893.レオンなりの理由があった
最初に選んだピンクの生地に、私のスカートのミント、柔らかなイエロー、空に似た青、紫も入れたいと言い出した。それから、濃桃の生地を指差す。
「これも! ろじぃの色」
もしかして? 同じことを考えたらしいユリアーナが、私を見て微笑んだ。任せて、という意味かしらね。私に背中を向けたレオンは、端切れの入った箱を覗いている。白いレースの切れ端を見つけて引っ張り出した。
「こりぇ!」
「少し待ってね。今準備するわ」
興奮してぴょんぴょん跳ねるレオンに、ユリアーナは頷いた。部屋のお針子に指示を出して、カラフルなリボンとレースを出してもらう。両方とも綺麗に円形に巻いてあった。
「これとこれ、どっち?」
レースとリボンをピンクの生地の上へ並べて尋ねる。白いレースは透けているし、リボンは艶があった。じっと見つめたレオンはレースを指差した。
「こっち、ふあふあ」
ふわふわ? 変わった表現をするのね。見守る先で、順番にレースを選んでいく。並べられたレースを見て、はっとした。これは虹のようなグラデーションなのね。感心しながら見守る先で、レオンは綺麗に並んだレースに手を叩いて喜んだ。
「ろじぃ、にあう!」
「……ローズにあげるの?」
「うん」
最初からそのつもりだった。当たり前のことだよ? そんな声が重なって聞こえてきそうな、返答に驚く。無言で見守っていたユリアンが「なるほど」と納得した。それからリボンを持ち上げて、レースの先に並べる。色の順番は同じだが、艶のあるリボンの間からピンクが覗いていた。
「レオン、こっちはカッコいいだろ? そんで、これは可愛い」
「うん! ぼく、かっくいいのにする」
ちょっと落ち込んでしまう。レオンのことは一番わかっているつもりだったのに、まさかユリアンが先に読み解くなんて! リボンを使うとカッコよくて、レースは可愛い。レオンの感性ではそうなっていて、カッコいいから自分はリボンにするのね?
子どものマスクは小さいから、下のピンクはほんの少ししか見えない。それでも満足そうなレオンの黒髪を撫でた。振り返って「かっくいい?」と笑うから、「すごくカッコいいわ」と褒める。
「んとね、ろじぃ……おへぁから出るの。これ、いるでしょ?」
皆がマスクをし始めたから、部屋の外に出るにはマスクが必要だと思った。でもローズは持っていないので、可愛いマスクをプレゼントしたかったみたい。
「ありがとう。レオン、ローズも喜ぶわ」
「うん」
お兄ちゃん子だから、レオンがくれたら草でも喜びそうなローズを思い浮かべる。これなら嫌がらずにつけてくれそうね。
「お姉様。私が仕上げるわ」
リボンは細いものを使い、レースはひらひらと重ねて縫う。そうすれば面積が小さい子ども用のマスクでも、綺麗に色が重なると提案された。
「ええ、お願いするわ。ありがとう、ユリアーナ」
カラフルマスクで雰囲気違いのお揃い、ちょっと羨ましいわね。




