79話 怪しい人がいたらとりあえず無力化して尋問するよね?
新暦1348年 ガレリア大陸 カルティア王国 パイオニル村跡地
温泉を見つけたトキたち男性陣はその身を湯に沈めていた。
女性陣二人は先に入っていたのだが、覗き見る勇者はいなかった。
決して「男ども、言わなくてもわかるわね」と言って剣を抜いたユユが怖かったからではない。
「マジいい湯だわ~」
「この辺りが最適な温度ですね」
「僕はもう少し熱くない方がいいかな」
「山脈を仰ぎ見て風呂に入るってのもいいな」
「この湯はどうかわからないけど、温泉には疲労回復とか療養にいいらしいぞ」
川の深さはあまりないため、皆仰向けになって足を伸ばしていた。
暖かな湯と川のせせらぎに包まれて心身を休める。
山脈から吹き下りる風の冷たさが心地いい。
「この景観を残したままここら辺を優先して開発したいな」
「どういった狙いでするつもりですか?」
トキの呟きにジャクエルが聞いた。
「ん~場所が遠いから、大衆向けじゃなくて富裕層とかの療養地や高級宿って感じがいいんじゃね?村からも近いし、領民専用の分もいるか。湧出量からどれだけの大きさ、数の湯船が賄えるかは計測してから計画しないといけないだろうけどな。チーグルが中心になってやってもらうだろうな」
「え!?……いや、頑張るよ!」
なるほどと言うジャクエルの頭の中では金勘定が高速で行われていた。
材木は事欠かさないだろうが、乾燥というひと手間が必要だ。
自然乾燥は時間がかかりすぎるため、魔法による乾燥が多い。
火属性と風属性の魔法使いが2名がかりで行う。
開発を滞りなく進めるには、属性問わず多くの魔法使いを引っ張ってくる必要があるだろう。
余談だが、攻撃手段以外としての魔法の活用方法は次のようなものが多い。
火属性―林業、農業、調理、工業(製鉄・鍛冶屋など)、水炊き
水属性―農業、治療、生活水
風属性―漁業(操船)、工業・林業(火属性と併用、または木・石等の加工)
土属性―林業、農業、工事、建設
光属性―灯火、治療
闇属性―特になし
闇属性は他者の視覚に影響するのみのため、普通に生活する中では不遇な扱いとなっている。
トキはできれば各属性5人、少なくとも3人はほしいところだと考えていた。
普通、100人に一人という割合の貴重な魔法使いを辺境の一村に集めること自体が無理があるとは気づいていない。
風呂を上がった男性陣は女性陣と合流して、この後の予定を立てた。
大雑把な調査は終わったので、あとはトキがギンと一緒に空から周辺を飛んで回ることにし、他の面々はフリーレンに戻ることになった。
馬車はケオランに御者をしてもらい、トキがいない分遅くなるだろうから6日後にフリーレンで合流する流れだ。
5日分より少し多めの食料を背嚢に詰めたトキは皆と別れ、南の大森林、西のバドワイ山脈、北の草原地帯、そしてフリーレンという順で回ることにした。
見渡す限りの大森林を上空数十mの高さで飛んでいく。
夕方までずっと飛び続けたが景色に変わりはなく、こんな所に古代遺跡が!?という発見もなかった。
ギン先生の目により生き物がいることはわかったが、上空からでは何も見えない。
目標としては少しでも海を見ることだったのだが、まったくそんな気配はない。
仕方がないので、翌日から北西に向かってバドワイ山脈に行くことにした。
一人の野宿は久々だったので少し寂しい気持ちが募った。
ガレリア大陸のやや西より中央部から南にかけて連なるバドワイ山脈。
北部が活火山となっているのに対して、南部の標高の高い峰では年中雪が積もっている。
天候はいいのに標高が高くなるにつれて寒くなり、震えながら進むトキとは対照に、ギンは元気を増しているような気がした。
同じ風の子なのに、と不公平を訴えたかったが、悲しい結果になりそうなので止めておいた。
山脈を超えればサルンガ共和国が見えるはずと思っていたので、とりあえずこちらから見える中で雪が少し積もっている一番高い峰まで上昇してみた。
「わぁお……銀世界……」
そこは一面雪に覆われた平原となっていた。
日の光に反射して雪がキラキラと輝いている。
そして、雪原の広大なこと。
またしてもだが、見渡す限りの雪原が広がっている。
バドワイ山脈というのは想像以上に幅もあるようだ。
北側を見るとさらに高い峰が連なっており、ここが頂上ではないことを知らしめられる。
とりあえず、誰も踏みしめていないまっさらな雪の絨毯にダイブしてみた。
ボフっと体が雪に沈む。
それを見上げれば、青と白のコンタラストがとても綺麗だった。
一通りダイブや足の跡を残し満足したトキは上空へ上って北と西どちらに行くか、様子を見てから決めようとした。
キュエエエエ
すると、ギンが北西の方で何かを発見したようだ。
トキの目では何も見えなかったが、進んでいくうちに黒い物体と人が数人見えてきた。
警戒して十分な高さから闇の法衣を併用して接近する。
雪とその下の土や岩を深く掘り出しており、四角錐の建造物?が顕になっている。
金属質のような素材でできたそれは、ピラミッドのような形で尖端は白く、土に埋まっていたであろう下の部分は黒くなっている。
高さは見えている部分だけでも5mほどあるだろうか。
周囲には白いテントが3つ張られており、掘った穴の中、建造物のすぐそばに2名、四方に散って見張りをしているのが4名いる。
紋章など所属を示すものは見当たらないが、全員白い重装備で腰に剣を差している。
冒険者らしくはない、と思った。
どこかの兵士か傭兵か。
それにしてもテントの数や大きさから見て10人ほどいてもおかしくないはずと思っていると、見張っていた2人の後ろで建造物に入口ができ、中から同じ装備をした5名が出てきた。
何やら話し合っているがトキには聞こえない。
情報が足りないので、トキは大胆な行動に出た。
ある程度離れた位置から、地元民を装って歩いて近づいたのだ。
確かめたいのは仲間の人数と所属、その目的、そして謎の建造物に関してだ。
短剣は腰の後ろに差しているので正面からでも柄が見えてします。
普通の短剣を1本ならまだ不自然ではないだろうが、トキの短剣は特注品なので怪しまれるだろう。
コートの内側にしまって前を閉じ、背嚢を背負っていれば外見上は目立たない。
足を取られながら接近していくと、相手も気づいたようだ。
見張りを止めて集まっているようだが、気にせずどんどん近づいていき声をかけた。
テント横で7人が固まって輪になり、火に当たっている。
ここの雪は除雪したか、溶けたのか積もっていなかった。
「こんにちは~。こんな所でどうしたんですか?珍しいこともあるもんだと、つい来ちゃいましたよ」
「お前はここら辺の者か?」
「はい。ここから西の方に住んでいまして、高原で薬草をつんでいるんです」
こちらを向いて座っている者と話をしている内に、他の3人は建造物を盾にして隠れている。
いつでも動けるように準備は万端だが、どうも知られたくないものがあるらしい。
「その建物って何かの遺跡ですか?こんな所にこんなものが埋まってるなんて思いもしませんでした」
「俺らも偶然見つけてな。何なのかは不明さ」
「へ~あなたがたが見つけたんですか。失礼ですが、冒険者の方ですか?」
「ああ、パーティを組んでてな。本当は違う依頼を受けてたんだ。ところで、今まででここら辺で俺たち以外に誰か見たことはあるかい?」
「う~ん、見たことはない~ですね。しかし、こんな遺跡が埋まっているなんて知っていなきゃ無理じゃないかな~。……運がよかったんですね!」
「……お前さんは今日も一人で薬草摘みかい?」
「ええ、そうですよ?」
「そうか。お前さんは運が悪かったみたいだ」
そう言った瞬間、こちらに背を向けていた一人が剣を抜いて斬りかかってきた。
しかし、予想し予測していたトキは消えるように躱した。
少し距離を置いたトキは先ほどの演技の続きをする。
「ひどいですよ~。何もいきなり斬りかかってくることないじゃないですか~」
「お前、何者だ?」
8人全員が立ち上がり、前の5人が剣を構え、3-2-3の陣形をとった。
背後に回り込んだ3人も2人が剣を抜き、2-1の陣形だ。
後列にいる4人は魔法使いだろうか。
その一人がリーダーだと当たりをつけて問いかける。
「善良なただの平民ですよ?そんな平民の私からお願いがあります。自分から質問に答えるのと拷問されて答えるのと、皆さんはどちらがいいですか?」
「……殺せ」
一斉に剣使いが間を詰めてきた。
コートの前を開けて短剣を抜き迎撃する。
初動から速いトキの動きに前列は反応しきれていないが、距離が空いている中列・後列は遅れながらもそれを捉え仕掛けてくる。
トキはそれに関心し、若干侮っていたことを認めた。
(やるな。特にあのリーダーはいい反応してる)
トキと前衛の距離が空けば射線をうまくとって魔法を放ってくる。
トキとしては情報が欲しかったため、殺さずに無力化する必要があって手加減をしていた。
リーダーの指示による連携が巧みで敵の隊列を崩せない。
前後からまとわりついてくるかのような攻撃に嫌気がさしたトキは全員の捕獲を諦めることにした。
空中への飛び上がり、そこから加速して後列に斬りかかる。
風の刃と火の球が連続して飛んでくるが、空中機動による回避と剣撃で防ぎ距離を詰める。
まずは右端から切り伏せようとしたところで、左端の魔法使いが大きな気合を発して閃光を放った。
予想していなかった反撃に視界が奪われてしまうが、目を瞑ったまま風の囁きだけを頼りに右端の魔法使いの両腕を切り落とした。
続いて、リーダーが放った火炎放射を空中で逆さになって避けながら両肩を斬りつける。
そして、閃光を放った魔法使いが剣を抜こうとしている腕と首を切り裂いた。
光属性ということは治癒魔法を使える可能性があったからだ。
そこへ、すぐに中列と前列が仕掛けてくる。
リーダーを失った状況を見て、残りの3人は回り込んで負傷した者の所へ向かう。
「いい判断だが、それでもまだ甘いな。負傷兵は見捨てて即時撤退するべきだろ」
口調が戻って忠告するトキだが、攻撃の手は緩めない。
中衛2人を受け流しによるカウンターで腕、肩口を深く斬りつけ、その2人を後ろの前衛3人に向かって蹴り倒した。
そこから横へ加速して、回り込んでいた3人の背中をバッサリと切り裂いた。
残りの前衛3人は状況の悪化に判断が追いつかないといった様子だ。
その戸惑いを突いて2人の大腿、手首をそれぞれ斬り、最後の1人は首側面を柄で殴り倒し、戦闘は終了した。
生きている者は11名中10名だが、半分は重症だった。
話すこともできそうにない者は止めを刺した。
テントを漁って見つけた手頃なロープで縛りあげて、治癒魔法をかけた。
トキの眼前にはリーダーを含め、5人の男たちが口と両足、後ろで両手を縛られた状態で座っている。
1人は片手を失ったままで呼吸が荒いが、他は止血したので脂汗をかいている程度だ。
「さて尋問を始めようか。俺が知りたいのは4つ。どういうルートでここまで来たか。仲間はこれで全部か。お前らがどこの人間なのか。そして、あの遺跡についてだ。手荒な真似はしたくないんでな。まずは立候補してもらおうか。話す気があるやつは?」
全員が身動き一つしない。
「ふ~ん。まぁ薄々気付いてるんだけどな。明らかに訓練された動きだったし。じゃ~まず俺から自己紹介してからにするか。俺の名前はトキニア=ゼペルルクス。おっ、知ってるようだな」
リーダー以外が体を硬直し、少し目を開いた。
「有名になったもんだ。リーダーさんは勘づいていたかな?俺がその銀翼だ。暴風竜と剣魔十傑の死神ガルツ=ルーパー、赤狼バクスターとその仲間たちを殺ったのも俺。ちなみにバクスター君は俺の尋問に感涙しながら一から十まで快く語ってくれたよ。お前らにはバクスター君も経験しなかったスペシャルメニューを用意しよう。さぁさぁ、殺してくれって最初に懇願するのはだ~れかな?」
話す内容に違いがないか確認するため一人ずつ距離を置いて聞いていった。
どういった会話のキャッチボールがされたか、その前後は端折ることにする。
得られた情報は次の通りだった。
これらの者はアルゼン帝国皇帝直轄の軍人で、普段は外国を主として諜報や工作を請け負う。
リーダーのレクスレーター中隊長は勅命を受け、精鋭10名の部下とともにバドワイ山脈の南部に眠る古代の遺産を入手するため、サルンガ共和国に密入国して山脈沿いに横断する経路でここへ来た。
アルゼン帝国帝都アリジニステンの城の地下崩落で偶然発見された古代遺跡によって、大陸各地に今までにない古代の遺産が眠っていることが判明した。
これを受けて皇帝は、秘密裏に兵や研究者を各地に送りこんでその入手、または破壊を画策している。
他の遺産の場所は知らないし、何があるか、本当にあるのかは不明。
ただ、その遺産に関しては『七器』と呼ばれていたので、他に6箇所、帝都にもあるなら5箇所存在するのではないかと思われる。
5日前から調査しているが、ここの遺跡に関してもよくわかっていない。
遺跡内には入れるが、天秤が置かれ、よくわからない言語と竜らしき絵が書かれているだけで手詰まり状態だった。
一度報告を出そうとしていたところにトキがやってきていたため、連絡はしていない。
怪しさがプンプンと匂ってくる。
とりあえず、中に入るだけは大丈夫なようなので、トキも入ってみることにした。
遺跡の近くに立つと、自動ドアのように入口が開いた。
中に踏み入ると入口が閉じて周囲が徐々に明るくなっていく。
壁や天井が光を照らしていて、まるでLEDライトのような光だ。
しかし、そこは狭い空間で通路も出口もない。
どういうことか意味がわからなくなっていると、トキは若干の浮遊感を感じた。
音は全くしないが、下に降りていっている。
エレベーターのような仕組みになっているらしい。
それから1分近くも下にいき、ようやく終点に着いた。
目の前の壁が両側に滑るように開いていく。
着いた先は10m立方ほどの全面が白い部屋だった。
左右の壁には輝いているように描かれた金色っぽい竜王(?)の姿がある。
どちらも奥の方に向かって叫んでいるような横向きで、剣を持った人によって胸を刺されている。
正面の壁には、白い玉を乗せた黒い天秤(古代からある吊るす形の手動天秤)とその上側に竜の翼を背に生やした女性が祈っている姿があった。
そして、部屋の奥側には黒い石碑と描かれているのと同じ黒い天秤が大きな台座の上に置いてある。
「なっ…………はぁ!?」
近づいてそれを見たトキの胸の鼓動は跳ね上がり、目を大きく見開いて驚いた。
そこの石碑にはこう書かれていた。
”黒天秤に等しく竜の命を捧げよ”
”さすれば七器のひとつを授けん”
なるほど、これらの壁画からも察するに、竜の心臓をあの天秤にひとつずつ乗せれば新たな通路が開くのだろう。
何の因果かトキが背負う背嚢の底に心臓の石がふたつ入れてある。
しかし、トキが驚いているのはその点ではない。
それも驚きだが、こっちの方がはるかに大きい。
「なんで…………日本語で書いてあるんだよ……」
そう、この世界で共通と言われるデヴィンツ語ではなく、前世の世界の日本語で書かれてあったのだ。
13年ぶりに目にした異世界の文字を前に、深呼吸をしてトキは冷静に考えてみた。
(ありうるのは俺と同じようにこの世界に転生したやつが昔、それも古代の時代にいたってことか。まったくありえない話ではないか。そもそも、今の時代にもいないって保証はどこにもない、か)
そう考えたトキはある衝動に駆られる。
「あの~これスルーしちゃいけないでしょうか?」
誰もいないので独り言になった。
ダメだろうなぁ~とため息をついて背嚢から取り出した石を天秤に乗せる。
少し左右が上下に揺れた後、ピタリと平行になって止まり、突如天秤がまるでガラス細工のように粉々に砕けてしまった。
そして、天秤が置かれていた台座が横にズレていき、下り階段が現れた。
今度はエレベーターではないらしい。
ゆっくりと長い階段を下っていくと、先ほどよりは小さく暗い部屋に着いた。
先ほどの石碑と同じものがその中央にあったので読んでみる。
今度は先ほどよりも長い。
”世界の脅威『ドゥオモ』に対抗するための脅威”
”『不抜の剣』『閃碧の弓』『火貫の槍』『王者の盾』『廻天の枝』『叡智の書』『煌闇の竜』”
”心せよ”
”道を誤れば己が世界の脅威とならん”
”故に代償を以て封印す”
知らない単語が色々でてきた。
おそらくはドゥオモとかいう害悪をなくすか倒すための力が七器なのだろう。
世界の脅威というドゥオモとは何か。
該当するものと言えば、竜王などの魔物の王だろうか。
だが、現在も存在しているし、そのような名前で呼ばれてはいない。
七器の力によって消えたかのような文言ではある。
可能性としては、ドゥオモを消去したが七器は危険なので封印、またはドゥオモはまだどこかで健在でそれに対抗する手段として後世に七器を残したか。
七器に関しては名前からして想像がつきやすく、トキは叡智の書がほしいと思った。
だが、代償を以て封印という最後の一文が気になる。
ここの封印解放には竜王の心臓2個が必要だった。
ならば他の封印もそれと同レベルの条件が求められるのではないだろうか。
(どんな無理ゲーだよ。命がいくつあっても足りねーだろ。まぁそういうことなら他が封印を解かれることないだろうし、ひとまず安心できるか)
いくつか封印されていそうな場所に心当たりがあるが、無茶をして力を集める必要性もない。
そして、その条件からドゥオモというのは竜王をも超える力を有している可能性が高い。
(いやはや、嫌な展開になってきてるな。そんなんがいたら確かに世界の脅威にもなるだろうさ)
さてさてとキョロキョロ周りを確かめるが、暗いせいでよくわからなかったが、奥に続く通路があった。
そこを先に進むとまた小部屋に着き、台座の上に鎮座する二つの卵があった。
ひとつは白い布の上に置かれた黒い卵で、もうひとつは黒い布の上に置かれた白い卵だ。
どちらも見たことがないほどの巨大さで、ギンのときの10倍はありそうだった。
(これは……煌闇の竜ってことか?明らかに他の物ではないよな……)
生きているのかと思い、白い卵に手を触れると、そこから大きく縦に亀裂が入った。
亀裂から白光が溢れ、トキは腕で目を隠した。
光が収まって卵を見ると、白い幼竜が伏せており、ゆっくりとトキの方へ顔上げて目を開いた。
キュウウ
「ぐふぁっ!」
トキは予期せぬ攻撃を受けた。
(か、可愛すぎるっ!こいつ、強敵だ!なんという孔明の罠!)
その幼竜は四肢、尻尾、翼、体、顔まで全てが真っ白で、クリッとした瞳だけが黒かった。
大きさは抱えれるほどで、翼は広げれば2m、尻尾はそれよりも長い。
爪や牙、角はまだ短く体躯も小さいが、その姿は確かに竜だった。
その姿を見てトキはあることに気づく。
「あれ?目が黒い?竜王は赤くて魔物の特徴してたけど……」
(こいつは魔物ではないということか。竜王は竜種が魔物化したものだよな。でも、魔物化する以前の竜種でこんな大きさの竜種や卵なんて見たたことも聞いたこともないぞ)
思案に耽るトキから視線を外し、未だ隣りでそのままである黒い卵に向かって幼竜が口を開いた。
キュゥウウ
すると、口から白い光線が放たれ、黒い卵に攻撃をした。
なにを!?と思うが卵は無事で、光線が収まると先ほどと同じように亀裂が生じた。
そして、今度は亀裂から黒い光が溢れ、中から黒い幼竜が生まれ出た。
こっちの幼竜は全身真っ黒で瞳だけが白く、姿かたちは白い方と全く同じだ。
無事生誕を果たした二匹はトキに向かってキュウキュウ鳴く。
二匹ともとても可愛い。
どうもトキのことを親か何かに思っているらしい。
周囲が珍獣だらけのサファリパークと化してきている現状に頭を抱えるトキだった。




