40話 ハクを家族に迎えて
新暦1346年 ガレリア大陸 カルティア王国 王都カルティア
王都に着いたトキはまず、宿屋の女将に話をつけに行くことにした。
年間で税が金貨5枚、定診療が月に金貨1枚、宿泊兼世話代が1日銀貨1枚と金が面白いように飛んでいく。
実を言えば、王家や国からの依頼では別途ボーナスのような手当が支払われているので、学園の必要金額は既に貯まっており、現在では将来のための開拓費用を貯める段階にあった。
しかし、こうも維持費がかかる上に配達依頼では空を飛べないハクの扱いについては困ってしまう。
(ハクってマジ金食い虫。でも今更か。なんとかハクが役立てるようにしなくちゃな)
幸い食事をとるようになってからは、トキを乗せて(しがみついていた)ゆっくり走ることができるまでに回復していた。
短時間だったにもかかわらず、トキの股下が悲鳴をあげていたが。
王都に着くくらいには単身駆け足で何時間も走り続ける体力が戻っており、全力疾走すれば80km/hくらいのスピードで2、3キロは走れていた。
(俺が空を飛ぶよりも速いし体力もある。ショートカットするけど、俺は休憩挟みながらだからいい勝負になるかな?乗ったまま追い風が吹くようにするか?理想はハクに乗ったまま空を走れれば……空中に風の道を作ってみるとか?うまくいくのか?ハクが走れるだけの強度とそれを維持する必要がありそうだけど、むっちゃ難しそう。配達が終わったら使う機会あるのか微妙だし)
今後のハクについて検討しながら流通局へと出向く。
予定より時間がかかってしまったことも含め、今回の一件のすべてを局長に報告した。
「君は何かと問題を巻き起こす……いや、問題に巻き込まれるな」
「自分ではできる限り面倒事は回避しようとしているんですがね」
「そういう星の下に生まれたのだろう。今回もご苦労だった。2,3日は休むことにしたまえ」
わかりました、と告げて退出した。
休日の間にハクのことを考えることにする。
宿に戻ってからハクに乗ってジョーのところにやってきた。
「ごめんくださ~い。おやっさ~ん、います~?」
「ああ?なんだトキか。久しぶりだな。依頼は終わったのか?」
ジョーには出発する前に今回は長期間の依頼となる、とだけ伝えて装備の点検をしてもらっていた。
「ええ、なんとか無事達成できました。死にそうな目にもあったけど。いつも通り装備の点検と、あとあいつに合う馬具を注文したいんですけど」
店の外にいるハクを指さしながら用件を伝えた。
「おいおいおい。なんだ、こいつは?見事な……馬?だが、角があるのなんて初めて見るぞ。こいつは……オスのようだが」
「そうなんですか?霊獣のブースホースらしくて、ハクっていいます。まだ成獣にはなってないと思うんですけど、色々あってついてきたんですよ」
「聖鳥に聖獣ね。お前さんらしい、っちゃらしいか。わかった。サイズ測って調整しておこう。成長して合わなくなったら持って来い。3日後にはできてるようにしとく」
「あざーっす。あっ、体をハクと固定させるための仕掛けをつけてください。斜面を登り下りできていたから、そうなったとき落ちそうで心配で。それと尻の部分は柔らかめにお願いします」
ハクとトキを計測してもらいながら注文をつける。
「ん?こいつの脚は普通の馬とは違うな。蹄は……二つに割れているっ!?いや……割れるようになっているのか?今はくっついてるが、硬さもおかしいぞ。普通、野生馬だったら蹄は削れてるもんだが、全然摩耗した様子がないし蹄自体もでかい。おい、トキ。こいつは斜面を登ったり下りたり、走ったりして問題はなかったのか?」
「ええ、怪我してるといった様子はなかったですよ?ぴょんぴょん飛び跳ねて崖を下っていましたし、平地でもかなり速く走ってました」
「そうか、ならいいんだが。聖獣なんて扱うのは初めてだが、こいつには蹄鉄は必要なさそうだな。あとは鞍と鐙と……」
ジョーはいつも通りの怖い顔でぶつぶつ言いながら店内に戻っていった。
どうやらお会計はいつも通りの後払いになりそうだ。
ジョーは顔に似合わずかなり手先が器用なようで、裁縫から鍛冶まで身につけるものは全てここでお世話になっている。
値段の方はだいぶ割り引いてくれていて言い値で支払っている。
腕は確かなので、これでハクに乗ることは問題ないだろう。
あとは運用方法とトキ次第だ。
その練習のため、ギンと一緒にハクに乗りながら王都を出た。
成長しきっていないといっても、ハクは体高でも170cmくらいある。
トキだと鐙もなしに乗るのには魔法が必要なくらいだ。
トキはハクが美人さん(オスらしいけど)だと思っているし、その見事な純白な体とギンも連れているせいで、いつも以上に視線が向けられている気がした。
ギンを見ることにも慣れる人が多くなっていたが、ハクのせいでまた最初の頃に戻った気分だ。
気にしなければ気にはならないが。
門を抜けて街道を外れ、平原に出る。
まずは、自分だけで試してみる。
イメージは風の板。
足元に風の板を敷く。
魔力を放出すると、薄い緑の風の板ができた。
足を乗せてみると、抵抗があったが踏み抜いてしまった。
(やっぱ難しいかぁ。俺の固定型魔法だと強度が出ないな。となると、疾風の鎧が一番強度があるか。狼の時のように気が動転しない限りは安心できるし。あれの応用で鎧を足元で平にしてみて……)
魔法を発動し、平面でほぼ透明な長方形の板がつま先にできた。
踏んでみたら……大丈夫なようだ。
ハクを呼んで乗ってみてもらったが問題ない。
土台はできたので、これをどのようにして道にするか。
(循環させるか?キャタピラーみたいに。ハムスターの車輪運動っぽく、じゃ進まないか。疾風の鎧を輪っか状にして……)
疾風の鎧の側面をなくし、輪になるようにする。
それを今度は大きく広げて、1mほどの幅をもたせたまま自分の頭を頂点に三角形にしていく。
しかし、今のトキでは前後2m、高さ2mほどが限度だ。
(要練習ね。はいはい)
安全が確立されるまでは、乗馬の練習がてら地上でハクに乗って依頼をこなそうということになった。




