七話『魔法使いは頭がいい?』
遅れて申し訳ないです。
動いたのはキサラだった。
俺から見ればナイフを得物に使うのに先手取るのはあまりよろしくないと思うのだが。
理由は色々あるが一番はリーチの長さだ。
今回は兎という比較的、体も小さな魔物が相手だがいざ本格的に動くとなると勿論、この前俺が倒したオークなどの生まれた時から魔物だった物などと戦うのだ。
酷い時は人間とも闘うことになる。
そんな相手にリーチの差で負けている場面で戦うセオリーは懐に潜り込む、もしくは相手の攻撃を躱してカウンターを狙うものだ。
スピードや筋力、実力などがあるなら懐に潜り込むのもいいだろうがキサラの場合はどれもない。
唯一あるのは両刃剣を触れる筋力ぐらいだろう。
ならある程度距離をとり隙を狙ってカウンターを狙うしかないはずだ。
それにナイフは勿論、刃物なので心臓や頭などの急所を的確に刺すことができれば一撃で倒す事が出来る。
だがナイフはリーチが短い。
その為どうしても急所を狙うのか熟練の者でも難しい。
なので戦い方としては早く、そしてできるだけ多くの手傷を負わすことが重要なのだ。
だがただ手傷を負わすだけじゃダメなのは当然なのだ。
その手傷の中に腱を切ったりして相手を動けなくしてしまえばいい。
得物自体が軽く扱いやすいのだ。
その扱いやすさを利用しないと両刃剣のようなリーチの長い得物を持つ相手に勝つことはできない。
それを知らない素人のキサラは突っ込んでいってしまうのは仕方ないだろう。
ここはアドバイスぐらいしてやるしかない。
「キサラ、ナイフは大振りせずに兎のわきの下などを切って動けなくするんだ。」
「はい、ご主人様!」
どちらにせよキサラにカウンターや懐に潜り込む技術なんてないし、所詮、兎の魔物だ。
変な病気を持っている訳でもないので身体を傷つけながら勝ってもらうことにしよう。
キサラはシンに言われたとおりに兎の脇を狙っていくが勿論そんな簡単には当たらない。
戦いの最中にタックルや小さな爪で傷つけられる所もよくみられる。
その中にカウンター気味に兎を切りつけると運よく腱を切ったのだろう。
明かに兎の左前足が動かなくなっている。
兎はそれでも果敢にキサラに攻めるが突進する威力が左前足のせいで落ちておりキサラに当たったが上手い事受け止められその後はナイフでぐさりと心臓を刺され絶命した。
「今回は運よく腱を切れたが、あそこで切れ無かったらまた消耗戦だったな。」
「申し訳ございません。ご主人様。」
「仕方ない。だが素人ナイフでさっきの両刃剣で倒した兎より早く倒せたな。」
「やはり私には両刃剣はダメなのでしょうか...」
「そうだな。だからキサラには得物を替えてもらう。」
「このナイフですか?」
「いいや違う。」
「ではどのような武器でしょうか?槍ですか?」
「いいや、槍でもない。キサラに使ってもらうのは刀だ。」
「カタナ?ですか?」
「そう。まぁ今はそのナイフでいい。取りあえず後1匹をさっさと討伐しよう。」
「かしこまりました。」
俺はまた索敵魔法で兎を探し出しキサラに相手をさせる。
その後の残り8匹は動きをだいぶ読めていたのか苦戦し時間がかかり夕方なってしまったが怪我もなく倒した。
俺たちはそのまま街に戻り、冒険者ギルドでキサラをブロンズに昇格してもらった。
その足で昨日行ったミルド武器店に入る。
「いらっしゃい。今日も来てくれたのか兄ちゃん。」
「あぁ、オッチャンに作ってもらいたいものがあってさ。」
「俺にか?」
「そう。刀って知ってる?」
「あぁ、勿論知ってるぜ?東国にある島国で使われている剣だろ?」
この世界にも刀はあるのか。
「それを作ってほしいんだけど。」
「そうか、だがなぁ。俺は作る方法は知らないんだよなぁ。」
「そうなのか...じゃぁ仕方な―――」
「おっとちょっと待ってくれ。俺の知り合いに東国に居る奴が居るからそいつから話を聞いてみるわ。」
「本当ですか?」
「あぁ、任せな。」
「でもなんで?俺と知り合ったのか昨日だよな?」
「そりゃぁ客の要望に全力を尽くすのがこの店の信条だからな。それに兄ちゃんとは長い付き合いになりそうだ。」
「ありがとうそれじゃぁよろしく頼むよ。」
「任せとけ。他に何かないか?」
「刀の形状を知ってるなら木で同じものを作ってほしいんだ。それを2本。」
「木でか?」
「そう。できるだけ頑丈で堅いやつで。」
「分かった。今すぐ欲しいか?」
「そうだな。用意できる?」
「また夜来てくれ。それまでには用意しておく。」
「随分早く作れるんだな。」
「まぁ刃がつく訳じゃないなら知り合いの材木屋に頼んで加工しておく。」
「そゆこと。分かった。じゃぁまた夜くるよ。」
俺は店を出て夕食の食材を買いに行く。
終始無言だったキサラが店を出た後、俺に質問してきた。
「あの、木で模したカタナと言うものを2本もどうするんですか?刃が無いのであれば魔物を切る事はできないとおもうのですが。」
「それは俺とキサラで訓練するためだ。木でできていて刃が無ければ間違いが起きても切り傷ができずに打撲だけで済むだろ?」
「そういうことでしたか。」
「まぁ無事に1日でブロンズまで上がることができたんだから明日から1ヵ月は最低限の狩りだけして後は訓練にしようと思っている。」
「かしこまりました。」
こうして今日の夕飯の買い物と昨日約束した箸を購入してミルド武器店で木刀を貰い、家に帰る。
ちなみに木刀は特別受注だったのでお高く1本銀貨2枚した。
木もそれなりにいい素材の物を使ってくれたようだ。
その後は飯を食いお風呂に入る。
今晩のメニューはハンバーグだ。
卵にオークの肉のミンチと牛のミンチ肉をミックスして混ぜ合わせそこに刻んだ玉ねぎの味がする丸い球体の野菜の玉ねぎもどきやニンジンの味がするピンポン玉サイズの野菜をいれて混ぜ合わせ焼いて、出てきた肉汁に塩と魔法で細切れにした玉ねぎもどきを入れ軽く火を入れつつ自家製の酢を入れたりしてソースも作った。
「ご主人様の料理はおいしいです!」
キサラからの絶賛を受けそのままお風呂の準備をする。
魔法を使って。
勿論昨日と同じように彼女の身体は隅から隅まで洗った。
流石に2回では慣れなかったようで今回もキサラは昨日よりマシだがぐったりしていたので身体を拭いてやり寝間着を着せてやる。
勿論、その間にもセクハラは一杯した。
そしてその間に回復した彼女は。
「今日は1人でベッドに向かえます。」
と言い残して寝室に入ってしまった。
俺は身体を拭いて全裸で寝室に向かう。
ベッドがある部屋は1部屋のみでしかも俺の部屋のみだ。
なのでベッドに行くと言えば俺の部屋、更にキサラが家に来た時から俺と寝るように言い聞かせてある。
最初入った時に一緒に寝ると言うと物凄く驚かれた。
幾らいたすとはいえ主人のベッドに入ることなんて奴隷には許されないことらしい。
だがキサラほどの美人を地べたに寝かせて俺だけベッドで寝てるなんて一体何の苦行だと言うのだろうか。
むしろ一緒に寝ない方がおかしいだろう。
これでも昨日まで童貞だったんだぞ相手が奴隷とはいえ自分の女と一緒に寝ないとかありえないだろ。
そんな俺の心の声を押し殺しながらキサラを説得するのは大変だったが、いざいたすとキサラは力尽きたので半強制でベッドに寝ることになってしまった。
まぁ勿論今日もベッドで寝て貰うつもりだ。
部屋に行くとベッドの布団がモッコリしており枕の方を覗くと顔を半分出して恥ずかしがっているキサラが居た。
むっちゃ可愛いんですけど。
普段、俺の為に頑張っているキサラがベッドで顔半分だけ出して布団にもぐって恥ずかしがっているとかギャップ萌えですハイ。
「どうした?キサラ。」
「あの、いえ、まだ恥ずかしくて....」
そういうと彼女は布団を頭まで被った。
あぁもう!可愛いなぁ!!
俺はその瞬間、ベッドに乗り上げ布団をキサラからはぎ取り「はぅ!」っと驚いたキサラを可愛い寝間着ワンピース越しにも分かる大きな果実を俺はより実るようにと優しく撫でると果実を実らせているキサラと名の木が可愛い声を上げる。
そこから優しく、時に激しく彼女を責め立て慰めると彼女はそのまま意識を失う。
それを優しく介抱してやるとキサラは少し意識を取り戻し、俺の手の動きに艶めかしい声で反応する。
それを聞いた俺はまた辛抱たまらな(ry
これからテンプレになりそうなまだ真っ暗な朝を迎えると隣で寝ていたキサラも起きたようだ。
「おはようございます、ご主人様。」
そう俺に挨拶したキサラはその後チュッと俺の唇にキスをする。
「おはようキサラ。今日から訓練するが身体の方は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。」
まぁ彼女の体調が悪くなるかも知れないような事をしているのは俺なのだが。
「よしなら朝飯を作るか。」
「はい。」
俺とキサラはベッドから降りてキッチンに向かう。
昨日の夕飯を作った時に余った卵を使って卵焼きを作る。
今朝のメニューは、ご飯に卵焼き、昨日の残りのハンバーグだ。
朝でもハンバーグを食うのは流石に辛いとは思ったが案外そうでもなくそこはやはり冒険者になってきたのかなと思ったりもした。
キサラは昨日が初めての冒険者家業だったので朝からはまだきついようだ。
「キサラ、辛くても食っとけよ。慣れないと辛くなるぞ。」
「は、はい。」
俺とキサラは食事を終え、取りあえずと言うことでまずランニングから始めることにする。
「取りあえず走ってみるか。」
「どこを走りましょうか。」
「外壁を一回りするか。」
「が、外壁をですか?」
この国の外壁は魔物と他の国からの侵略を防ぐために1国丸ごと壁で覆っている。
国丸ごと壁で覆っているので東西南北一か所ごとに門を付けて出入り口を開けている。
もちろん入るには身分証明が居るがまぁここで引っかかる奴は滅多にいない。
それこそ完全に正体がばれている犯罪人くらいだろうし、犯罪者もそこまでバカではない。
ちなみに俺達の家は東門の近くにある。
最近は大きな戦争は起きていないので恐れる物は魔物くらいだ。
その為1番被害にあう可能性が高い門周りの家は家賃や土地代が安い。
だがまぁ冒険者達が機能しているので国まで魔物が人間を襲いに来ることは少ない。
「この壁の周りってどれくらいの距離があるんだろうな。」
「さぁ、私は分かりませんが壁の内側を走るのですよね?」
「え?外回りに決まっているだろ?」
「そ、外回りですか...」
「魔物も狩って戦闘訓練もしていこうかなと思ってたんだ。」
「そ、そういうことですか。」
「流石に走って戦闘して走ってはキサラにはまだしんどいだろうから戦闘は援護くらいでいいよ。」
「援護と言いますと何をすればよろしいのでしょうか。」
「そっか、魔法使えないんだよな。じゃぁ走る前に簡単な回復魔法を覚えるか。」
テレレレッテレ~、魔法使い初級編~。
俺は心の中でそう叫びながら腰のアイテムポーチから大変お世話になった魔法使い初級編の本を取り出す。
「キサラ、取りあえずこの本の冒頭と回復魔法の所を読め。」
「かしこまりました。」
冒頭は魔法かイメージが大事云々が書かれている場所だ。
回復魔法は使い手が少ないらしい。
まぁイメージするのが難しいしな。
骨折1つでもそこそこ名のある回復魔法使いじゃないと治せないらしい。
まぁ俺はチート知識があるので骨折なんて造作もない。
脳の治療は難しいが内臓損傷または破裂程度なら治せる。
怪我が程度ではないけどな。
これも魔物化した動物たちで実験した。
結局、この世界の魔法は全てイメージ。
だが最強の魔法使いのあの爺さんの魔法のイメージのせいで皆詠唱に頼るようになっているようだ。
まぁ足りない魔力は技術で補おうとする弊害だな。
魔力コントロールの練習をしなけりゃならないとこの本にも書いてはいるのだが皆あんまり信用してないようだ。
まぁそりゃ誰かも知らない人が書いた本より親などから直接教えてもらったことの方が信用はできるわな。
だが俺の奴隷になったキサラにはその固定概念をぶっ壊してもらわなければならない。
よくよく考えれば努力さえ忘れなければこの世界の人はあの爺さんに余裕で追い抜けるはずなんだよな。
レベル低いよなぁ、この世界の住人の魔法使い。
まぁでも実は魔法使い自体それ程、数が多いわけではない。
精々、国に30人居ればそこそこ居るほどだ。
ギルドも含めると1国に100人程度が平均なのだ。
何故かと言えば魔法はイメージと詠唱でできると言ってもある程度の教養が必要なのだ。
それも掛け算できる程度の知識はいる。
やはり平民が多いこの世界での語学率は低いと言ってもいい。
喋れるが書けないなんて当たり前。
書くだけなら問題ないが貴族以上になる。
足し算引き算程度なら街の店主でもできるが掛け算割り算になるとギルドなどで働くエリートや王国お抱え貴族などの金持ち程度しかできない。
まぁそもそもこの世界ではそれである程度やっていけるので問題はないのだが、やはりできると上の役職に付けることになるのは間違いない。
そんな世界である程度の知識が求められる魔法を使うのは難しいのだ。
勿論、魔法陣などを扱うのは問題はない。
あれは魔力を流せばいいだけだからだ。
話を戻して。
キサラには最低でも身体強化に治癒魔法を覚えてもらう。
その他の魔法は応相談だ。
そうこうしている内にキサラが本を読み終えた。
「この本に載っている『魔法は全てイメージで構築することができる』や『魔法威力が向上するには毎日の魔力制御が必要』と書かれていますが本当の事なのでしょうか。」
「全て事実だ。結果が目の前にいるぞ。」
「にわかには信じがたいです。私が公爵の時に魔法使いと面談することが何度かありましてその人は毎回『魔法は詠唱が全てなのだ!』と豪語しておりました。」
「まぁ詠唱を行うことでその魔法のイメージはしやすいのは確かだな。」
「どういうことなのでしょうか?」
「使いたい魔法を詠唱と言う形でイメージを固定化させて詠唱を行うことで集中してその魔法のイメージをしやすくする。」
前の世界でもルーティーンという技がある。
ある一定の動作を行なうことで集中力を高める技だ。
人によって色々なポーズやジンクスがある。
一番オーソドックスなのが深呼吸などだろう。
ルーティーンに型などなく、人それぞれの個性が出る。
その中でも腕を組んだり、有名な音楽を聞いたり座禅を組んだりする者もいる。
ジンクスを自ら定め歩くときには左足から歩きはじめ右足で止まるなどもある。
それこそ自分が集中できる形ならそれがルーティーンになる。
じゃぁ集中できれば何でもいいと言われるとそうでもない。
その人にあったルーティーンを行う必要があるからだ。
他人のルーティーンが自分に合う事なんて滅多にないからだ。
だが自分にあったルーティーンを行うとその効果はすさまじい。
ある種人間の限界ギリギリの集中力を発揮し、通常ではできないような技を行うことができる人もいる。
この世界の魔法を使う際のルーティーンが詠唱に当たるのだろう。
だが毎回、詠唱を行う余裕があるわけではない。
ならイメージを常に想像する訓練をするしかない。
もしくはイメージを固定化させるほどの知識、もしくは固定概念がないと行えない。
「詠唱で魔法のイメージを固定しているのですか。では本に書かれている『本来、詠唱は必要ない』という言葉は本当と言うことですか。」
「本が読める人は少なくないのに何故皆信じないのかは疑問だがな。」
ちなみに読むことができるのに何故書けない人が多いかと言えば日本で言う漢字は読めるが書けないのと同じ原理だ。
ワーフシギー...
最後まで読んでいただきありがとうございます。m(_ _)m
リアルの仕事の方がガチ忙しくPCすら立ちあげれなかったという言い訳だけさせてください(笑)
次話は来週にでも上げたいと思っていますので暇つぶし程度に読み続けていただけると幸いです。
ブックマークされて読んでくださっている方ありがとうございます。
これからもがんばって行きます!
ではまた次話もよろしくお願いしますm(_ _)ノシ




