはパニエなどで膨らませている。その隙間にポケットが存在する形だった。物を入れてもパニエが支えてくれるし、挟んで形を誤魔化してくれるのよ。


 スカートの前後を合わせる縫い目に沿って、綺麗にポケットが忍ばせてある。平民はエプロンのポケットのように、太ももの位置で表に縫い付けてあるの。何か物を入れたら膨らんでしまう。


 左のポケットに入れた手紙をぽんと叩いて、位置を確かめた。大丈夫そうね。あとでユリアーナにも読ませてあげないと。


「お母様、めぇ!」


 レオンが羊のような声で呼ぶので、くすくす笑いながら隣に腰を落とす。ぺたんと座らず、腰を浮かせたまま覗いた。指さす先に、芽が出ている。


「これは……何かしら?」


 同行したリリーも首を傾げる。貴族令嬢だった彼女も、当然ながら家庭菜園の経験はない。ラルフが気づいて声を上げた。


「これ、人参です」


「よく知っているのね」


 驚いた私に、照れたような顔で小さな棒を指さした。


「ここに書いてあったので」


「あら本当。全然気づかなかったわ、ありがとう」


 ティムかハンスが用意したの? でも二人とも文字は書けなかったと思うけれど。


「あの……僕がティムさんの指示で書きました」


 水やり用のジョウロを運んだ侍従が、そっと名乗り出た。彼によれば、札はティムのアイディアだったみたい。文字が書ける侍従に依頼し、品名を書いた札を作った。それを指示通りに差したと聞いて、感心する。


 知能の高い低いは、文字が書けるかどうかではないの。こういった知恵を活かせるかどうかよ。気遣いも素晴らしいわ。礼を言って、微笑む。札の位置を頼りに水を与えた。まだ芽吹いていない種が流れないよう、量に注意して掛けていく。


 ローズは自分もやりたがり、バケツの水を手で掬って掛け始めた。ほとんどの水が袖とスカートに吸い込まれたのは、ご愛敬ね。

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