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銀翼の飛翔  作者: fey5
第6章 学園と仲間と ―2年度―
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86話 交流戦出場者決定

新暦1348年 ガレリア大陸 カルティア王国 王都カルティア カルティア魔法学園




交流戦の強化訓練の末、出場選手が決定した。


戦闘の部個人戦はトキ、ケオラン、他の2年生は十席に名を連ねるゴルトウィッツ=インテリーアだけで残り10名は3年生になり、その中には学園ギルドのメンバーも3名入っていた。


席次は低いケオランだが、魔法よりも槍の腕前が認められたようだ。


戦闘の部団体戦Aチームはエレス、ルウ、他3年生3名、Bチームはファエル、クウ、ロインツ、ユユ、そしてピニオン=ワークエルという男子生徒が選ばれ、チーグルは残念ながら補欠となった。


魔法の部は1年生がウィリアムスと次席だった男子生徒でコウとライナは落選してしまった。


2年生は十席を維持しているクェーリ=ミグリーとナナテア=エブリッツァで、3年生は知らない生徒だ。


研究の部は3年生の研究チームでギルドメンバーは当選しなかった。


総合優勝を狙えるかは微妙だという話で、今年は他校にもエースというべき優秀な人材がいるらしい。


そういった強豪選手は個人戦に出てくる可能性が高く、トキには早い段階でそれらを潰していってほしいらしく、くじ運が試されることになる。


最悪なのは自校だけで固まってしまい潰し合うことだ。


10年前にクロウリア魔法学園が総合優勝したのがその典型的パターンで、アルゼン帝国のアリジニステン魔法学園が自滅して、上位入賞をサルンガ共和国のヒッポフ魔法学園と争う一騎打ちになったらしい。


客観的に地力を評するなら、アリジニステン>ヒッポフ=クロウリア(3国)というのがこれまでで、クロウリアとカルティア、タルムの3校は分かれてしまった分2大国には劣るだろうと言われている。


言わせたいやつには言わせておけとトキは思う。


総合順位がどうなろうが、トキは絶対に個人戦優勝してやると燃えていた。



「うおおおおおおおおおお!!」


キィンキィンキィン


「っと!最近になって急に気合が入ってきたな。何かあったのか?」


「俺は間違ってました。カルティア王国の誇りを懸けて精一杯挑むべきだって思い直したんです。それだけです!」



トキのやる気を見てロリックはそうかそうかと感心していた。


急にトキがやる気を出した理由は数日前に遡る。


積極的に優勝を狙おうとも思ってないけど手を抜くつもりはないから~というなんとも締まらない気持ちだったトキに対して、エレスとイリアが飴を用意したのだ。



「トキ君、イリアちゃんと話してね。トキ君が頑張ってくれるようにご褒美を用意したの」


「ご褒美?」


「うん。もし、トキが個人戦で優勝したらね……触ってもいいよ?」


「……さ、触ってもって……ど、ど、どこに?(ゴクリ」


「好きなところ「っしゃあああああああああ!!やってやんぜ!!ぜってー優勝する!!」かな?……うん、頑張って」


「クスクス。応援してるね」



トキの頭の中には全裸で応援してくれている二人の姿しか見えなかった。


それからの1ヶ月間、トキの精神に宿るエロスパワーは肉体を凌駕した。


ロリックの指導により、剣の腕はこれまでにないほど急激に伸びていったのだ。


後にロリックはこう語った。



「あの時のトキは凄まじかった。何があそこまで彼を駆り立てたのか、日を追うごとに体の動きは効率的で最小限になり、剣筋は鋭さを増し、刹那の判断は的確になった。とてつもなく集中していた。立ち会って大きいと感じたのは水氷竜とあの子くらいだよ。まぁそれでも剣だけなら私の方がまだ上かな。魔法を使えば?情けない限りだが、最早どうにもならないだろうね。ははは」



長剣と短剣二刀流という大きな違いはあるものの、トキの剣術はロリックのそれを継承していた。


受け流しを主とする防御主体の剣術で、それに連動したカウンターで攻撃へと転じる。


トキの場合、リーチに劣る分カウンター時には深く踏み込む必要があるため、ロリックに比べると動きは大きい。


だが、幾度となく命を懸けてきた経験がトキの踏み込みを強く、そして迷いのない的確なものにする。


最小の防御から最大の攻撃を生み出す。


対人戦闘では魔法なしでも早々遅れをとることはないだろうとロリックからのお墨付きをもらうことになった。


全てはエレスとイリアにムフフなことをするための執念がトキを躍動させたのだった。



剣術と魔法の修行に励む日々を送っていると、いつの間にか前期試験がやってきていた。


今期は真面目に授業を受けていたためトキの席次は1年後期よりもよいものとなった。


薬草学Ⅲはとある薬草の効能について、戦略論Ⅰと戦術論Ⅰは過去の会戦についてのレポートで、自分の考察を述べるというものだった。


会戦というのは150年前に起こったアルゼン帝国とカルティア王国(ナルビス、タルム三カ国同盟)の大規模な戦争で、アルゼン帝国軍15万対カルティア王国軍5万の要塞防衛戦のことだ。


当初数で劣る王国軍が劣勢となったのだが、カルティア王国は後詰としてさらに5万を投入してそれに耐え、加えてナルビス王国軍とタルム女王国軍に援護を頼み、陸と海からの圧力に押されてアルゼン帝国軍が撤退したという結果になった。


アルゼン帝国の見通しの悪さに救われたとも言うべき会戦で、トキはアルゼンを辛辣な言葉で評価した。


これ以外の筆記試験は古代史Ⅱだけで、その他は全て実習だった。


魔法実践Ⅲでは重ねがけした巨大竜巻を起こし、風魔法Ⅲでは例の突進系魔法を披露し、混合魔法では水と風を合わせた暴風雨を発生させた。


運動Ⅲは荷物を背負っての長距離走と団体行動で、体術Ⅲは木剣を持った相手との組手でトキだけはなんとか制することができた。


これの試験を受けて、トキの結果は良1、秀3、優7だった。


2年前期

首席 ファエル=ジブリスタ

次席 クウ=シャオラ

三席 トキニア=ゼペルルクス

四席 ユユ=クリストット

五席 クェーリ=ミグリー

六席 ロインツ=クロムヴォル

七席 ゴルトウィッツ=インテリーア

八席 ナナテア=エブリッツァ

九席 コンドル=フィレンツ

十席 シンク=テルガー


ファエルが主席を不動のものにしつつあるが、トキにとってはどうでもよかった。


ユユが授業料免除されていれば他は気にしない。


どれだけいじられようともその点だけは変わらなかった。


エレスは相変わらず主席の座を誰にも譲らず、1年生の席次もほとんど変わりない。


ただ、イリアの成績は聞く限りでは十席に入ろうかというくらいだったので、その時はお祝いしてあげようと思う。


そんなこんなで例年よりも早い時期の夏休みを迎え、生徒達は旅行の準備に追われていた。


交流戦出場者34名、補欠要員17名、サポート要員10名の他に300名以上の生徒が観戦に来るらしい。


終業式の後に行われた激励式では、良い成績を残せるようお偉いさん方から有難いお言葉をもらい、エレスが代表して決意表明していた。


観戦者はまるで観光ツアーにでも行くかのような雰囲気で楽しそうにしており、出場者は張り詰めた表情をしている。


今から緊張しても仕方がないだろうと思っていると、そういった生徒にはエレスが声をかけて回っていた。


よくできた生徒会長である。



今回、シロクロをどうするか思い悩んだ。


敵対国、しかもシロクロを手中に収めようとしていた国だけに、連れて行くのは災いの元になるのではと危惧した。


シロクロはこの数ヶ月で生まれた時の倍は大きくなっている。


翼を広げるとギン並になっており、体重も100kgを超えるだろうと思われる。


厩舎でハクと寝起きを共にし、ギンと一緒に空を飛び回っては遊んでいる。


ギンに狩りを教えてもらっているようだが、厩舎での食費は既にハク並になっている。


休日には王都郊外で2匹の修行をしているのだが、飛行の補助や攻撃として風魔法を操り、口からは光線を放っていた。


シロは白い光線、クロは黒い光線を口から吐き、どちらも高熱の熱線となって地面と木々を破壊していた。


暴風竜に比べると破壊の規模や距離は劣るものの、威力に関してはそれを凌駕するほどのものだった。


2匹には許可なく光線や魔法を使うことを厳しく禁じたが、果たして王都に住ませわせていいものかと悩んだ。


ギンやハクと同じくらい頭が良くトキの言うことを聞くため現状を維持しているが、いつか王都に被害が出そうで恐ろしい。


そういうわけで、色々危なっかしいシロクロはギン監視の下途中までは同行し、ゴウホウ山地にて待機させることにした。


そこまで連れて行くため、トキだけは他の生徒と別行動をとることになった。



現在、トキたちが向かっているのは老師の家があった崖の上だ。


ハクに乗って空を翔けると僅か2日で着くことができた。


環境のせいか、老師の家は以前とあまり変わりないように思えた。



「懐かしいな……。3年ぶりか……」


キュエエエ



ギンもどこか懐かしさを感じているのだろう。


トキの頭上でシロクロと飛びながらひと鳴きする。


小屋以外何もない平坦な頂上。


崖から見える景色はあの日見たものと同じでこみ上げるものがあった。


ふと下を見ると白く覆われた霧があり、そういえばここから突き落とされたよなと思い返した。


小屋の裏手に回って、かつての家の主である師匠に挨拶をする。



「ジジイ、久しぶり。ふっ、あんたの怒った声が聞こえる気がするわ。こんなにもほっといて何事かってな。ま~色々あってな。恨んではなかったけどさ、仇はとったわ。これにも怒りそうだな。ふふっ」



時間には余裕があったため、トキはあれから起こったことをゆっくりと話していき、久々に老師の家で寝ること、シロクロとギンを置いていくことを伝えて今日はもう寝ることにした。


もっとゆっくりしてもよかったのだが、家の中が埃だらけでもう一晩泊まろうという気は起こらなかった。


シロクロに自分の食べ物は自分でとるように言い聞かす。


ギンには困ったら王都に帰れと伝えておいた。


それを理解したギンは鷹揚に頷く。


(ギンってば本当に出来た子だわ)


そう思いながらしばしの別れを惜しんでもふっと抱きしめた。


シロクロもこっちもこっちもと甘えてくるのでギュッと抱きしめる。


シロクロの抱き心地は冷たくて硬い感じがして、ギンには劣る。


鳴き声もキュウからギュウワに変わっていた。


だが、くりっとした目と仕草がとても可愛らしい。


寂しがるような鳴き声をあげる3匹に手を振ってトキとハクは空へと旅立った。


予想では、ここからコロムロまでトキならば2日かからず到着することができる。


事前に入国許可証をもらっているので、他の生徒のようにカルティア王国北部のオムール要塞を通る必要はない。


そこでトキはアルゼン帝国を空中視察した後にコロムロ入りして、他校の生徒の実力を偵察しようかと考えていた。


エレスたちには師匠の墓参りするので、少し早めに着くくらいだと伝えてある。


帝国や他国の実情について少し情報を探ろうかなという軽い気持ちだった。


しかし、そんなトキの目論見は木っ端微塵となって潰えることになる。

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