八話『情けは人のためならず。』
みなさん先週ぶりです。
今回も温かい目で見てやってください。
「とにかくこの本に書いてあることをそのまま実施する。」
「かしこまりました。」
「まずは治癒魔法だな。イメージとしては勿論、傷が治ると言うイメージだ。」
「ですがそのイメージは中々難しいのですが。」
「まぁそう焦るな。本番はこれからだ。キサラには俺の国で知られる身体の構造を俺が知っている限りで教えてやる。」
「構造ですか?」
「そうだ。身体には―――」
こうして俺の高校入学までに教わる医療知識と身体の構造。
そして本で培った医療専門知識をキサラに口頭で説明したが恐らくこれでは全ての知識は頭に入らないだろう。
「一通りの知識はこれで終りだ。流石に覚えられないよな?」
「えぇ、ですがある程度は覚えました。」
「よし、なら次は実技練習だ。ゴブリンを生きたままで捕まえるのと、オークを殺してでも捕まえる。」
ゴブリンを生きたまま捕まえるのは治療魔法の練習の為だ。
オークは解体した際に人間と構造が似ているのが分かったのでその勉強の為だ。
「オークを討伐ですか?」
「勿論、身体は出来る限り傷つけないようにな。」
「か、可能なのでしょうか?」
「余裕だ。取りあえずギルドに行こう。ついでに任務も受けておけば一石二鳥だ。」
「かしこまりました。」
俺達はそのまま冒険者ギルドでいつでもあるゴブリンの討伐と依頼が入っていたオークの討伐を受注し、いつもの森に入っていく。
「ここでもキサラの訓練はするぞ。」
「何をするのでしょうか?」
「魔力制御の練習だ。」
「魔力制御ですか、ですがここではできないのでは?」
「キサラは魔力を外に放出するのはできるな?」
「魔力を放出するだけなら可能ですが。」
「その魔力をできるだけ薄く遠くに飛ばすんだ。攻撃目的で撃つ訳じゃないからできるだけ遠くにかつ薄く延ばすんだ。」
「はぁ、ですがそれは制御の練習になるのですか?」
「勿論、魔力を薄く伸ばすにはそれ相当にむずかしいぞ。それに加え遠くに飛ばすわけだからな。」
「では早速。」
「おう。あと歩きながらな。」
「あ、歩きながらですか!」
「じゃないと討伐に行けないじゃないか。」
「か、かしこまりました。」
そこからキサラの魔力制御が始まった。
「キサラ、魔力が均一じゃないぞ。」
「キサラ、それじゃぁ多すぎるし近くまでしか飛んでないぞ。」
「キサラ、―――」
こうしてずっと注意しながら進行していく。
「ハァハァハァ、魔力を薄く放出するのがこれほど疲れるとは思いませんでした。」
「そうだろ?まぁ今回はこれで終りだ。もうやめていい。」
「かしこまりました。」
「この制御ができるようになると後々便利になるから今は辛いだろうが頑張れよ。」
「はい、ご主人様のためであり命令なのですから精一杯頑張らせていただきます。」
「その調子なら1週間ほどで魔法は使えるようになりそうだな。」
「どういうことでしょうか?」
「俺が教える知識と制御できる魔力が増えるから必然的に魔法は使えるようになるからな。」
「そうなのですか?」
「魔法は知識とある程度の魔力制御量が必要だからな。恐らくこのまま上手い事いけば1週間で使えると言うことだ。」
その為の知識も覚えてもらわないとな。
最低でも掛け算は使えるようになってほしい。
キサラの元公爵としての頭の良さに期待することにしよう。
「取りあえず魔法の基礎として当分この魔力を薄く遠くに飛ばす訓練をしてもらう。魔力の増幅と加減の向上が目的だ。」
「かしこまりました。」
まぁ魔力を薄く伸ばすこの練習は探知魔法の習得にもつながる。
あとは勉強会だ。
「でだ次は戦闘訓練なんだが...」
俺達の目の前には20体ほどのゴブリンの群れが形成されていた。
「これは少し多すぎるな...間引くのがメンドクサイのだが。」
だがキサラの戦闘訓練としてはやるしかないだろう。
俺はともかくキサラにゴブリンを何体も相手にする実力は案の定ない。
なら適性の数になるまで俺が間引くしかないだろう。
「う~む、キサラ2体だけそちらに送るからなんとか戦ってみろ。」
「かしこまりました。」
俺はまずカマイタチの魔法で10体のゴブリンの首をチョンパする。
「よしこれであと8体相手にすればいいな。キサラ!そっちに2体行くぞ!」
「は、はい!かしこまりました!」
俺は土魔法でゴブリン8体の足元に10cmほどの穴をあけて転倒させる。
それを免れた2体を回し蹴りでキサラの方に飛ばす。
ゴブリンは蹴られた先にいたキサラに目標を替えて向かっていく。
残りの8体のゴブリンは足元を掬った俺を睨みつけ襲ってくる。
ゴブリンは数の優勢に気づきニヤニヤしながらこちらを睨む。
さっき一撃で10体を屠った事を忘れているようだ。
ゴブリンごときに「え?チミ1人なの?後ろの俺らの慰め物は?あ~俺らの仲間に負けそうになってるの?ふひひひひ~!」みたいな顔してくる。
そのニタニタ顔やめろや、無性に腹立つ。
キサラもゴブリン2体に簡単にやられるようなことはないだろうが見守れる余裕を作るには越したことはないだろう。
ちなみにキサラの得物はナイフを渡しているし、扱い方にも一通りレクチャーしているので昨日の魔物兎のような事にはならないだろう。
「取りあえずお前らは瞬殺だ。」
俺はさっきと同じようにカマイタチの魔法を発動して8体のゴブリンの頭をチョンパする。
まぁこんなものだろう。
キサラの方は―――。
「フッ!ハァ!」
中々奮闘しているがやはり2体はしんどいのか時々攻撃を受けている。
ゴブリンもレベルが低いが攻撃を絶やさず戦うように連携する程度の知能はあるようでキサラに攻撃を与え続けている。
片方のゴブリンが縦に切り付ければその攻撃の後の隙を補うようにもう片方のゴブリンがその後ろから横にナイフを振る。
拙い連携だが攻撃を途切れさせないのだからキサラには辛い相手だろう。
「キサラ!大丈夫か?」
「まだ!…行けます!」
あれは強がり半分だろうな。
最初からスパルタだろうがこれくらいはやってのけて貰わないと困るのは確かなのだ。
どうするべきだろう。
助けるのは当然としてもどれほどの助けをしてやればいいのか正直分からないのは認める。
教えることはここに来る前に教えたし、それ以上のアドバイスは実際にやるしかないのだがまぁもうゴブリン2体しかいないし...
時々キサラに回復魔法をかけて軽い援護をすることにする。
怪我をした瞬間、俺の回復魔法をキサラに飛ばす。
効率的には直接触っていた方がいいのだが切り傷程度なら飛ばしても充分治るのだ。
そうして戦って5分経つとキサラがゴブリンの1体を倒していた。
その後は素早く終わった。
1体目のゴブリンを倒すと2体目のゴブリンは動揺したのか動きが鈍ったのだ。
その隙を逃さず尚且つ油断せず小さな傷を与えつつ着実にかつ素早くダメージを与えていく。
それは1体目を倒した時と同様のいわば単純作業。
止めを刺すのも大振りにせずできるだけ最小限に留めて心臓を、急所を狙う。
だがやはりというか当然というか筋力が足りなく急所を狙って切ろうが心臓を突こうがあと一歩の力が足りず決定的な一撃にはならなかった。
唯一幸いだったのは急所を的確に狙えたおかげでゴブリンが出血多量で動きが鈍くなり戦いやすくなっていたことだった。
そんな細かくかつ安全に2体目のゴブリンも倒した。
「おつかれ。まだまだ拙いし筋肉もないから時間がかかったな。」
「は、はい、急所を当てていたんですがその先が堅くて、それに力を込める前に2体目が攻撃してくるので手間取りました。」
「まぁこれからの鍛錬次第だな。」
今更気がついたが生きたままゴブリン捕まえてないし...
まぁ気にしてもしかたない。
今は自分の怪我を治せるように練習すればいい。
どうせ俺と模擬戦することも考えているから怪我はいっぱいするだろうしな。
「ゴブリンを生け捕りにできなかったのは残念だが今日は帰るか。疲れたし。」
「はい、かしこまりました。」
俺達はそのままギルドに討伐報告をした。
家に帰る前に一度、武器屋のオッチャンの所に行く。
まだ刀はできてないとは思うが一応。
「オッチャン。きたぜ。」
「おぉ、兄ちゃんか。生憎だがまだ刀はできてないぜ。」
「まぁ打つのに時間がかかるのは分かってる。今日はどれくらいで完成するか聞きたかったんだ。」
「予定日か。一応明後日には完成の予定だがもしかして急ぎか?」
「いや、早く作ってくれるのは嬉しいが俺は量より質派だから時間をかけていいものを作ってくれ。」
「あいよ。完成度は高くするつもりだ。」
「じゃぁ明後日に取りにくれば?」
「そうだな。」
「じゃぁ先に金払っとくよ。いくら?」
「そうだな。金貨3枚でいいぞ。」
え?安くないか?
「安くない?」
「そうだな。だが完成度を高くすると言っても初めての作品だからな。納得できる質にはならない。かと言って客を満足できる作品までほっておくのも俺の商売に関わる。」
「それでも安い気がするけど。」
「割引の中には新しい技術の開拓してくれた費用とどうせここで新しい武器を買い続けてくれると言う打算だ。」
オッチャンはそう言うと二カッと笑った。
これほど豪快に客の前で打算と言いながら嫌われないこの笑顔、負けたわ。
まぁ確かにここで刀のメンテナンスとかしてもらうつもりではあったから全然いいんだけど。
「それにこれから刀もドンドン打つつもりだから質が上がったら兄ちゃんが買ってくれるだろ?」
「まぁそりゃ...」
「薄利多売ってやつよ!ってなわけでこれから贔屓に頼むぜ?」
「オッチャンには負けるぜ。わかった。金貨3枚な。」
俺はオッチャンの豪快さに負けて金貨3枚を渡す。
「毎度!じゃぁ明後日取りに来てくれ。初物でも俺の全てを注いで今打てる最高の刀にしとくからよ!」
「おう、楽しみにしてる。」
「刀の完成が楽しみだな。ところでなんでずっとキサラは黙ってるんだ?」
「い、いえ。私の武器の為に金貨3枚もの値段を出してもらいましたので驚いてしまって。」
「気にするなとは言わないがそれだけキサラに期待してると言うことだ。早く強くなってくれよ?」
「は、はい!ご主人様の為に頑張ります!」
中々のプレッシャーを与えてしまった気がするがキサラなら乗り越えてくれるだろう。
俺とキサラはそのまま家に帰ろうと商店街を歩いていると
「い、いらっしゃいませ~、ポーションはいかがですかぁ...」
言葉は最後になるにつれ小さくなっていくとても可愛らしい露店の客引きの女の子がいた。
その娘は頑張って恥ずかしいのを我慢して声を出しているようだが声はそこまで大きくはないし最後の方がゴニョゴニョになっているしで正直客引きになってないし止まってくれる客もいない。
容姿としては茶色のショートカットにくりっとした目、可愛らしい小さな鼻と口元。身体はお世辞にも大きいとは言えない。
まぁ無くはないが大きいとは言えない。
身長もそこまで無い。まさに美人と言うより可愛いという言葉が似合う子なのだが客が来ない理由は恐らく頭の上にある犬耳が原因だろう。
この国は人間主義の考えが強くあまり獣人などの境遇はよくはない。
この国の王も獣人自体は嫌いでは無いらしいのだが敵国が獣人主義の為、あまりいい印象を持たないのだ。
国民も敵国が獣人主義なのだが国がらか人柄は悪くない。
それゆえ獣人相手にでも話などは普通にする。
それでも人間主義に敵国が獣人主義なので偏見の目が少しある。
ただこの世界の獣人たちには人間と同様悪い奴もいればいい奴もいると認識できている分複雑な心境で接している。
友達にはできるけど彼氏彼女には無理、ましてや結婚なんて考えられない。
みたいな感じと考えると分かりやすいかもしれない。
その所為かその獣人の娘のポーションを買っていく人間は少なく多くは同じ獣人たちくらいだしそもそもポーション自体が高いのでそれと同じ値段で売っている彼女のポーションは売れなくて当然だった。
まぁ安く売っても品質がどうだのと言われて買う奴の数は変わらないとは思うが。
そんな慈愛の眼差しで見てると獣人娘がこちらに気づいた。
「あのぅ、買ってください。」
そんな泣きそうな声と目で俺を見ないでくれよ。
ポーション自体俺には必要のないものだ。
回復魔法が使えるし魔力自体も回復力が早い。
無詠唱だしでポーションを持つメリットがない。
ドライアードから貰ったエリクサーもそれこそ何時使うのか想像がつかないのだ。
使うときはもう死ぬ一歩手前で回復しても勝つ見込みがない相手と対峙した時程度だろう。
むしろそんな時が来るのか?
だが彼女と目が合ってしまった。
日本人特有のこの断るのを渋る癖を早く治したいものだ。
「キサラ助けてくれ。」
キサラに助けを求めるが。
「ご主人様のお好きになさってください。」
ちょっとムスッとした顔でそう言ってきた。可愛い。
じゃなかった、嫉妬してくれてるのか。
でもあの顔されると断るのが難しいんだよなぁ~。
だがよくよく考えるとまだ魔法の使えない仲間が今隣にいるな。
そんな言い訳を誰かにして彼女からポーションを買うことにする。
「5本ほど貰えるかな?」
そういうと獣人娘はパァ!と笑顔になった。
「あ、ありがとうございます!銅貨6枚になります!」
「はいどうぞ。」
「はい...あれ?お客様これ銅貨が8枚あるのですが。」
俺は2枚多めに渡した。
「そうか?俺には6枚にしか見えないけど?キサラもそう見えるよな。」
俺はキサラにアイコンタクトしながら質問をする。
すると彼女の目から(お優しいのですねご主人様は)と言われてるような気がした。
「えぇそうですね。私が見ても6枚にしか見えませんね。」
「え?....あ、ありがとうございます。」
「じゃぁポーションは貰っていくね。」
俺はきっちり5本貰って帰ることにする。
ここで4本だけ持っていってもよかったんだけどそこまですると優しそうな彼女が泣きそうだったからな。
正直、言えば1本持って商品に戻そうとしたら泣きそうな顔されたのは言わないでおこう。
「すまんなキサラ。」
「いいえ。ご主人様がお優しいのは知っていますので。ですが可愛いからと優しくするのはどうかと。」
「いやね!そんなつもりはないよ!キサラもあの顔で声かけられると断りづらいだろ?」
「まぁそうですが。それも手口かもしれないじゃないですか。」
「まぁそうだが。それで彼女の生活の足しになるならいいだろう。金ならまだ余ってるし。それに人に親切にするとちょっと気持ちいだろ?」
「そう...ですね。」
キサラを買った時に少し使ったがまだ爺さんから貰った白金貨がまだ残っているし元々貯蓄していた金もある。
並みの冒険者なら直ぐに使い切るだろうが俺達はまだ新米冒険者だ。
依頼自体はそんなに大変な物を受注できる訳じゃないので装備もゆっくり整えれる。
それに俺は重装備より軽装備タイプだし、キサラもそこまで重装備にすると刀が振れなくなるだろうしな。
「俺の国には情けは人のためならずという言葉があるんだ。」
「その人の為にならないから情けを掛けない方がいいと言うことですか?」
「この言葉は自分に向けての言葉なんだ。」
「自分に向けて?」
「色々難しい言葉なんだが簡潔にすると他の人に親切にすることによって自分の為になると言うことだ。」
「自分の為ですか?」
「そう。ある物書きさんは人に情け、つまり親切にすることによっていずれ自分に親切にしてくれる。廻り廻って自分に親切が返ってくると解釈している人もいたぞ。」
「面白い考えですね。」
「そうだろ?だが何となくわかる気はする。人に親切にすることは悪い事じゃないしな。」
「そうですね。私もそう思います。」
「だから今回騙されたとしてもそれはその人が生きる為だったんだ。少しでも彼女の生活が楽になるなら良い金の使い方だったと思う。」
「ご主人様が構わないのであれば私には問題ありません。」
「まぁまた開いていたら買うとしよう。もしかしたら効き目もいいかもしれないしな。」
「そうでございますね。」
俺達はそのまま家に帰りお風呂に入る。
勿論、キサラの身体は洗った。
その後も色々やったぜ!
キサラの身体が飽きるなんて絶対にないな。
断言できるわ。
そんな俺にとって気持ちのいい夜を終え二人とも眠りに着いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
いつも通りの拙い話ですがどうでしたでしょうか?
変なところで切れてしまいましたがどこら辺で切るか悩んでこの辺で切らせて貰いました。
次は、閑話としまして以前言いましたキサラの話を入れたいと思っています。
投稿としましては来週中を目標にしてますので土曜の夜になりますかね?(笑)
全く変なところで閑話を入れる作者ですがご容赦を(笑)
新キャラのおかげというかせいで今の内にキサラの気持ちを描いとかないとこの先全く書きそうになかったですしと言うことで。
最後に、ブックマークしている方、新しくされた方。
いつもいつも本当に感謝です。
これからも更新していきますので生ぬるい目での閲覧を願います(笑)
それではまた次話もよろしくお願いします。




