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銀翼の飛翔  作者: fey5
第5章 学園と仲間と ―初年度―
56/142

55話 冒険者活動、そして……

いつだってマジメ回。

新暦1347年 ガレリア大陸 カルティア王国南東部 ブンゴット辺境伯領 沿岸




夏休み到来!


夏と言えば海!


海と言えば水着!


お待たせしました水着回!


聞こえてくる女の子達の楽しそうな笑い声!




キャギャアアアア




「しーねっ!」


ガシュッ


ふーと息をついたトキは辺りを見回した。



「水着来た女の子なんていやしねーし。いるのはでっけートカゲの魔物だけ。まぁ金になるからいいだけどさ。はぁ~」



夏休みを迎えたトキはファウスタイン領に帰郷する前に、いくつか冒険者ギルドの依頼を受けることにした。


チーグルは家の手伝い、ユユとケオランは同じ方向なので共に帰郷、ロリックは出張で修行相手はおらず、他にすることがなくなってしまったのだ。


夏休みは一ヶ月半はあるので十日もあれば墓参りなどは済ませられる。


ケオラン達がCランクになればパーティは組めるのだが、未だもう少しでDランクになるくらいのEランクであるため、資金稼ぎも兼ねて一人でランク上げをすることにしたのだ。


上位ランカーはCランク以上の上位ランカーであれば誰とでも組めるという。


つまり、トキがいくらランクを上げようがそのままだろうが、ケオラン達とパーティを組むには関係ないということだ。



今回の依頼はAランクで報酬は金貨10枚。


内容は、以前にも行ったカルティア王国南東の港町ミアザ、その西方にある漁村近くの沿岸部に大量発生した水棲のトカゲ型の魔物オーシャンリザードを討伐すること。


この魔物は体長2mくらいの竜種で、海を泳いで住処を変えるらしく今回はこの漁村近くに住み着いてしまったのだ。


鋭い牙と爪を持ち、水中からか陸上で加速して飛びかかってくる。


陸上における単体ではCランク程度だが、この魔物は大きな群れを形成し、水陸両方から攻撃してくるためAランクとなっている。


いつかの狼のように連携することはないのだが、海に潜って敵味方構わず水鉄砲を吹き出してくるため厄介だ。


水鉄砲といっても当たれば大人でも数mは吹き飛ぶくらいの威力がある。


オーシャンリザードにはあまり効かないことも相余って、当てられた個体が急に加速して来るのだ。


そういう点ではこれも連携と言えるのかもしれない。


それでもトキにはスピードで圧倒的なアドバンテージがあるため、現在切り刻んだ数は20匹ほどに達していた。


残りは海からこちらにビュービューと水を吐き出してくるやつらのみだ。


風の斬撃(エアスラッシュ)で遠距離攻撃しても海に潜るのが早いだろうな。となれば……)



「ギン!君に決めたぁ!」


キュエエエエ



上空から滑空し、海面に顔を出したオーシャンリザードの頭を鋭い爪で鷲掴みにし、舞い上がってトキへと放り投げる。


トキは無防備に空から落とされてくるオーシャンリザードを斬るだけの簡単なお仕事。


ギンにかかればこの程度の大きさだと簡単に捕獲できる。


ただ、水の中に潜るのは無理のようだ。


そんな作業を繰り返し、ようやく海中にいたものもいなくなった。


海辺には30~40の死体があがっていた。


漁村に報告がてら人手を呼ぶことにする。


一人で素材を集めるには量が多いためだ。


村人にはお礼に肉を差し上げて、トキは革と爪、牙を持ち帰ることにした。



素材の報酬は金貨26枚となった。


普通Aランク依頼をBランク冒険者が受けるならば4,5人でパーティを組んで挑む。


もちろん旅費も結構な額になり、4,5人だと依頼報酬と素材報酬を合わせても一人頭金貨2,3枚くらいといったところだ。


しかしトキの場合、往復十日足らずでかかった費用は金貨2枚ほど。


今回の依頼では金貨34枚の黒字となった。


ホクホク顔でギルドをあとにし、ギン・ハク共々疲れをとることにした。



翌日、装備の点検がてらジョーのところへ顔を出した。



「ちわー。おやっさ~ん、いますか~?」


「おう、トキか。今夏休みだったか。今日は装備の調整か?」


「はい。依頼をいくつか受けてから帰郷するつもりですので」


「そうか、どれ。ジャケットのサイズ調整と、革類の手入れくらいだな。今日の夕方にまた取りに来いや」


「分かりました。お願いします」



細々とした補給を済ませてからは特に用事もなかったので、ハクを連れて王都の近くで魔法の練習をすることにした。


手のひらで小型の竜巻を起こす。


常日頃から繰り返していたおかげで、その回転速度はかなりのものになっていた。


魔力をさらに込めつつそれを解き放つ。


解放された竜巻はぐんぐん巨大化していき、周囲の草や土、岩を巻き上げて進んでいく。


風速30m以上はありそうなそれは、トキが操作を止めても周囲を破壊し続ける。


止めるには反回転で同威力の竜巻を当てるか、消えるまでずっと待ち続けるしかない。


貫通力を求めて練習していたのだが、いつの間にやら範囲攻撃として発展していたのだった。


範囲攻撃の本命の方はというと、3mの大きさと50mほどの飛距離を保つことができるようになっていたが、予想どおり速度は以前のままだった。


加えて威力は飛距離に反比例して落ちていくため、まだまだ練習が必要となる。


先ほどの竜巻とは別に、自分の前方で横向きに旋風を起こす。


先を鋭くして回転させる。


この時疾風の鎧(ゲイルアーマー)で自分を保護していないと、吐き気や目眩などに襲われえらい目にあう。


まだ直径は2mもないし、回転速度も不十分で貫通力はあまりない。


これもまた、以後継続して練習する必要があるだろう。


一通りの確認と練習を済ませ、ジョーのところで装備を受け取った後、今日は人気がない寮に帰って明日の依頼に備えることにした。



翌朝、冒険者ギルドに行くとそこは喧騒に包まれていた。


いつも騒がしいのだが、今日はなにか緊張感が漂っていた。


ギルド員も慌ただしく仕事に追われていたが、受付で話を聞いてみることにした。



「すみません、何かあったんですか?ギルドの様子がおかしいんですけど」


「それがAランクの6人パーティが全滅したらしいんですよ。護衛依頼中に何かに襲われたとか。今情報を集めているところです」



Aランクのパーティを全滅するような敵、ということはかなりの大群かSランク以上の化物か。


話を聞いて思案していると、冒険者ギルドのギルドマスターが1階に降りてきた。



「Aランクパーティ全滅の件で緊急依頼を出すことが決まった!南の大森林から魔物の群れが北に出てきたらしい。依頼内容はこれらの討伐。種類は不明だが、数は100以上。これを受けて近隣の領主も兵を出すということだ。Cランク以上の者で参加できる者は可能な限り受けてくれ!3の鐘が鳴る頃に南門に集合すること。以上だ!」



緊急依頼ということは報酬は後日決定される。


強制依頼とは違い、参加は自由となる。


おそらく領主軍が出るからだろう。


緊急依頼は割がいい場合が多いのでどうしようかと悩んでいると、ギルドマスターがトキに声をかけた。



「トキニア君、君には別途で依頼を頼みたい。敵の種類や数、場所の特定を先行して調べてもらいたいのだ。その情報があるとないとではこの依頼の危険度は全く違ってくる。いらぬ死傷者も減らすことができるだろう。どうか引き受けてくれないか?」


「……まったく、ずるいなぁ。そう言われると、私の立場上受けなきゃまずいでしょうに」



トキは冗談めかす苦笑いをしながら答えた。



「すまない。襲われた場所は王国南西ファウスタイン領の南部だ。イースコットという村の西らしい。わかるか?」


「……そう、ですか。ええ、よく知っています。何も、問題ないです……」



苦笑いが消え、トキの目には殺意が宿っていた。


イースコット村、それはトキの故郷パイオニル村から東にいった最も近い村だった。


踵を返してギルドを出たトキはハク・ギンと共に南に向かってすぐに出発した。



4日後、トキはファウスタイン領の南部イースコット村に到着していた。


ファウスタイン領兵が村に駐屯しており、魔物の姿はない。


状況を確認しようと降り立ったトキはいつぞやも会った領兵と再会した。


会うのも三度目になるため、トキは改めてギン・ハクを含めた自己紹介とここに来た理由を話した。


ライベイン=クォートと名乗ったこの人の話によると、魔物の群れは森の中と外を破壊しながらグルグル不規則に動き回っており、援軍が来るまでは周辺の村の防衛に専念する方針らしい。


敵は人型――亜種の魔物の群れということを聞いて、トキの口角は無意識に上がっていた。


偵察に出ることを告げてトキは単身空を飛ぶ。


(被害が出るかもしれないから、その前に皆殺しにする。ただそれだけだ、うん)


ハクは村に残し、ギンには敵を探してもらうことにした。


大森林の上を飛んでいると、大きく破壊された痕跡があちらこちらに見られた。


何十mにも渡って太い樹が切り倒されており、爆心地のようにクレーターが出来ているところもあった。


(これは……普通の魔物の仕業じゃないんじゃないか?)


キュイエエエエ


ギンが何かを見つけたらしい。


その方向を観察しながら飛んでいると、前方で爆発したかのように樹木が吹き飛ばされた。


直後、土煙が舞う中から大きな物体が空へと舞い上がった。



「竜……王……?」




『竜王』


SSランクに分類される竜種の魔物。

SSランクの魔物には全て『王』が冠され、現在までに7種11匹の王種が確認されており、その撃退には最低万人規模の兵力が必要とされてきた。

10万人の兵力を以てしても倒すことができなかった記録もあり、よくて撃退。討伐例はない。

竜王は火焔竜、水氷竜、暴風竜、土震竜の4種が存在する。

SSランクの魔物の多くは一定のテリトリーを縄張りとしており、そこから動くことは少ない。

全ての王種に共通するものはその大きさと破壊力で、その種における最大を誇る。

また、敵対者に対して必ずしもその目的が食欲によるものであるというわけではない。




文献でもその姿は描かれておらず、もちろん実際に見るのは初めてだ。


だが、その圧倒的な姿は思わず『王』と言ってしまいそうになる。


(でかい……。体長10m、翼開長はその倍くらいありそうだ。あれは暴風竜か?なんでこんなところに……)


鈍色の体は大きな鱗が一面覆い、後ろ足はそれだけでも立てそうな太さで、足先には鋭く伸びた爪が光り、長い尾はゆらゆらと揺れていた。


魔物特有の赤い目に竜種らしい顔つきで、口は閉じたまま前方を凝視している。


空中に立った状態で風を纏いながら翼をゆっくり羽ばたかせていて、その風圧のせいで下の森林がうねる様な強風にさらされていた。


すると、暴風竜は口を開き一点に向かって突如吼えた。



ギャアアアアアアアア



とてつもない風を辺りにまき散らしながら、そのブレスは森林を大きく破壊する。


(うおっ!シャレんならん!なんつー攻撃だ!)


100m以上は離れているが、トキにもブレスの余波で強風が吹きつけてきた。


どうやら暴風竜は何かに攻撃しているようだが、それが何だったのか無残な破壊痕が残るだけで確認することはできない。


予測としては、報告にあった魔物は暴風竜に追っかけられていたところを護衛に出くわし攻撃したということになるが、暴風竜がもし襲ってくるとなると緊急依頼や領主軍のレベルを遥かに超えた案件になってしまう。


とりあえず見つからないうちに報告しに帰ろうとした。



ギュエエエエ



「っく!!」



ギンの警告に何も確認せずに素早く回避行動をとる。



ゴオオオオオオオオオ



回避すると同時に凄まじい暴風と爆音に襲われる。



「ギン!逃げろ!」



聞こえるかどうかわからないが、そう叫んだトキは森林に飛び降りて身を隠そうとした。


素早く闇の法衣(ダークローブ)を発動して、森の中を疾駆する。


すぐ後方に再びブレスと思われる暴風が放たれた。


疾風の鎧(ゲイルアーマー)という回避方法がなければ簡単に圧死していただろう。


生身では音だけでも衝撃死しそうなくらいである。


(破壊力がデタラメすぎる。竜王って言われるだけありますわっと!!)


隠蔽魔法を駆使していても、トキの居場所が分かっているかのようだ。


ブレスの速さと破壊幅をどうにかトキのスピードが上回っているので回避できているが、このまま逃げれるとは思えないし、人里に引き連れていってしまうことは避けたい。


(って、命あっての物種だよなっと!……どうする!?いつまでも逃げ続けるのはきつい)


①攻撃する

②誰かになすりつける

③和平交渉


(他に思いつかないけど、③は無理だよなぁ。②はまだ可能性はありそうだけど、なすりつけたやつを殺してその後からでも俺を追ってきそう。居場所バレバレみたいだし。となると、撃退or討伐か。一人で?できる気がしねーわ、クソ。でも、やらなきゃ殺される)



「ちっ!仕方ねーか……。お~け~、遊んでやるよっ!!」



意を決して叫んだトキはブレスの方向に向かって加速した。

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