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バカと天才は"神"一重  作者: 抹茶
復讐の仮面編
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第20話

 




 ここで時は少し巻き戻る。


 ファウストの指示を受けたミラとリューネは体育館から出た後、真っ直ぐに正門を目指していた。


「お前ら、そこから動くんじゃねえぞ!」


 普段は物静かな男が少しばかり声を荒げて館外にいた生徒へ声をかける。

 理事長の話が衝撃的だったのが幸いしたのか九割以上の生徒が館内に残っているため、外にいる数は少ない。


(しかしさっきの音は紛れもなく爆発音。ただ事じゃねえよな)


 それでもミラの憂いが晴れることはない。


「こういう時は広い学園って困るよな〜」


 隣を駆けるリューネは不満そうに口を尖らせる。

 二人とも加速魔術を施し尋常ではないスピードで移動していた。

 だが、ここはミストレアに数校しかない魔術学園の一つ。

 学園トップクラスの実力者でも少しばかり時間を要するのだ。


 所要時間にして約一分弱。

 二人は正門付近へと到達した。


「何だあれは……」


「さぁ……?」


 恐らく二人の頭の中にはクエスチョンマークが浮かんでいる事だろう。

 視界に写ったのはこちらへ向かってくる真っ黒の集団。

 目測だけでおよそ三十人。

 全員銃を構えており、敵意は明らかである。


 そしてそれとは別に四方に散っていく黒い影がミラの視界にチラついていた。


(ここだけじゃねぇ、体育館と校舎にも向かってる奴らがいるな。ならば……)


 秒にも満たない僅かな時間でミラはこれからのプランを組み立てた。


「リューネ、お前は校舎側へ行け。ここは俺がやろう」


 そのプランとは至極簡単。

 予想できる襲撃場所へ人員を割くこと。

 体育館にはファウストとエレノアがいることを考慮しての選択だった。


「……わかった、気をつけて」


 こちらも思考する時間は僅か、反論はせずそれだけをリューネは述べる。


「誰に言ってやがる。お前こそ気をつけろよ」


 その口元に薄い笑みを浮かべ、同じ言葉をリューネへと返した。

 それに対しリューネも笑うと九十度方向を変え、更にスピードを増して駆けていった。


(時間はかけてられないな、直ぐに終わらせる)


 それを確認したミラは強く地面を蹴り上げた。

 黒ずくめの侵入者達がミラを視界に捉えたのは一瞬だけだった。

 敵を確認、銃を構える、引き金を引く。

 その手順を完璧に踏めた者はこの中に誰一人としていなかった。

 侵入者達がミラを視認すると同時に彼は地面を蹴っていた。

 それだけで……ミラの姿は消えていた。


「あれ…?」


 誰かがそう洩らした。

 その時にはミラは別の場所にいた。

 そう、集団のど真ん中に。

 彼等がそれに気づいた時には右手に黒光りする銃を構え、先に引き金を引いていた。


「【反射する痛み(リフレクトペイン)】」


 小さめの銃声が一つ。


「「「「「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」」」


 それだけで十数人が顔を苦痛に歪め体を抑えながら悶え始めた。


「お、おい、どうした!?」


 他の侵入者達は叫び、倒れていく仲間を見て慌て出す。

 それを意に介する事なくミラは更に引き金を引く。


「「ぎゃあぁぁぁぁっ!!!」」


「「「いぎいぃぃぃっ!!!」」」


 人差し指を動かす……ただそれだけで無事であった侵入者達が同様に呻き地面に伏していく。


 遠隔射撃魔術【反射する痛み(リフレクトペイン)】。


 ミラが放ったのは人の痛覚を刺激する粒子を撃ち出す魔術。

 そしてその痛みは一度対象に命中すると体の隅々にまで反射するように駆け巡る。

 使用者によって違うがその痛みは骨折の約三倍。

 それくらいの痛みが身体中を駆け巡るのである。


 ミラの実力ならその五倍。

 それを食らってはひとたまりもないのは明白である。


「貴様ぁぁぁぁ!!!」


 反射する痛みを受けていない者達は慌てて銃口をミラに向ける。


 しかし、


「っ!?」


 既にミラはこの場にいない。


「おせーんだよ」


 そう吐き捨てるように言ったミラは侵入者達の陣形の外にいた。


「「ぎゃあぁぁぁぁっ!!!」」


 その声が彼等の耳に届いた時には全身に苦痛が走っていた。


 たった三回の攻撃だけで三十人いた侵入者は全員が地に伏せる事になった。



「ふぅ…」


 一息つき銃をしまうミラ。


(さて、どこの応援へ向かうか)


 そう考えた時、ミラは自身の背後に一つの気配を感じた。







 所変わりこちらはミラの指示を受け校舎側へとやってきたリューネ。

 彼女は今交戦の真っ只中であった。

 右手には革で作られたような鞭を握っている。


 ここまでの経緯としては校舎前で何やら話をしている侵入者達に声をかけ、いきなり発砲された。

 そしてそれを防いだ……という感じである。


「当たってない……のか?」


 発砲したのは四人。

 合計にして二十八発の銃弾がリューネに当たるということはなかった。


「ちょっといきなり何すんだよ〜」


 突然の発砲に顔をしかめながら悪態をつく。

 その手に持った鞭を軽く振るとヒュン……という風を切る音がした。


(テロリストにしては変な格好をしてるし魔術も使えないみたいだし、一般人か?)


 そう考えを張り巡らせていると、持ち直したように全員が銃を構えた。


「ちょ、ちょっと!」


 止めろ!とでも言いたかったのか……それはわからないが、リューネの言葉は大量の銃声に遮られた。


「ったくもう!」


 拗ねたように口を尖らせ持っていた鞭を振るう。

 風を切る音、銃弾を弾く音が次々に聞こえまたしてもリューネに届くことはなかった。


「そんなバカな……」


 二度の攻撃失敗により侵入者達の動きが止まる。


「へへッ」


 それを見たリューネは妖しく笑うと持っていた鞭で地面を叩く。

 すると侵入者達の足元から木の蔓が生え、彼らを一瞬で絡めとる。


「何だっ!?」


「動けねぇ!!!」


 抵抗する間もなく捕らえられる侵入者達。


「さて、お次は」


 楽しそうに呟き、今度は指を鳴らす。

 それに応えるかのように地面が動き、形を変え十字架となりて彼らを磔にした。


「こんなもんかな」


 捕らえられた侵入者達を見て満足そうに微笑む。

 しかしその顔はかなり鋭さを帯びていた。


「さて、色々聞かせてもらうぜ〜?」


 じっくりとなぶるような視線と狂気が侵入者達を襲う。

 彼らはその身をブルッと震わせた。


「ん~っと先ずはオマエから」


 リューネは一番前にいた男とおぼしき人物を指差し眼前へと迫る。


「……何をする気だ?」


 指名された男は思いの外冷静だった。

 一般人といっても魔術が使えない…というだけで特殊な人間なのかもしれない。



「だから~、色々聞かせてって言ったじゃん?」


 それに対してリューネはあまりにも軽々しく言葉を発する。

 それがまたどこか寒気を覚えさせるものでもあった。


「ガキが……魔術が使えるくらいで調子にのるなよ」


 吐き捨てるように発せられたセリフ。

 しかしリューネはただ楽しそうに笑うだけ。


「ガキかぁ……、まぁガキだよな。まだ十七歳だし?」


 自分の言葉にウンウンと頷き、男に背を向ける。


「んじゃ~少しお話をしよう」


「あ?」


 背を向けたまま口を開いたリューネ。

 そのなんとも言えぬ題材に男の眉が潜められる。


「あるところにとっても仲のいい幼馴染四人がいました」


 リューネはそう言って脈絡のない話をし始める。


「その仲良し四人組はある日とある組織を壊滅させ、リーダーを捕らえ、宝のありかを吐かせるというミッションを行いました」


 男の周りを回りながらも話すのは止めない。


「その四人には役割があります。一人は将、つまりリーダーで敵を捕らえること。もう一人は切り込み隊長。もう一人は全体の補助。そしてもう一人は……」


 そこまで言った時、男の背中に大きな氷を入れられたような悪寒が駆け巡った。

 それは万人が美しいと答えるほどのリューネの美貌の中に見える残酷な光のせいだった。

 そしてリューネは再度口を開く。


「そのリーダーを拷問してお宝を聞き出す係」


「ひ、ヒィッ!!」


 今まで冷静に見えた男が初めて怯えを見せた。


「早く喋る事をお勧めするぜ?」


 とても楽しそうにリューネは舌舐めずりをしてそう告げた。



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