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バカと天才は"神"一重  作者: 抹茶
復讐の仮面編
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第19話



「「「「「!!!!」」」」」


 その爆発音は俺だけでなく四人にも聞こえたようだ。

 五人とも一斉に音の方向へ視線を向けた。


「おい! 今の音はなんだ!?」


「わかんない!! 正門の方角から聞こえたよね!?」


 どうやら俺達だけではなくみんなにも聞こえていたようだ。

 一人の声がきっかけとなり次々と体育館中に広がっていった。

 一瞬でパニック状態へとなるほどに。


「チッ……みんな落ち着け!! 取り乱すな!!」


 ファウストが声を張り上げるがその声は一度着いた火を鎮火させるには至らない。

 むしろ逆に騒ぎがデカくなったような気がした。

 しかしそれは普通かもしれない。

 人は予想外のアクションには弱い生き物だ。

 余程柔軟な思考と冷静さがない限りは。


「クソッ……ミラ! お前とリューネと外に行ってさっきの爆発の確認と既に出ている生徒達の安全を確保してきてくれ! エレノアは俺と一緒にここを落ち着かせるのを手伝ってくれ!!」


 忌々しそうに舌打ちをしたものの、すぐ様冷静で的確な指示を出したファウストは流石と言えるだろう。

 そしてそれは他の三人も同じ、ミラとリューネ先輩は頷くと一瞬でその場から走り去った。


「リオード! お前は自分のクラスと合流して大人しくしてろよ?」


 おっと……俺にも指示がきたな。

 俺の立場からできる最善の処置といえよう。


「だが断る!!!」


「ハァッ!?」


 俺は断る。


「おま……こんな時に……」


「俺はフィルを守る義務があるからな。すまんそれを最優先させてもらう」


 何か言いたげなファウストの言葉を遮り俺の意見を述べた。

 あくまで俺が一番に守るのはフィルだ。

 それだけは譲らねえ。

 あいつは俺の助けなんざいらないくらいに強いが、それでも俺は守る。


「ハァ…。わかったよ。とりあえず変な事はすんなよ」


 ため息をつかれたがとりあえず了承はいただいた。

 まぁ無くてもシカトだけど。

 俺はファウストとエレノア先輩がいなくなったのを確認してからフィルの元へと向かった。


 



「一体何でしょうか」


 先程聞こえた爆発で体育館中がパニックになっている中、私は冷静にその言葉を吐き出しました。


「フィルは随分落ち着いてるね」


 そう言ったルゥも随分落ち着いた表情と声ですね。

 と、私は心の中で呟く。


「ふ、フィル〜。ヤバイよどうしよう!!」


 その点シアはまともな反応だと思います。

 文字通りあたふたしていますしね。

 よっぽど女の子らしいです。


「何が起こってるんだろうね?」


 あら、マイク君も取り乱していませんね。

 まぁ、このくらいでは……と言ったところでしょうか。


「フィル」


 そんな中、私を呼ぶ声が後ろから聞こえました。

 言うまでもなく兄さんですね。


「リオードさーん! どうしましょう!!」


 あらまぁシアったら、兄さんが現れただけでは落ち着く事は出来ないみたいですね。


「よしシア?俺の胸に飛び込んでこい」


 兄さんは嬉しそうにそう言って両手を前に出します。


「兄さん?」


 私は優しく……あくまで優しく声をかけました。


「ごめんなさい」


 兄さんは残像が見える程のスピードでしっかり九十度の角度で頭を下げました。

 全く、可愛い女性相手だとすぐにそんな事を言うのだから困ったものです。


「君達はこんな時もいつも通りなんだね」


 マイク君が呆れたようにそう呟きました。まあそれもその筈、まるで緊張感がないですから。


「兄さん、これからどうしますか?」


 とりあえずこれからの事を決めようと思い兄さんへそう問うた。


「ん? ファウストにここにいろとは言われたけどどうするかな」


 珍しく考え込む素振りを見せる兄さん。

 まぁ学園であまり目立ちたくないという気持ちがあるのでしょうが、ランキング戦で既に見せてるので無意味な気もしますが。


「まぁ、とりあえずあれをどうするかだな」


 兄さんはそう言って体育館入り口の方へ視線を向けました。


 その直後勢いよく体育館の扉が開かれ、全身黒ずくめの人達が慌ただしく乗り込んで来ました。

 全員が銃を手にしており、その銃口が捉えるはは紛れもなく私達生徒でした。

 突然の出来事に一瞬時が止まりました。

 全員が(見立てでは私と兄さん以外)その瞬間に時を止めその場に立ち尽くしていました。


「そして時は動き出す」


 兄さんが意味不明な言葉を発した後、


「「「キャアァァァァァァ!!」」」


 甲高い悲鳴が体育館中に響き渡りました。


「静かにしろっ!! 全員ゆっくりと両手を上にあげろ!!」


 武装した全身黒ずくめの人達は常套句を並べ私達を脅します。

 いくら名門の魔術学園といってもまだ年は十代……修羅場をくぐってきたものなどそうそういるわけもなく、また十数人が全員銃を持っていたらまずは従うしかありません。


 シアやルゥ、マイク君もそれにならって一応両手をあげます。

 そんな中一人だけ指示に従わない人がいました。

 そう、私のリオード兄さんです。


「おい貴様!! 何してる、大人しく指示に従え!!」


 運悪くと言いますか、入り口近くに私達はいたので完全なる格好の的。

 その中で兄さんは物怖じせずに鼻をほ……おっと、これははしたないですね。

 お鼻を弄ってらっしゃいます。


「貴様聞こえないのかっ!?」


 一人の男が更に声を張り上げると全ての銃口が兄さんへと向きました。


「おっ、デッケー鼻くそとれたわ」


「兄さんったら……」


 場をわきまえてください、と言いたい気分です。いえ、きっと言うべきなのでしょうが生憎そんな事を言う私ではありません。

 何故なら兄さんからはいつも通りの雰囲気を纏ってらっしゃるから。


「リオードさん!」


 流石にこれはいけないと思ったのか小声でシアが声をかけますが、兄さんは眉一つ動かしません。

 それどころか、


「お、デッケー鼻くそとれたわ」


 などと言い出して地面に放る始末。


「兄さん……」


 私は思わず額を抑えてしまいました。

 そんなに煽って……相手が発砲したらどうするのですか。


「き、貴様ぁぁぁぁぁ!!」


 私の疑念が的中したようで、先頭に立っていた男が完璧に兄さんに狙いを定め、勢いよく引き金を引きました。


「【聖域(サンクチュアリ)】」


 決して大きくはない……しかし妙にはっきり響く声と、銃声が聞こえたのはほぼ同時でした。

 本来なら撃たれるはずの兄さんに変わった様子は見られません。

 よく見てみると兄さんの僅か数センチ手前で銃弾が浮いておりました……いえ、浮いているというよりはまるで何かにぶつかって止まっていると言った方がしっくりときますね。


「な、何だこれはっ!?」


 発砲した男性は目の前の光景に相当狼狽えていますね。

 そしてその様子を見た周りの方々も次々と発砲しますが銃弾は誰にも当たらず何かに阻まれます。


「な、何が起こってるんだ一体」


 驚いているのはこの良からぬ方々だけではなく、学園の生徒も同様です。

 恐怖や安堵などそっちのけでその不思議な現象に目を奪われている……といったところでしょうか。


「おいリオード、お前はバカなのか?」


 少し離れた場所からそんな声が聞こえました。

 姿を現したのは先ほどの私のように呆れた表情で額を抑えるニュート先輩の姿が。

 つまりこの現象は彼が引き起こしたものということになりますね。


「いやお前が大人しくしてろよっていうから」


「……臨機応変って言葉を知らねーのかオメーは」


 その言葉のかけあいだけで何故かニュート先輩が可哀想に聞こえるのは私だけでしょうか。


「まぁいい」


 この妙な空気を変えようとしたのか小さく頭を振ってそうおっしゃったニュート先輩。

 少し可愛く見えてしまったのは内緒です。

 でもそれはその一瞬だけ。

 すぐに学生とは思えない程の気迫で黒ずくめの来訪者方を睨みつけました。


「お前ら、ウチの生徒に手出してんじゃねえぞ」


 今にも殺してしまいそうな鋭い覇気。

 その勢いに押されたのか黒ずくめの方々はゆっくりと後ずさりを始めました。

 しかし、


「う、うわぁぁぁぁ!!」


「な、何だこれはぁぁっ!!」


 そのアクションはすぐ阻まれました。

 床から突如現れた生気のない……水分を根こそぎ奪われて枯れ果てしまったかのような大量の手によって。


「逃がしません」


 小さな声でそう言い放ったのは右手を向けるエレノア先輩でした。

 床から現れた手は足だけではなく全身に絡みつき、黒ずくめの方々全員が停止を余儀なくされました。

 ニュート先輩とエレノア先輩のコンビネーションにより僅か一分で去ってしまった館内の危機。

 何とまぁ呆気ない。


「おーおー、流石はニュート家の次期当主様とその分家様。よくもあんな魔術をアッサリと」


 兄さんが小さくそう洩らします。

 言葉からするとアレですが兄さんの言い方からは素直に感嘆しているのがわかります。


 広域防御魔術【聖域(サンクチュアリ)】。

 広域捕縛魔術【樹海からの(いざな)い】。


 聖域(サンクチュアリ)は術者が指定した範囲に空気の壁を創り出す魔術。

 その強度は普通の防御魔術よりも遥かに上であり、且つ広範囲を守ることのできる最上級難易度の魔術。

 樹海からの(いざな)いは任意の場所から木で構成された手で対象を捕縛する魔術。

 一本にするとさほど太くないですがそれを何本も複雑に絡み合わせることでこれもまたかなりの強度を誇ります。

 それをいとも簡単に使った二人は兄さんの言う通り流石……という言葉につきます。


「しかし何だこいつらは」


 一歩前に進み身動きの取れなくなった輩を一瞥してそう呟きました。

 確かに黒ずくめ……というか全身黒タイツといった方がしっくりくる姿にそこらへんの雑貨屋で売っていそうな白い面。


「ねぇシア、あの人達ってあの時の……」


「しっ!!」


 そうルゥが洩らしたのをニュート先輩は聞き逃しませんでした。


「何か知ってるみたいだな」


「あ……」


 バカ……とついつい口に出してしまいたくなりました。

 あれほど兄さんが口止めしていたのにも関わらず。


「今はここを治めるのが先だ。話は後で聞かせてもらおうか」


 そう言ってニュート先輩はエレノア先輩と他の生徒会役員に指示を出し始めました。


「めんどくせぇ……」


 近くで聞いていた兄さんは気だるそうにため息をついております。

 それを横目で見ながら私は先に出て行ったアルバート先輩達の事を思い出しました。


「あちらはどうなっているのでしょうか……」




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