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バカと天才は"神"一重  作者: 抹茶
復讐の仮面編
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第4話


 それから特に変わったこともなく、いつも通りの一日は終わりを告げた。

 そして俺は昼休みのフィルとの約束のため、二人でスカイレールに揺られて少し離れた建物へとやってきた。


 ここは【リディアート】と名付けられた区内最大のショッピングモールである。

 食品、衣類、書物はもちろんMTにMWの専門店などもあり、ここだけで生活に必要な全てが揃っているといっても過言ではないらしい。

 まぁ十階建てに加えフロア毎の広さが半端じゃないからわかる気がするけど。


 一階は食品売り場、二階は衣料品売り場、三階は魔術関連の品の専門店などとフロアでジャンル分けされている。

 そして謳い文句に比例するようにここには老若男女問わず多くの人が訪れる。

 ここに来たことがない奴はまずいないだろう。

 というくらいの人気店である。

 というかそれよりも、


「何でここにしたんだ?」


 俺は隣りを歩くフィルに問いかける。

 買い物なんて学校の近くでも出来るのに、何故こんな中々に遠いところまで。


「少し遠出がしたくなりまして。いけませんでしたか?」


 そう言って少し悲しそうな顔をされたら怒るに怒れないじゃないか。

 まぁ、怒る気もサラサラないけどな。


「いや、構わねえよ。あとね」


 と言ってチラッと下を見る。


「歩きにくいんだけど」


 何故俺の腕にしがみつく。

 俺の右腕にフィルは自身の両腕を絡めている。

 しかも結構掴む力強いっていうね。


「まぁまぁ、細かいことを気にしていると禿げますよ?」

「この若さで禿げてたまるかってんだ」


 笑顔で言うフィルをみていると、上手くはぐらかされたねって思うわ。

 というか今の俺達はどうみても兄妹には見えないよな。

 言わずもがな恋人だな。

 まっ、俺は構わんけどねっ!


「デュフ、デュフフフフフ」

「兄さんそれは気持ち悪いです」

「ですよね」


 全く、そんな満面の笑みでそんな言葉を吐くなんて。

 フィルちゃんも年頃なんだな。


「私だって少しくらいは品のないお言葉を言うことだってありますよ? だって兄さんの妹なのですから」

「何気に俺を下げてんじゃねーか」


 やっぱりどこかで育て方を間違ったかな。

 なんて齢十六にして思ってしまう俺はやはり精神的に年寄りなのだろうか。


「そういえばここまで来て何を買うんだ? MWかMTか?」


 ここまで来るということは食品ってのは考えられない。

 食品なら近くに店があるからな。


「まさか、わざわざ魔術品をお店で買うなんて事は致しませんよ。それは兄さんが一番わかってるでしょう?」

「それもそうか」


 フィルの言葉を聞いて俺は納得してしまった。

 確かに魔術品を買うなら、こんな大型店よりも人通りの少ない場所にるお店とかの方が掘り出し物があったりする。

 まぁ他の意味もあるが。

 しかしだとしたら何を?


「ちょっと夏休みの課題に備えての参考書と、今度新しいお料理に挑戦しようかと思っていましてそのレシピと材料を……」


 何だろう……主婦なのか学生なのかわからん買い物だな。


「というかお前に参考書は必要ないだろう」


 勉学は出来るから金の無駄だと思うんだが。


「それが……新しい魔術とその内容や式の構築についてのレポートを書かなければいけなくて」


 そう言って可愛らしく舌を出す。


 魔術は偶然生まれたものだと伝えられている。

 長年の研究といくつもの実験を行ってできた奇跡。

 しかし魔術を生み出す過程で起きた失敗は百や二百ではすまない。

 時には研究所を丸ごと破壊したこともあった。

 そんな魔術を新しく生み出すというのは普通ではあり得ない所業だ。

 常に危険が伴うといってもいい。


「そんなものは大人でも難しいだろう」

「いえ、ただレポートを書くだけなので。まぁ出来る出来ないは置いておいて主に発想を見るためのものらしいです」


 何やら小難しいもんを宿題に出されたもんだ……と俺は思った。

 俺らにいたっては宿題すらないからな。

 夏休みは思う存分遊んで思い出を作ってこいと、ベルさんが言っていた。子供か。


「というわけでお付き合いください」


 そう言ってニッコリと笑うフィル。


「了解しましたよ、お姫様」


 フィルの笑みにつられて俺も笑い、中へと入っていった。

 それからフィルは魔術書を二冊と、新しいレシピ本を三冊も購入した。

 三冊もいらないだろうと言ったのだが、


「兄さんに美味しいものを食べて欲しいですから」


 と言われ何も言えなくなってしまった。

 何だろう……最近フィルの言葉が巧みになっていっている気がする。

 学園に入学してから俺はフィルに丸め込まれる事が多くなってきた。

 一体誰の影響を受けたのだ。


「もちろん兄さんですよ? 色んな方々とのやり取りから学ばせていただきました」

「それだと俺が悪いみたいじゃねえか」


 あとナチュラルに心を読むな。

 読心術なんて魔術が発達したこの世界でも使えるやつなんていねーぞ。


「買い物は終わりか?」

「えぇ、そろそろ帰りましょうか?」


 買った書物を両手で持ち、ニッコリと笑う怜フィルどこかの図書館で司書でも勤めていそうだった。

 あと眼鏡かけてたら完璧だったな。


「何か言いましたか?」

「いや、なんでもない。さ、帰るぞ」


 そう言って俺は出口へ向かって歩き始める。


「あ、兄さん」


 一歩踏み出そうと足をあげた瞬間に呼び止められた。

 器用に足をあげたまま俺はフィルの方へと振り向く。


「申し訳ありませんが、お手洗いに行ってもよろしいでしょうか?」


 少しばかり顔を赤らめて言うフィル。

 その姿に兄ながら悶えてしまいそうになる俺は異常者なのだろうか。


「俺も着いて行こうか?」

「氷漬けにしますよ?」


 笑顔なのに背筋が凍るほどの冷たい声を放つフィル……いや、フィルさん。

 いや、すみません何でもないです。


「ではしばしお待ちを……」

「んじゃ、俺は外で待ってますんで」


 丁寧にお辞儀をしてお手洗いへと向かうフィルに俺は敬語で返して手を振った。

 あぶねー、もう少しでションベンちびるところだった。

 俺は内心肝を冷やしながら自動ドアをくぐり外へと出た。

 もう五時になるというのに、外は未だに太陽が照りつけていた。


「まだ若干暑いな……」


 中で待っておけば……と後悔しながらも、今更戻るのもあれなので大人しく壁に寄りかかってフィルを待つことにした。



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