905.お茶会のための身だしなみ
お茶会前日に体調不良がないなら、ローズも一緒に参加できそう。フランクに頼んで、バルシュミューデ公爵家へ参加者の連絡を入れてもらった。
私、ヘンリック様、レオン、ローズね。それからシュミット伯爵家から、ユリアーナ、ユリアンよ。エルヴィンは領地が気になると言って、今朝帰った。そうなれば、お父様も一緒に戻ると言い出す。わかっていても、少し寂しいわね。
ユリアンとレオンは、リーバー卿に鍛えてもらった。一緒に鍛錬して、基礎体力をつけているみたい。レオンはけろりとしているのに、なぜかユリアンは筋肉痛を訴える。
「どうして、あなただけ痛いの?」
「鍛錬内容が違うからじゃね?」
また言葉遣いが乱れている。そう思うも、私の言葉も貴婦人には遠いと思うわ。ときどき、庶民的な単語が飛び出してしまうし。ユリアンと一緒に、あとでイルゼに指導してもらおうかしらね。
「ぼく、いっぱい……こんくらい、はしった」
「まあ、凄いのね」
両手でいっぱいを表現するレオンが笑う。以前より長くなった前髪がさらりと流れた。視界を邪魔している気がして、リリーに相談する。
「ねえ、レオンの前髪……長くないかしら? 目にかかっているわ」
「以前と同じ長さに整えますか?」
「そう、ね……」
一瞬迷って、レオンに問いかけた。
「髪の毛、長くなったわね。切ろうと思うのだけれど、前と同じ長さでいい? どこかもっと短くしたり、長いまま残したりできるわ」
「……ぼく?」
こてりと首を傾げたら、耳にも黒髪がかかっていた。やっぱり動くのに邪魔だと思うわ。鍛錬などで汗を掻くことも増えるし、結ぶには短すぎた。でもバルシュミューデ公爵家の長男ローラント様は肩に触れる長さで、王弟殿下になったローレンツ様も後ろだけ伸ばしている。
男だから短く、とは言いたくなかった。自分が好きな長さ、好きな髪型があれば希望を聞く。幼くても一人前の小さな騎士様ですものね。待つ私に、レオンは首を振った。否定の仕草ではなくて、もっと大きく……髪の動きを確認するみたいに。
「こんくらい?」
「ええ、この辺だったわ」
レオンの指が触れた額の位置に、頷いて肯定する。少し考えて耳の上の髪を引っ張った。
「ここも!」
「短くするのね?」
頷いて最後に襟に触れた。子どもの体は柔らかいから、ぐいっと腕が動く。それでも大人より比率的に短いのか、届かなくて。じたばたと動いて唇を尖らせた。
「ここも短くしましょうか? 服に触らないくらい?」
「うん」
伝わったと笑うレオンの要望で、以前と同じ長さに整えることになった。そうなると騒ぎだすのが、うちのお姫様よ。
「あたちも! あたちのも!」
「ええ、可愛いお姫様に仕上げましょうね」
後ろはヘンリック様の希望で伸ばしているから毛先だけ、前髪はぱっつんでも可愛いと思うけれど、縦にハサミを入れてオシャレに仕上げてもらいましょう。




