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バカと天才は"神"一重  作者: 抹茶
復讐の仮面編
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第17話



 集会から逃げることを諦めた俺はガッカリしながら教室へと戻った。


「おー何言われたんだ?」


 あからさまにニヤニヤしながらこちらへ来るシン、と普通の表情の他三人。


「チェストッ!!」


「ほげぁっ!!」


 腹立たしいことこの上ないのでとりあえず鳩尾をピンポイントで一発殴っておく。


「ゲホッ……リオード、テメー何しやがる」


 両手で腹を抑え息も絶え絶えに話すシン。


「ハッ、ニヤニヤしてるお前が悪い。俺の中ではニヤニヤしながら近寄ってくる奴は変態だから一発殴れとトーチャンに教わったね」


「無茶苦茶だなお前の親父ぃ!!」


 うん、そらー嘘ですから。


「それで、結局なんだったのですか?」


 グランはそう言って傾きかけた流れを本筋に戻してくれた。

 まあ本筋も始まっていない上に傾いてもいないんだけどね。


「あぁ、とりあえず俺とリリーは一週間校舎の清掃だと。あ、あと俺は一週間リューネ先輩の奴隷だから掃除はリリーだけでよろ」


 ヤル気はサラサラ無いのだが、一応ミラに言われたことを伝えておく。

 そしてリューネ先輩との大事な約束も。


「後半は何を言っているのかわからないんだけど」


「全くだ」


 テトラがそう言って首を捻りそれにリリーが同意する。


 あらまリリーった、なっちゃんには随分と心開いているのね。

 おじさんちょっとチェルシー。


「ジェラシーな」


 うるせーシン。


「それでリオード、リューネ先輩の奴隷ってのはどういうことですか?」


 とりあえずグラン君ってば奴隷の事が気になるのね。

 も、もしかしてお前もリューネ先輩の奴隷になりたいと!?

 お前もドMだっていうのか!?


「そんなわけないでしょう」


「で、ですよね……」


 わかったからそんな目で睨むなよ。


「ま、まぁとりあえず俺は一週間掃除をするか一週間リューネ先輩の奴隷になるかの選択肢を与えられたんだ」


「そ、それで先輩の奴隷を選んだと?」


「そうだけど?」


 シンは何を当たり前の事を聞いてるんだか。


「「「救いようのない変態だな(だね(ですね))」」」


 声を揃えんな失礼だろ。


「……え」


「ん?」


 今そこら辺から何か聞こえたような。

 辺りをキョロキョロと見回し主を探すと、そこには顔を俯かせているリリーが。


「リリーなんか言った?」


 よく聞き取れるように近くへと寄る。


「な、何回も言わせるな!」


「いやまだ一回しか言ってないでしょ」


 というか何を焦ってんだ?

 俺の疑問をよそにリリーはやっと……という感じが当てはまるほどゆっくり口を開いた。


「お、お前のせいで私も掃除をする羽目になった。だから手伝え」


 頬を赤らめて言う割にはどこか理不尽さを感じるお言葉。

 だって掃除をしないといけないのは君が魔術をぶっ放したからでしょうよ。


「いや、しかしだな。俺には姐さんの奴隷っていう──」


「手伝え」


「はい」


 俺の眉間に突きつけられた銃。

 俺は頷くしか無かった。

 何この子、めっちゃこえぇぇぇぇ!!


「あらあら」


 隣で見ていたテトラが近所のおばさんのような声を上げる。


「こりゃ手伝ってあげねぇとなリオード」


 笑いながら俺の肩を叩くシン。


「せっかくのリリーからのご指名ですよ?」


 それに続くはグラン。

 二人ともにやけてやがる。

 そして無言ではあるが無駄ーにニコニコしてるテトラときたもんだ。


「な、何を笑ってる!」


 リリーは銃をみんなに向けた。

 流石にこの行動にはみんな驚いたらしい。

 表情を変えながら慌てている。

 人を馬鹿にするとこうなるんだな。

 俺みたいな善人を見習って欲しいものだ。


 俺はこの騒動を眺めながら一人そう思っていた。


「「「「…………」」」」


 ん?

 何故だろう、みんな変な目で俺を見ている。


「いやだって……」


「リオードに言われては、」


「おしまいだね」


「虫酸が走る」


 ひでぇ!!

 みんな酷いよ!

 俺だってまっとうに生きてるのに……。



 ◇




 その後の騒動は訳あって割愛する。


 リリーが再び銃に魔力を込めたことも、慌ててみんながそれを止めようとしたことも、ベルさんがやってきて煽ったのも最早過ぎたことなのだ。


 今はこの現実に目を向けなければならない。

 後五分で始まろうかという集会に。


 全校生徒千人を超える盟廷の生徒が全員収まるほどに体育館は広い。

 それにプラス教師や今日はいないが、式典の際には来賓も訪れるのでその為のスペースは充分過ぎるほどに確保されている。

 基本としては右から一年生がクラス毎に一列に並びその後に二、三年生が続く……という形である。

 そして我らがE組はというと……。


「なぁ、やっぱ気まずくねーか?」


 シンが後ろから俺に話しかけてくる。


「いや、別に俺は気にしないけど?」


 俺はアッサリとした返事をかえす。


「俺はシンに賛成です。三年生の隣に並ぶってのは慣れませんよ」


 今度は俺の前に立つグランが小さな声で愚痴を漏らす。


 そう、何故か俺らは三年D組の隣に縦一列でならばされているのである。


 理由は不明だ。

 慣れたとはいえ立つたびに睨むのはやめて欲しい。

 しかもピンポイントで俺だけを。

 グラン曰く「ニュート先輩達に好かれてるようですからね」との事だが、俺のせいではないだろう。


 確かD組にはあのベルゴール(笑)もいたはずだが、奴の視線は感じないな。

 やっぱりリューネ先輩愛飲の納豆サイダーを飲ませたのが効いたのだろうか?


「早く始まってくんねーかな」


 集会が始まればこの視線ともおさらばできるしな。

 そこまで気にはならんがウザいものはウザいのだ。

 と誰に言い聞かせるわけでもなく俺はただそう思っていた。


 鬱陶しい視線に耐えてから約五分の時が過ぎた頃、ようやく壇上に教師と思われる人物が姿を現した。

 見た目は三十代半ば、少し癖っ毛のある黒髪をオールバックにし銀縁のメガネをかけた男性。

 白のワイシャツと黒のネクタイ、黒のスラックスズボンに白衣を着た科学者っぽいこの男は確か魔術学の先生……だったかな?


 俺らは全ての授業をベルさんがやってくれるので他の先生と関わることはない。

 ピンマイクを付けてるということは今日の司会進行役といったところか。


「ええっと……出席報告によると欠席者は五人。全員いないのは残念ですが集会を始めたいと思います」


 何!?

 この集会をサボれた奴が五人もいるだと!?

 うらやまけしからん!!

 なんて思う俺を他所に進行役の先生は口を開く。


「えぇっとですね……。今日は特別に校長先生ではなく、理事長からお話があるそうです」


 そのセリフを聞いた途端に周囲がざわつく。

 今までは校長が毎回話してたみたいだな。

 あのハゲ話がクソ長いから嫌いなんだよな。

 何か思い出しらイライラしてきたので髪の毛が薄くなる呪いをかけておく。

 これで更なる更地ライフを送ることを願っておくぜ校長。


「ええっと……」


 先生はそこで喋るのを止めどこからか端末を取り出して何かを確認し始めた。


 ええい!

 さっきからええっとで話を始めんな!

 進行役がそれでどーするよ!


「あ、理事長は臨時の会議のため隣の街にいらっしゃいます。ですので映像でお話しされるとのことですね」


 予想だにしなかった発言にまたしても周囲がざわつく。

 っつーかいないならやらなくてよくね?と思ったのは俺だけじゃないはずだ。


 司会の先生が舞台袖に下がった瞬間に壁が光りだした。

 スクリーンを降ろしたりせず、そのまま壁から映像が流せるという仕組みである。


 みんな映像に集中している。


 数秒後、画面いっぱいに見たことのあるオッサンの顔が映った。

 言わずもがな理事長さんである。

 しっかしまぁこの人が三虎家の当主とは驚いた。

 十二家の中でも三大勢力と謳われる家系だからな。


 前も説明したと思うけど、三大勢力ってのは鼠芳、三虎、竜音寺の三家のことを指す。


 十二家の中でとりわけ発言権やら規模やらが頭一つ飛びぬけてるって感じだ。


 ここで脇道に逸れるのだが、何故十二家と呼ばれるようになったのかという話をしよう。


 1000年ほど前にはまだ魔術というものは世間に認められていなく、不思議な力やお伽話という産物に過ぎなかった。


 それに反比例するかのように科学技術は格段に進歩していった。


 そしてその技術は兵器にも応用され、各国はこぞってその力をチラつかせるようになった。


 そんな中とある二国が戦争を始めた。


 それはやがて数十カ国間に渡る戦争となり、その火種は我が国ミストレアにも及んだ。


 歴史上最高数に増えていた世界人口は僅か二年でその半分に減少した。


 これが歴史でいう第二次世界大戦である。


 この残酷にして残虐な戦争を終結させた陰の立役者が魔術を使う我々魔術師である。


 数は少ないながらもその力は脅威であり、それを肌で感じた各国のお偉いさん方は停戦を提案した。


 そして第二次世界大戦が終結した後、各国は魔術師の育成に精を出すようになった。


 そしてこの世界大戦で中心になった集団が今の十二家……という流れである。


 世界の魔術に関する文献にもその記述が載る程に我らがミストレアは魔術大国になった。


 とまぁ、こんな次第である。



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