715.似た響きの理由
話は丸く収まりそう……ところで、ふと気になったの。ラルフは愛称で、本当はランドルフよね。省略すると、公爵閣下であるロルフ様と響きがそっくりだわ。
「ロルフ様のお名前は、ラルフの愛称と似ていますのね」
ちょっとした好奇心で口にしたら、ユーリア様がにっこりと笑った。あら? これは聞いてほしかったクチかしら??
「実はね、ロルフの名をもじってラルフとつけたら、聞き間違うからと言われて変更したの」
「どなたに言われましたの?」
「それがね、ラルフの兄であるローラントが反対して」
ふふっと笑うユーリア様曰く、ヤキモチではないかと。年が離れているから、ある程度細かなことが理解できる。父親にそっくりな名前の次男が羨ましく、意地悪を口にしたのでは? と思ったとか。ありそうなお話ね。
「家で愛称を使わなかったのも、ローラントが気にするといけないから。留学してすぐに呼び方を変えようとして……でもほら、嫡男が戻って呼び方を変えるのも変でしょう?」
そのため普段は「ランドルフ」と呼ぶと笑った。思わぬ暴露話に、当事者のラルフが驚いて瞬く。
「俺は、その……おじい様が付けてくれたと思っていました」
ご先祖様にランドルフという名前の方がいたのね。
「そうか、レオンもローズもディも……俺とは関係ない名前を付けてしまったな」
うーん、と唸るヘンリック様は後悔している様子。でも、レオンは前の奥様が希望された名前と聞いている。カッコいいし可愛いから問題ないわ。微笑んでそう告げれば、ヘンリック様はへにゃりと眉尻を下げた。
知っているから平気よ。その頃のあなたは仕事に追われて、妻子に構う余裕がなかった。必死だったんだもの。
頭を撫でたいけれど、さすがにユーリア様達の前では無理ね。ここで先日話題に上がったお茶会の予定に話が移り、子供達を残して大人は移動する。レオンやローズは、侍女のリリーとマーサが見てくれる。ディは寝ているらしい。
私達は客間で応接セットに落ち着いた。柔らかいけれど、沈みすぎない絶妙なソファーに腰を下ろす。イルゼが用意したお茶は、ハーブティーだった。渋みの少ないエルダーフラワーの甘い香りがする。
お肌にいいと伝えたら、ユーリア様の目の色が変わった。身を乗り出して、食い入るようにお茶を確認する。
「これはどちらでお買い求めに?」
「うちの庭ですわ」
温室ではなく、外で育てた。珍しい花ではないと伝えたところ、お茶か苗が欲しいと頼まれる。イルゼが頷くので、まずはお茶に加工したものをお渡しする約束をした。苗はお屋敷に届けて、加工方法も手紙でお伝えしましょう。
どこの世界でも、女性の美への執着は激しいのね。




