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銀翼の飛翔  作者: fey5
第6章 学園と仲間と ―2年度―
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83話 2年前期開始

新暦1348年 ガレリア大陸 カルティア王国 王都カルティア カルティア魔法学園




快晴の今日、入学式と始業式が行われた。


何も聞かされずに代表挨拶をした去年のことを思い出して、ロリックへの怒りが再燃したことが、式は滞りなく進んだ。


隣に座っていたケオランは去年同様居眠りをしていてユユに叩き起されている。


在校生代表挨拶はエレスが行い、生徒数が増えたからか去年以上の喝采を浴びていた。


今年の新入生代表はウィリアムス=リングバーグという男子生徒で、濃い茶色の髪を伸ばしたなかなかのイケメンだった。


後で噂を耳にしたことだが、カルティア王国北西に領地を持つ侯爵家の長男らしい。


トキにとってはどうでもいいことだったのですぐに忘れてしまった。


今日から新入生勧誘期間となるのでそちらの方が大切だ。


初日に今日、学園ギルドはひとまず校舎にある本部で茶話会をすることになっていた。


外の施設で作った料理と飲み物をここまで運んで振る舞い、まずは打ち解けてから集団演舞や職人の実演見学へと案内する手はずだ。


ちなみにだが、春休みのうちに試作していたチーズ作りは軒並み失敗に終わっていたため、また商業ギルドで買い付けることになっていた。



式が終了し、生徒は各教室へと散っていく。


学年が上がったからといってクラス替えというものはなく、去年と同じクラスメートだったので安心した。


担任も変わらずナルバンド=ウリエンである。


今日のHRは2年前期の授業説明と諸連絡などで早々に終わったため、ケオランたちやシンクと共に急ぎ本部へと向かった。


そして、料理担当の者にはすぐに現場に向かうよう指示する。


今日用意している量は100人分だ。


新入生全員が来るとは思えないのでこれだけの量にしていた。


メンバーにはそれぞれ役割を与えている。


料理担当を希望したものは作ってここまで運んでくるが仕事だ。


希望した者は1年教室周辺を重点的に二人ひと組で散会して勧誘して本部まで連れてくる誘導を担当し、連れてきたらそのまま新入生の接待をする。


1人毎に勧誘に成功したら1p、明日行う予定の演技見学に来ることを確約したら1p、今日入会が決まったらさらに1pを加え、最も多くポイントを獲得した組にはトキからイイモノとナンパ王の称号が与えられる。


勧誘に成功した者は一緒に料理をタダで食べてもいいと言っており、イイモノとは何かは言わなかったが、勧誘しまくってやるぞという希望者は多かった。


自信がない者は料理担当や本部待機というわけだ。


ジャクエルは人数に応じて料理担当側に状況を伝え、うまく作るよう指示するために本部待機となっている。


トキはというと、新入生に挨拶をしたり過度な勧誘をしていないか監督をする係だ。


決してサボりたいわけではない。


他にも監督者が3名ほど校内に散っている。


警告をもらうと-1pとなり、二度の警告で罰則が与えられる。



「俺自らが罰してやる。安心しろ。人を反省させるのはとーっても得意だ。他人には見せられねーけどな」



と殺気を出して忠告しておいたので、まぁ大丈夫だろう。



勧誘の他にポスターや看板などもあちこちに立てているので、0人ということはないだろうと思っていた。



「そんなことを思っていた時期が僕にもありましたってか」


「何言ってただよ、トキ。それよか料理と席が足りねーぞ!」



ケオランに言われてトキは走り出す。


どうも今年の1年生に学園ギルドというのは多大な人気があるらしく、勧誘する必要がないほど入れ食い状態だったらしい。


考えてみれば去年トキたちが設立をして募集をかけたのは勧誘期間の終わり頃だった。


そのときには他のクラブへ入会していた者もいただろう。


もし最初から募集をかけていれば、さらにメンバーが増えていただろうというのは自明の理だった。


現在、本部に来ている1年生の数は80名を超えており、本部が手狭に感じるほどごった返している。


とにかくあと50ほどは席が欲しいところだったので手配し本部へと運び込む。


一段落したところでギルドマスターとして挨拶することになったのだが、人数が多すぎるので全員に対して行うことにした。



「新入生の皆さん、入学おめでとう。そして、学園ギルドにようこそ。私はギルドマスターを務める2年のトキニア=ゼペルルクスです。この学園ギルドは主にギルド活動の扶助、支援を目的に設立されました。将来に向けてギルド活動に励みたい人、経験を積みたい人、金稼ぎのためという人、ただ興味があって来た人、仲間や友達を作りたい人、理由はそれぞれです。詳しくは上級生に聞いてみてください。私たちが何をしているのか話してくれます。今日は夕飯が必要ないほど食べていってください。あっ、1年生より食べる上級生がいたら懲らしめるので報告するように。以上」



笑い声に包まれる中、盛大な拍手が起こる。


そのとき、本部へと駆け込んでくる者がいた。


確か料理を担当していた者だ。



「ギルマス!このままだと食材が足りなくなります!」



そういう報告は1年生の前で言うなと言いたかった。


水を差されたように落ち込んだ雰囲気になる。



「新入生諸君、何も心配はいらない。ジャクエル!商業ギルドのギルマスに食材を1時間以内にプレハブまで届けるよう手配しろ。追加で200人分だ。白金貨を叩きつけてやれ!」



わああとまた歓声が上がった。


ノリで白金貨と言ったが、実際のところ金貨20枚もかからないだろう。


追加で購入した費用はトキのサイフから落とされていた。


ジャクエル曰く、ギルマスが勝手に決めたんですから当然です、らしい。



昼過ぎになって、イリアが友人二人とともに本部に来た。



「いらっしゃい。入学おめでとう」


「ありがとう。すごい人気だね」


「ああ、ちと予想外だったけどな。予算増やしてもらわないとな」


「あまり無茶な予算案を持ってこないでね」


「はいはい。ってことはイリアは生徒会に入る事が決まったのか?」


「うん。さっき挨拶してきたところ。コウちゃんも一緒だよ」


「ああ、あの時の。トキニア=ゼペルルクスだ。よろしく」


「お久しぶりです、先輩。コウ=シャオラです。よろしくお願いします」


「こっちはライナちゃん。私の幼馴染でもあるの」


「へ~よろしくな」


「ライナ=クォートです。私は学園ギルドに入ろうかと思ってます。よろしくお願いします」


「お~そっか。ま~立ち話もなんだから座って料理でも食べてって。俺は監督する立場だから、誰かつけるわ」



4人で6人の新入生を相手していたグループがあったので、二人ずつに分けた。


一人はシンクだったので大丈夫だろう。


コウ=シャオラは以前と変わらず茶色がかった黒髪をポニーテールにした背の高い女の子だ。


キリッとした顔立ちで下級生の女子から人気が出そうなかっこいい雰囲気をしている。


男装したら似合いそうである。


ライナ=クォートは白桃色の髪をベリーショートにした子で3人の中で1番背が低い。


背の高さといい胸の板っぽさといい縫製職人のちびっ子コンビと並んだら面白そうだが、あの二人とは違って真面目な感じがした。


どこの部門に入るつもりだろうか。



初日に入会を決めた1年生は41名で、半分ほどは他のクラブの見学をしてから決めるといった感じらしい。


何にせよ、予定していた数字はクリアできたのでよかったと思う。


後日談になるが、結局学園ギルドは73名の新メンバーが加わることになる。


これで合計155名となり、生徒の1/3が学園ギルドに所属していることになった。



勧誘期間が終わった翌週、トキは学園長室に呼び出されていた。


友人たちからの毎度お馴染みの冷やかしを受けながら学園長室へと向かう。


ロリックは学園長らしからぬ態度で、だらっと椅子にもたれて嫌気が差したような表情を浮かべていた。



「学園長先生、何かあったんですか?」


「まぁな。トキ、今日呼び出したのは君に嬉しい嬉しいお知らせがあったからだ」


「そんな嬉しいお知らせなら相応の態度をとってください。面倒事ですか?」


「かもしれんな。春先に行われていた元首会議が終わって出席者が帰ってきたらしくてな。その報告だ」


「ああ、アルゼンが何かやらかしたとか?」


「ふっ。まず、君の剣魔入りが決定された」


「うげっ」


「まぁこれは予測していたことだ。諦めなさい。それと、君の予想通りアルゼン帝国が君に対抗してか魔法学園3年生の名を上げたらしいのだが、他の4国に却下されたという話だ。優秀な魔法使いということだが、実績もないので当然だがな」


「うわ~嫌な予感がする。交流戦で帝国に行くのが嫌になってきましたよ」


「これは上の方から言われてるのだがな。面倒だが交流戦は頑張ってくれ」


「やっぱり色々と言われていますか。まぁ師匠を助けると思って手加減しつつ頑張りますわ」


「確定ではないが、今回から魔道具による結界を配備するとかでな。そうなると手加減は必要ないと思うぞ?」


「へ~そんな魔道具があるんですね。まぁ助かりますわ」


「頑張りなさい。それと君の剣術の授業は私との個人授業に組み替えておいた。手合わせではなく本格的に指導するからそのつもりでいなさい。空いた時間は全てそうするからな」


「それは楽しみですね。剣術自体はまだまだ遠く及びませんから。よろしくお願いします。来週には授業も全て決まるでしょうから、また連絡します」


「ああ、話は以上だ」



剣魔九傑となってロリックと肩を並べるところまできたが、魔法なしではロリックには到底敵わない。


果たしてあの域まで達することができるのはいつになるか、いや一生かかっても無理かもしれない。


それほどロリックの剣技は超常の域に達している。


そんな剣士に個人指導してもらえるのだから、この機会は有意義なものとなるだろう、いや有意義なものにいなくてはならない。



その後、2年前期のトキが受ける授業は次のようになった。


必須科目は戦略論Ⅰ、戦術論Ⅰ、古代史Ⅱ、魔法実践Ⅲ、運動Ⅲ。


選択科目は一般科目が薬草学Ⅲ、魔法科目が風魔法Ⅲ、並列魔法Ⅰ、混合魔法Ⅰ、武術科目が剣術Ⅲ、体術Ⅲ。


今期の選択科目は種類問わず4つ合格すればいいので、このように組むことにした。


必須科目は週2コマで、軍事色が増してきている。


兵役免除となる分これは仕方ないが、軍事一色というわけではなく経済や外交分野も範囲に入るらしい。


並列魔法Ⅰというのは2年からとれる授業で、2つ以上の異なる魔法を同時に発動させるという授業になる。


これについては既に3つまで可能なので、合格は難しくないだろうと考えている。


混合魔法は並列魔法を会得していることが条件で、受ける生徒は少ない上にそのほとんどが3年生だ。


2つの異なる魔法を合体させ、別の効果を生み出す魔法を作り出すというもので、魔法の中ではトップクラスの難易度を誇る。


例に挙げると、火と風で火炎旋風や火と水で水蒸気や熱湯、土と水で沼地を作るなど、組み合わせは様々だ。


闇と火で黒炎とかも出来るのだろうかと疑問に思った。


剣術Ⅲを除けばこれで15コマとなるので、週に5コマ分はロリックの指導を受けることができる。



交流戦の出場候補者も選定された。


これから放課後や休日に強化訓練をしていき、出発の1ヶ月前に出場者を決定するということだ。


団体戦はAチームをエレス、ルウら3年生を主体に優勝を狙うチームとして構成し、Bチームはファエル、クウら2年生を主体に構成するようだ。


学園ギルドの3年生数名とケオランは個人戦に、ユユとチーグルは団体戦Bチームの候補として名前が挙がっている。


魔法の部以外に1年生の名前はなく、5名のみがその候補となっていた。


その中にはライナ=クォートとコウ=シャオラ、ウィリアムス=リングバーグが含まれていた。


優秀なことにライナは五席、コウは三席だったらしい。


ちなみにだが、出場者決定の際にイリアはシンクらと共に治癒要員として交流戦に随員することになった。


シンクに優秀な治癒士として紹介された時には苦笑いを浮かべたものだ。


余談だが、後々顔を合わせた際にトキは生徒会のルウ、クウ、コウが三姉妹だということに遅れながら知らされた。


トキは知らなかったが、シャオラ三姉妹というのは有名で周知の事実だったらしい。


長女のルウと三女のコウは黒っぽい髪や背が高く凛々しいなど共通点が見られるが、クウだけは性格も外見も似ていないので気づかなかったのだ。


そう言い訳をすると、名前で気づけと言われてしまい、そうだよなと黙るしかなかった。


それで気づいたのだが、イリアの幼馴染というライナ=クォートはファウスタイン領の兵士ライベイン=クォートの妹だった。


10歳以上年が離れた妹をライベインは可愛がっており、平民であるのにもかかわらず妹を王都の幼年学校と魔法学園に通わせるために援助しているらしい。


なんとも涙ぐましい話で、ライナもそれに応えようと頑張っているという話だ。


将来はファウスタイン領に戻って、何らかの形で兄とともにファウスタイン領を支えたいという。


それを聞いてトキの目がキラリと光った。


優秀な人材はウェルカムである。



こんなことがありながら2年の前期は進んでいく。


平穏って素晴らしいなと実感するトキだが、当然の如くそれは長続きしなかった。

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