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バカと天才は"神"一重  作者: 抹茶
復讐の仮面編
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第23話

 


 上階が吹き飛び、煙をあげる校舎。

 その中から出てくるのは我が生徒会長その人であった。

 修理は確実となった校舎を見て何を思ったのか、爆煙の中から姿を現したファウストは盛大に顔をしかめていた。


「クッソ……」


 恐らく攻撃を受けたのだろう……。

 制服の所々に汚れや焦げはあるものの、ファウスト自身に目立った傷はない。

 その手に持っている剣が神々しく光っているのが少しアンバランスであったが。


 忌々しそうに吐き捨てた悪態と視線の先には武装したカルロの姿があった。


「マナーのなってないガキだな。いきなり人に魔術を撃つなってお母さんから習わなかったのか?」


 そう言いながらいくら距離があるとはいえ、剣先を相手の眉間に向けるのはマナー的にはどうなのだろうか。


「ふんっ、マナーを叩き込まれてるならこんな事をするはずがないだろ」


「ま、それもそうか」


 カルロの軽口にわざわざ乗っかるような真似はせず、あくまで大人の対応と言わんばかりの仕草を見せるファウスト。

 しかしそれは表面上に過ぎない。

 二人の間からは見えない何かが火花の如く迸っているのがわかる。

 年上に噛みつく生意気な後輩とそれをシメようとする先輩……といったような構図がしっくりくるだろうか。


(とりあえずこのガキはさっさとシメるとするか、ムカつくし……それに、リオード達の方も気になるしな)


 三割程……いや、最早感情的には半分程私情を挟んでいるのでは……と言いたくなるくらいにわかりやすい考えだった。

 しかしそれをわかるのはこの場にはファウストしかいないわけで、徐々に高まっていく魔力の濃度も量もカルロには戦闘体制の現れにしか見えないだろう。


(凄い魔力だ……でもそれくらいなら僕だって負けやしないさ)


 カルロの魔力もまたファウストに負けじと上昇していく。

 さっきまで魔力の欠片すら感じられなかった少年が今は自分と互角以上の魔力を解放している。

 その現実はいくはファウストと言えど素直に頷き難いものがあった。

 だが今はそんな事を気にしている場合ではない。

 侵入者の殲滅が最優先事項。

 ファウストの思考は僅か一瞬で戦闘へと切り替わった。


 先に動いたのはカルロ。

 右手を素早くファウストに向かってかざした。

 その動きと同時に周りに異変が起こる。

 大地が徐々に揺れ始め、所々に亀裂が走り始めていた。

 そして息つく間もなく大地が意思を持ったように更に活動し、ファウスト程はあろうかという大きさの岩石が大量に宙に浮かんだ。


「マジで?」


「潰れろ」


 少々唖然とするファウストを他所にカルロがそう言うと、鉄砲玉の如く岩石が飛ぶ。


 広域砲撃魔術【破鉱砲(はこうほう)】。


 周りの岩や鉄などの鉱物を集め、それを砲弾として放つ高威力の魔術。


「っと! だから校舎を……」


 何故かそこに気づき更に眉を潜めるファウストだが、そうしてばかりもいられない。

 まぁ潰されるのは誰でも御免こうむりたいだろうが。

 剣を持っていない左手を岩石の大群にかざす。

 するとその瞬間、押し寄せてきていた砲弾が全て砂のように細かくなり、その形を無くしてしまったのだ。


「何っ!?」


 マスク下のカルロの顔が驚愕に染まる。

 あまりにも呆気なく消された自身の攻撃にか、それとも消したファウストの実力にかまではわからないが。


「中々やるみたいだね」


「そっちもな」


 軽く……とは言えない攻防を一つ終え会話を始める二人。

 だが声のトーンから察するに先のやり取りに競り勝った印象が強いファウストの方がやや優勢のようだ。


「一つ聞きたい」


 まだ戦いに戻ることはせず、ファウストは会話を進めようと口を開く。


「何?」


 明らかにふてくされた口調のカルロ。

 だが今のファウストはそんなことを気にはしない。


「その姿になる前に見せたあの機械は一体なんだ?」


 決して強くはないが、有無を言わせぬプレッシャーを纏った口調。


「………………」


 カルロは無言のまま睨むだけで口を開こうとはしない。


(いやまぁそりゃあ言うわけねえだろうけどよ……。口は開けや糞ガキ)


 別にそことしてはファウスト自身話すとは思っていない。

 だだ、カルロが気に入らない……ただそれだけだろう。

 別にファウストは気が短いわけでも好き嫌いが激しいわけでもない。

 ただ絶望的なまでにこの二人の性格が合わないだけなのだろう。

 そしてファウストは既に心に決めていた。


(情報なら無理矢理吐かすまでだ)


 …………と。


 ファウストは流れるような身のこなしで次の行動に出ていた。

 自分の持つ剣を浅くではあるが地面に突き刺す。


「っ!?」


 そしてそれと同時に突然の地鳴りと地響きがカルロの周囲を襲う。

 ファウストはただ話していたわけでもカルロにイラついていただけでもなかった。

 着々と次の準備を進めていたのだ。

 それもカルロに全く気取られる事もなく……。


 広域地殻変動系魔術【クラスト・プルセーション】。


 まぁ、簡単に言ってしまえば地震である。

 使用者の意思により範囲、規模等は自由自在である。


 そしてファウストの魔術はそれだけで終わらない。

 息をするかのように地面に突き刺した剣に魔力を滑らかに送り込む。

 すると今度は揺れていた地面がファウストが突き立てた剣を中心にヒビが入り始めたのである。


「っ!!!」


 小規模ではあるがこれは立派な自然災害。

 本来なら地形を変えてしまう程の猛威にカルロも耐えられなくなったようだ。

 地震からの地割れ。

 最早校舎の事など気にしていないのでは……と疑いたくなるほどの魔術である。


「くっ……うぁっ!!」


 ついに割れた地面の中へとカルロの足が飲み込まれた。


「終わりだ」


 ファウストはカルロを一気に飲み込もうと魔力を更に込めていく。


「ふざ……ける……なぁぁ!!」


 ここで初めてカルロが大きな声をあげた。

 両手を割れている地面にかざし大声と共に魔力を放出。


「っ!!」


 両手からはまるでジェットのような魔力が放射、空気が歪んで見える程の……。

 そしてその勢いでカルロの体は高く舞い上がりファウストのテリトリーから逃れる事に成功する。


(今の相当高密度の魔力の塊だったぞ)


 今のを見て一筋の汗がファウストの頬を流れていく。


「喰らえ……」


 宙に浮かんだままのカルロはそのままファウストに向かって手をかざす。

 すると今度は空気をそのまま圧縮した砲弾サイズの塊がファウストに向かって飛んでくる。


「今度は圧縮空気弾かよっ!!」


 そう叫びながらもファウストは前に出た。

 空気弾の数は四つ。

 サイズは約半径一メートル弱。


(それなら!)


 ファウストは持っていた剣を強く握る。

 するとそれに呼応するかのように剣が更に白く輝き始めた。


「──シッ!」


 そして鋭い掛け声と共に剣を振るうと、四つの空気弾がいとも簡単に切り裂かれた。


「…………」


 最早カルロは驚くことはなかった。

 剣一本で自身の魔術がアッサリと切り裂かれても、さっき起こした一連の技だけで驚くには十分だった。

 だからこそ次の行動に移った。

 それは、更なる攻撃。

 カルロの背後から、今度は無数の空気弾がファウストに向かって放出される。

 ファウストはその数を数えようとしてすぐに諦めた。

 それよりも迎撃した方が早い。


「ブローシャ」


 小さく聞きなれない言葉を紡ぐ。


 するとどうだろう。

 ファウストの持つ剣が先程のどの時よりも輝き始めたではないか。


 白剣【ブローシャ】。

 全てが純白に包まれたその剣。


 ファウストは多めに魔力を込め、ブローシャを横薙ぎに振るう。


「なっ!?」


 さっきまで平静だったはずだが、今度ばかりはカルロの目も驚愕に染まった。

 ブローシャから放たれた魔力の斬撃波が自身の放った空気弾を全て消してしまったからだ。

 そしてカルロが動揺した隙をファウストは逃さない。

 自身に跳躍の魔術を施し、強く地面を蹴ると一瞬でカルロとの距離を詰める。


「……クソッ!!」


 慌てて追撃の魔力弾を放つが、全て一瞬で斬り裂かれてしまう。


(何故だ……何故あんな剣一本で僕の魔力弾が……クソッ!!)


 信じられない光景を目の当たりにしながらも砲撃は止めないカルロ。

 投げやりな攻撃ではあるが。

 しかし本人が相当焦っている。

 込める魔力も方向もてんで出鱈目。

 それが故に気付けなかった。


「そんな魔術じゃブローシャ一本で充分だぜ?」


「──ッ!?」


 目の前に居たはずのファウストが、既に自分の背後に回り込んでいた事に。

 カルロの驚きは最高潮に達していた。

 次の行動に移る事も、その行動を考える事すらも出来なくなっていた。

 少し前までは冷静だったはずだが、ブローシャが魔力弾を消してしまった事がそんなにも衝撃的だったというのか。

 それはわからないが今のカルロは無防備である。

 ファウストはその背中に向けて何の躊躇いもなくブローシャを振り下ろした。



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