717.思い付きは計画段階でどうぞ
ラルフは二日ほど寝ていたら、かなり元気になった。そうなれば外へ出たくなる。ここ数日、天気が良くて外が気になるのね。レオンは絵本をもって遊びに来て、読んでもらうのが楽しいみたい。二人で一単語ずつゆっくり読んで、違っても笑い合っている。
数人の侍女が交代で部屋に待機してくれるので、安心だわ。リリーは私の専属だし、マーサもローズやディの世話で忙しい。ユリアーナの専属侍女としてアンネが決まって、正直、ほっとしたの。決めないといけないけれど、なかなか選べなくて。
イルゼのお墨付きだし、リリーやマーサも太鼓判を押してくれたから。安心してお願いできるわ。嫁入り先にもついていく覚悟です! と言い切られたときは驚いたけれど、凛々しい口調ときびきびした動きで好感が持てた。
ラルフの完全復帰は体調をよく確認し、ユーリア様の許可を得てからにしましょう。医師の判断も重要だし、ユーリア様が一日おきに訪ねてくる約束もした。やっぱり我が子が心配なのは、どの親も同じ。快く受け入れの返事をして、空いている客間を一つ用意した。
寛ぐ場所も必要でしょうし、貴族夫人への気遣いとして当然よ。ラルフの部屋から二つほど離れた客間は、初めて見たけれど。柔らかな印象の木目の家具、白い壁紙には薄紫の花模様、ソファーは落ち着いた青紫だった。木目の床とよく似あうわ。
明日はユーリア様が来る日だから、今日はこまごまとした仕事を片付けましょう。お茶会の予定日に合わせて、招待状のカードを選ぶ。花柄もいいけれど、押し花はどうかしら? その方のイメージで用意したら楽しいけれど、今回は間に合わないので同じ花を手配した。
招待状に使う押し花は、フランク経由でティム達が用意する。お茶の葉を何にするか、迷ってバタフライピーにした。今年のローズヒップはまだ先だもの。お茶会ではレモンをつけず、色変わりは口にしない。
お茶菓子、ドレスコード、同伴者の選定……意外と選ぶことが多かった。押し花にはスミレが選ばれたので、濃いピンクに近いインクを合わせた。綺麗な紫の花と桃色の文字で仕上げ、封蝋を施す。簡単そうで時間がかかるわ。
書き損じてしまった一枚は、文字の部分を切り落とした。これで栞として使えるわ。
「そうだわ、お茶会で皆に押し花に挑戦してもらうのはどうかしら?」
「……奥様、そういった思い付きはお茶会の計画時に仰ってください」
フランクに苦笑いされたけれど、準備をしておく。レオンやローズは楽しめるでしょうし、子供が作ってくれたら親の宝物になるでしょう? ただ……スカーフを使った前掛けは多めに準備してくれるよう、お針子に注文を入れた。絶対に花の汁で服を汚すと思うの。対策は必須だわ。




