第24話
──どうしてこうなった。
ファウストがカルロとやらに攻撃され、体育館から出て行った。
その時に体育館がかなり壊れたのは言うまでもない。
まぁ別にそれはどうでもいい。
だってファウストだもの、一人で何とかするでしょう。
問題はここよ……。
この体育館内にはサイボーグ風豹人間に変身したミネストローネ君がいるわけで。
そして俺ら一年生組は全員ここにいるわけで。
これ多勢に無勢じゃーん!
と思って余裕かまして結界符を発動させたわけよ。
そ・う・し・た・ら!
ただの結界符じゃなくて、隔離結界って魔符だったのね。
しかも手元が狂ってね、俺以外のみんなを隔離するように結界を展開しちゃったわけ……。
しかもこの隔離結界って相手を封じ込める用だからさ?
十五分は展開しっ放しなのよ。それに強度はかなりある。
つまり何が言いたいかと言うと、
俺、ぼっち……でミネストローネとタイマン。
「リオード、お前俺達を守るために……」
「リオードさん!!」
「でも一人なんて無茶だよ!!」
みんなが感動やら心配やらしてくれるのは有難いよ。
でもね?
「兄さん……」
フィルちゃんにはバレてるの……。
俺のミスだって。
少し笑い堪えてるし。
てか、少しはお兄ちゃん心配してよね。
「おぉおぉ!! お前一人でやろうっってかあ!? 見上げた根性じゃねえかあ!!」
うるせー、クソ猫ミネストローネ。
こちとらフィルを中心にそれを援護しつつアッサリ逃げるつもりだったんじゃボケ。
理由?
面倒くさい以外にあるとでも?
だってロアーツの一戦で学んでるのよ?
面倒くさいって!!!
だが仕方ない。
やっちまったもんは仕方ない。
十五分だ、十五分俺が耐えきれば隔離結界が解ける。
そしたら後はフィルにほぼ任せよう。
それまで俺は逃げる!!
「うぉりゃぁぁぁぁ!!!」
耳を塞ぎたくなるような叫び声と共に俺に飛びかかってくるクソ猫ミネストローネ。
しかしまぁその身体能力は素晴らしい。
豹人間だからって事を差し引いても速い。
それに加えて手から伸びるのは岩でも余裕で貫通しそうな爪。
つまり……
「避けまぁぁぁっす!!」
当たるのは勘弁です。
しかしそこは豹の俊敏性といったところか。
すぐさま方向転換、からの鋭い爪が今度は三連続で放たれる。
俺は首を軽く左右に振ってそれをかわす。
「らぁぁぁぁ!!」
うるっせ!!
こいつ黙って攻撃できねぇのかよ!!
思わず眉を顰めてしまう。
しかし、それが隙となってしまったのか。
目の前からミネストローネが消えていた。
驚きそうになったが、背後に気配を感じたので慌てず対処する事にした。
というかミネストローネに背を向けたまま蹴り飛ばすだけだ。
「うおぉっ!」
不意打ちにも似た一撃だったが、ミネストローネは咄嗟に両腕をクロスして防御しやがった。
少し残念だったが、別に攻撃を当てるのが目的ではなかった俺は躊躇いなく距離をあける。
「俺のスピードについてくるとは中々やるなぁ!」
「そりゃどーも」
適当に返事をしながら俺はフィル達の方向をチラッと見る。
(兄さんは私達に危険が及ばない為にこうやって一人で赴いてらっしゃるのですよ。だから安心して兄さんに任せておけばいいのです。珍しくやる気ですから。)
(そうなんだ、なら安心だね!)
あれー?
フィルちゃん、シアさんに何を言ってるのかな?
間違えたって君は知ってるよね?
そもそもにやる気ないし、勝手に俺があいつを倒す体で進めるの止めてくれない?
俺が出るより君が出た方が確実なんですよ?
何故話してることがわかるかというと言わずもがな読唇術である。
とりあえずあいつらの中では俺が終わらせるという事になっているみたいです……。
鬱だ……。
しかし愚痴をこぼしてばかりもいられない。
この状況を作ったのは俺であるからだ。
いつもなら間違えない魔符を間違えるなど何かしらの陰謀を感じるが、やっちまったもんは仕方ない。
時間を稼ぐ!
と意気込んだのはいいものの、ミネストローネに視線を送った瞬間にその気持ちが折れそうになった。
だって彼、めっちゃ魔力練り上げてますもん。
何で一般人があんな魔力もてるんですか?
「さて、行くぜぇ?」
「いや、来んな」
しかしそんな俺の言葉は無に等しい。
ミネストローネはさっきまでとは段違いのスピードで俺に飛びかかってきた。
自己加速も使えるんすか……。
そして手に纏うのはさっき感じた半端ない魔力。
あんなん当たったら一瞬で首が飛んでしまうな。
手の周りに魔力を纏い、それを高速で振動させ切れ味を上昇させる接近戦向きの振動系装甲式魔術。
ってなわけで迫り来る左腕を回避。
ヒュン……という風を切る音が俺の耳元を駆け抜ける。
「オラァ!! ソラァ!! せいやぁぁ!!!」
うるさい……非常にうるさい。
が、しかしまともに当たったら俺の首は以下省略。
「チョコマカと……さっさと当たれぇ!!」
「嫌に決まってんだろ!」
俺はまだ死にたくねえんだよ!!
ってなわけで少しばかり反撃を……。
ブレザーの内ポケットに常備してある魔符を四枚取り出します。
そしてミネストローネから程よく距離を取り四枚一気に放ります。
バラバラに飛んでいく魔符は綺麗な軌道を描き、四方からミネストローネへと直撃して爆発……
「うざってぇぇぇぇ!!!」
…………………………。
しなかったぁぁぁぁぁ!!!
ちょっと待てコラ!
今、あいつの口から破壊光線もどき出たよね!?
俺の起爆符一瞬で消し去ったよね!?
口から魔術を発射とか聞いたことないんですけど!?
「チッ……【四天結界】」
破壊光線もどきはまだ俺に向かってきてるので対処を。
今度は四枚の結界符を取り出し投擲、ダイヤモンドの形に展開させる四天結界を発動。
発動した瞬間に攻撃が到着。
盾の上からハンマーで殴られるような、そんな重い衝撃が俺を襲ったがダメージを受けることなく何とか防ぐことが出来た。
「ふぅ……」
衝撃と四天結界が同時に消え、煙が空へと舞い上がる。
俺はそれを視界の片隅に捉えながら息を吐いた。
「おぉっ! あれを止めるとはかなりやるなぁ!!」
何故だか楽しそうに笑うミネストローネ。
こっちはもう帰りたい気分である。
しかしそれは置いといても気になることがある。
まえ戦ったロアーツは確か昔の偉人と全く同じ力を持っていたと雪が言っていた。
だとすれば、今回も?
聞いてみるか……。
(雪……)
こんな所で雪を召喚するわけにはいかないのでとりあえず心の中に話しかける。
頭にさしてる簪に雪は宿っている。
ちなみにこれは俺と雪しか使えない。
(どうしましたリオくん?)
すぐに雪からの返答はきた。
(あのね……)
面倒くさかったので説明の部分は省く。
ロアーツの事とか含めとりあえずミネストローネに関してを聞いてみた。
(なるほど……リオくんは獣人種って知ってますか?)
(獣人種って何かめっさ辺鄙な所に生息してるっていう動物と人間のハーフみたいなの?)
(そうです。動物の高い身体能力に加えて人間の知能と魔術能力を持ち合わせた種族ですね。しかも豹のワービーストなんてレアですよ。魔力に身体能力、どちらも普通のワービーストとは桁違いに高いですね!)
何そのチートな生物。
(それがアレの正体?)
無駄だとはわかっていても最終確認。
(それしか考えられないですね。にしてもこの前といい、リオくんってよく厄介ごとに巻き込まれますね。)
言うな……楽しそうに言うな。
俺は好きで巻き込まれてるわけじゃないんだ。
とりあえずまぁ答えは出た。
ロアーツもミネストローネも何故かは知らないが、不思議と実際に存在していた力を一般人の身で使っているわけだ。
しかも通常より強いというボーナス付きで……。
もうわけわからん……泣きたい……。




