第18話
そんなこんなで有名な十二家。
その当主ともなれば物凄い、もんのすんっっごい名声なのは確実である。
なのに何故俺が知らないのかというと……
「ただ顔を見たことが無いだけである」
「さっきから何ブツブツ言ってんだてめーは」
おっと、どうやら声に出てたみたいだ。
シンさんがこっち見てるよ。
「何でもねーよ。ほれ早く前見ろ。理事長様のあんりがたぁいお話がありまっせ」
「何か違和感があるんだが」
「気のせいだろ」
「いや、気のせいじゃねぇよ」
「なら毛のせいだ」
「毛っ!?」
「二人とも静かに」
アララ、テトラに注意されちゃったよ。
仕方ないから俺も話くらいは聞きましょうかね。
そう思いスクリーンを見ると丁度口を開く瞬間だった。
『ミストレアの諸君、今日は休みの中わざわざご苦労だった』
腕を組み、威厳たっぷりの声で語りかける理事長。
「全くだバーカ」
あ、三年生に睨まれた。
『本来ならば直接話をするところだが緊急の円卓の時議があってね、映像ですまないが話させてもらう』
特に表情に変化は無いが声のトーンからは申し訳なさが伺える。
余談だが円卓の時議ってのはの十二家当主が集まって行う会議の事である。
十二人が円卓を囲んで会議をする様が時計のようだということからその名がついたらしい。
閑話休題。
俺は理事長の話に耳を傾ける。
『まぁ、知ってる人もいるだろうが今日話したい事とは一週間前隣区のショッピングモール、リディアモート付近で起こった無差別通り魔の件についてだ』
キタキタキタキタキター!!
めっさ当事者ですけど何か?的なドヤ顔を密かにしてみる。
『とりあえずわかっていることを報告する。犯人は国際指名手配犯のケーシィ・ロアーツ、どうやってミストレアに来たのかはまだ調査中だ。死傷者は十六人で死亡者は十人、残りは重症で未だ入院中とのことだ』
理事長のその言葉に体育館中が騒がしくなる。
そりゃそうだ。
他国でも他街でもなく隣で事件が起きたのだ。
それも死亡者が出るような事件が。
というか、かくいう俺も驚いている。
あの時は周りにあまり気を配ってなかったので誰がどうなっているとか把握してなかったのだ。
ぶっちゃけ自分とフィルを守るので精一杯でした。
『情報よるとケーシィ・ロアーツは風を操る類の魔術を使ったようだ。それもかなり強力な、だ。だがしかし資料によるとケーシィ・ロアーツは魔術を使えないという。謎が多すぎる。それに付近の監視カメラの映像が消されていて現時点でわかっていることは少ない……というのが今の状況だ』
あ、それの犯人僕でーす。
とまぁそんな都合の悪いことは置いておき、
十二家の情報網を使ってわかっていることがこれだけってのはおかしくねえか?
と、俺は頭に疑問符を浮かべた。
十二家ともなれば家中の諜報員だけでかなりの機密を暴くくらいも出来るはずだ。
現にあの時俺はこれ以上関わるのを避けるために奴の身柄だけでなく、あの謎のベルトやメモリ擬きすらも放置してきた。
あれを調べれば何かわかりそうなものなのだが。
あえて伏せているのかそれとも……
俺は理事長の話そっちのけで物思いにふける。
『あぁ、それと』
何かを思い出したように口を開く理事長。
次に発した言葉により俺は思考の世界から現実へと引き戻される事になった。
『これは近くにいた目撃者の話だが、ケーシィ・ロアーツに襲われる人を助けた上にそのまま戦った者かがいたらしい。高校生くらいの若い男女二人でこちらも魔術を使っていた……とのことだ』
ドキッ……と自分の心臓が跳ねるのを感じた。
それってまさか……
『十中八九魔術学園の生徒に間違いない……というのが我々の見解だ』
ってことになりますよねー。
ってか何でそんな事はしっかりと把握されてんだよ。
もっとロアーツから何かを掴めやこら。
なんて事を思ったが、敢えてこれ以上の事を伏せている可能性があることを考えた。
魔術学園はミストレアに僅か七校だけだ。
俺とフィルだと突き止められるのも時間の問題かもしれない。
俺の耳にこれ以上理事長の話が入ってくることはなかった。
俺とフィルの事を考えるので精一杯だったからだ。
「……ド、リオードっ!!」
「!!」
名前を呼ぶ声により俺は我に返った。
目の前にはシン、そしてその周りにグラン、テトラ、リリーの姿も。
「どしたの?」
「どしたの?じゃねーよ。もう理事長の話どころか集会も終わっちまったぞ?」
呆れたような表情を浮かべるシン。
というか、え?
集会終わっちゃったの!?
「一体どうしたんですかぼーっとして」
「……いや、理事長の話のこと考えてたら何時の間にか」
グランの疑問にもっともらしい答えで返す。
まあ嘘は言ってないしな。
誰かが言ってたよ、バレにくい嘘とは真実を織り交ぜた嘘である……と。
「リオードくん大丈夫?」
テトラが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「パンツ見せてくれたら元気でるね」
「死ね」
ちょ、リリーさん。
貴女に言ったわけでは……いえ、すみません。俺が悪かったですのでそのウェポンしまってくれませんか。
「ったくお前は……、フィルちゃんに見られたらまた痛い目みるぞ?」
「それはそれでご褒美だろ?」
「リオード、貴方は変態という言葉すら生温いですね」
「異次元の変質者とは俺のことだ。テトラリリーになら抱かれてもいい」
「うん、近寄らないで……」
「何で私はこんな奴を……」
あれ、二人とも何故か遠のいていくんだけど。
「何かクラスメートという事すらも嫌になってきましたよ」
ハァ……とため息が聞こえそうなくらいグランの落胆した声が聞こえた。
「お前を色欲魔と呼んでいいか?」
シンも若干俺との距離を取りながら尋ねてくる。
「何故俺の過去の呼び名を知っている」
「呼ばれてたのかよっ!!!」
「安心しろ、もう久しく呼ばれてねーよ」
「そういう問題じゃねーよ!!」
「んじゃ……」
どういう問題なんだよ……と聞こうとした時だった。
「リオードー!」
突然舞台側から俺の名を呼ぶ声がした。
声のした方に振り向くとそこにはファウスト、ミラ、リューネ先輩、エレノア先輩のお馴染みの豪華な顔ぶれが。
ファウストが手招きをしていることからどうやら奴が呼んだみたいだ。
「わりぃ」
何の用だよ……と思いつつ俺はそちらへ足を進めた。
集会は終わったが、生徒達は話の内容が意外だったのかまだその場から動いけない。
そのためかなりの視線を浴びながら俺は歩く羽目になっていた。
そしてファウスト達の元に着くと、少し神妙な面持ち。
「何すか?」
「いや、呼び出してすまないとは思ってるからその露骨に嫌な顔止めてくれるか?」
おっと、気持ちを全面的に出しすぎたか。
「人が帰ろうとしてるとこに何でございましょうかファウスト様?」
「うん、今度は声から伝わってくるから止めろ」
チッ……ワガママな奴だな。
「で、結局何だってばよ」
呼び出しならさっき受けたじゃないっすか。
これ以上怒られるのはやーよ?
と、心の中でおどけてみるも当のファウスト達は変わらず神妙な面持ちだった。
そしてミラが一歩前に出て口を開いた。
「単刀直入に聞く、通り魔事件の時に犯人とやり合ったのはお前達か?」
「!」
正しく単刀直入だった。
内心は驚いていたが俺はそれを顔には決して出さない。
「んなわけねーでしょ。てか、何を根拠に俺らだと」
いくら魔術学園が七校しかないからとはいえその総数は何千人ってなるのだぞ。
「証言者が教えてくれた特徴とお前ら兄妹がかなり似ていてな。それに男女二人で出かける時点でそれなりの仲だろ?その点でもお前らが当てはまるからな」
なるほど。
中々に的を射ているが、
「悪いがハズレだ。その日俺はフィルのクラスメイトも合わせて四人で遊んでいたんでな」
内心ドヤ顔でそう答えた。
しかもこれは真実だ。
シアにもルゥにもロアーツの一件は伏せておくようにと伝えてあるのでこれはバレない。
もっと詳しく調べればバレるかもしれないが、そうなればこちらも更に手を打つまでだ。
「そうか、すまないな」
口ではそう言っているファウストだが、心底納得はしていない。
そんな顔だった。
「結局振り出しだなー」
リューネ先輩が不満そうに口を尖らせる。
恐らく俺が素直に吐くとでも思っていたのだろうか。
「別に私たちが無理して調べることではありません。こういうのはファウストの親達に任せましょう」
エレノア先輩はいつも通りの表情である。
用が済んだなら戻るか。
そう思い声をかけようとした時だった。
少し離れた場所、恐らく学園の正門付近から爆発するような、そんな音が聞こえてきたのは……。




