908.アウトでもセーフでもない
レオンの瞳の色だから、紫は何度か着用した。無難なラベンダー? でも、いつも同じ色を着ていると思われるのも、貴族としてまずいのよね。この辺の事情は、イルゼに教わった。同じ服の装飾を手直しして、何度も着用するのは子爵家や男爵家まで。公爵家がそれをしたら噂になってしまう。
でもオレンジや黄色は金髪と重なる。レオンは映えるけれど、私達は残念ながら色が同化して印象がぼやけるの。全員がボヤっとした中に、ヘンリック様とレオンの黒髪が悪目立ちしそうね。灰色は印象がくらいし、金銀は避けるのがマナーだった。
原色の鮮やかな色は夜会だから、こうなると選べる色がないわ。もっと爵位に差があれば、色が同じでも「光栄ですわ」と微笑んで終わりにできるのに。考え込む私の横を、ローズが走っていく。ユリアーナが付き添ってドレスに近づき、一着を引っ張った。
「こりぇ!」
ローズが選んだのは、オレンジ色だった。にこにこと主張されても、この色は……。
「ねえ、お姉様。ローズちゃんが選んだオレンジをスカートにして、上のブラウスを別の色にしてみたらどうかしら? 例えば白とか」
ユリアーナの言葉にはっとした。そうよ、その手があったわ! ドレスはどうしても上下同じ色が多い。グラデーションやストライプ、ビスチェだけ濃淡をつけるなどの変化はある。でも、基本的に同じ色の系統だった。
「イルゼ、マナー的に問題ない?」
「はい……、前例はございませんが」
珍しく歯切れの悪いイルゼは、頭の中のマナーの記憶を辿っているみたい。しばらく考えて、軽く首を横に振った。上下別の色にしてはいけないルールは見つからなかったのね。ならば、それでいきましょう。
「花柄のブラウスはある? 薄い黄色……クリーム色、花は小さい柄がいいわ」
ある程度決めてしまえば、そこからは応用していくだけ。私は真っ白なブラウスに柔らかなオレンジのワンピース、ユリアーナは淡いクリーム色のワンピースに緑のボレロ。顔や髪の近くに、オレンジ以外の色を配置することで、印象を変えられるわ。
男性は紺色の上下に白いシャツ、胸元にオレンジを差し色にしてもらえば大丈夫。ローズはどうしましょうね。
「あたち、ぴんきゅ」
ピンクとオレンジは難しそう。いろいろ悩んだ結果、ピンクのワンピースの上に、花柄の巻きスカーフをして誤魔化すことにした。巻きスカーフをオレンジ系にしたの。これなら合わせてコーディネートしたように見えるわ。
「お姉様、全員がオレンジで揃える必要はあるの?」
必要はないわ。でも……そのほうが家族っぽくて素敵でしょう?




