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銀翼の飛翔  作者: fey5
第4章 決意と依頼
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29話 家族の墓標を前に

新暦1345年 ガレリア大陸 カルティア王国 パイオニル村




街道と呼べていた轍の姿は消え、青く生い茂る草花が生い茂っている。


かつての麦畑は人の手が入っていないことを証明するかのように、緑の中に点々と枯れた小麦色が空から確認できていた。


村を目指したものの、5年の歳月によってパイオニル村は見事な廃村となっていた。


朽ちていない家々も屋根までもが雑草で覆われていて、上空からは建物があることに気づけないほどである。


周囲の柵や家の柱には蔓が巻き付き、それによって支えられているようだ。


南側の墓へ降り立ったトキは雑草で見えなくなった墓を発見し、草刈りをして墓周りを掃除することから始めた。



一通り作業を終えたトキは、サクおばあちゃんからもらった魔道具で墓に水をかけてあげた。



「ただいま、父さん、母さん、リア、みんな。5年もほったらかしてごめん。戻ったよ」



この世界における墓参りの作法は知らなかったので、両手を合わせてお辞儀をする。



「だいぶ、俺も強くなれたと思う。まだまだではあるけどね。でも、元気に生きてるよ。ようやく俺にも生きる目的ができてさ。いつかこの村を前みたいないい村に戻したいんだ。今はそのための準備期間。そんな日がくれば、喜んでくれるかな」



あのときと変わらない穏やかな風がトキの髪を吹きつけている。


侯爵夫妻に話したようにこの5年間のことを報告し、トキは別れを告げる。



「じゃ~またくるね。学園に入学する前には一度顔を見せるよ。……行ってきます」



トキは家族に、村の皆に宣言してことで、必ず村の復興を成し遂げてみせると決意を新たにした。



パイオニル村からそのまま王都を目指す中、トキは将来に必要なことを考えてみた。


①学園の入試および通学費用(合わせて金貨155枚)

②老師並の立体戦闘能力、魔法と短剣の腕をあげること

③②とは別に、ガルツ=ルーパーと再会したときのための索敵能力

④村の復興で役立つであろう人材の伝、確保

⑤パイオニル村へ移住したくなるだけの理由

⑥復興のための莫大な資金


(①は55枚最低あればいいから問題ないはず。上位ランクに早いとこなりたいとこだな。在学中も稼ぐ必要はあるか。

②は学園卒業までの課題だから放置。

③は…相手の魔法が意味不明だったから対策がわからん。五感察知とかか?教師か誰かにでも相談する必要ありだな。放置。

④は……正直言うと面倒だけど、他人と積極的に関わっていくしかないか。必要そうなのは、村の運営、農業、建築に詳しいやつと警護要員かな。それと、土属性と回復魔法が使える魔法使いはぜひ欲しい。

⑤は……特産品を作る?見当もつかん。前世の記憶マジ役立たず。教育水準が高いとか?やりようはありそうだが、弱い気がする。飢えることのない、いい村にしたい。食料自給率をあげるか、通貨経済をよくするか。結局のところ、簡単に解決するものはひとつ。そう、全ては……

⑥金だ。世の中金と知恵(と見た目)。これで問題ないはず、たぶん。①も④も⑤もこれでケリがつく)


ラブ&ピースは幻想だけど、金と知恵(と見た目)も理想だよな、と脱線し思考するトキにギンが声を掛けた。


キュエエ


(ギンを崇めた宗教でも作るか?宗教詐欺。いや、各方面から怒られそうだから止めておこう)


下手な考えはさておき、資金稼ぎについてさらに考察する。


(冒険者として稼ぐなら上位依頼を受けるのがいいけど、一攫千金できるような依頼なんてほとんどないしな。危険も高いし。高ランクの魔物は素材がめっちゃ高いけど、存在自体が少ないから運次第ってとこか。まぁFランクの俺が言っても皮算用だろって話だな。

他は、希少価値の高い鉱山を見つけるとか、新発明をするとかか。もし、余裕ができたら村の西にあるバドワイ山脈を採掘してみよう。発明、この世界でないもの。電気、火薬、活版印刷、ポンプ、蒸気機関、米、米食いたいな。うん、だめだ。やっぱりどれも作れそうにない。

逆にこの世界にあって、前世ではなかったもので考えてみるか。魔物、魔法、魔道具、霊獣、ギンの羽や体毛って高く売れそうだよな。いかん、いかん。また各方面から怒られる。う~ん、魔道具か。古代の遺産。実物見てもよくわからないんだよな。サクおばあちゃんは魔力をよく通す物質でできてるって言ってたけど。魔道具か古代の歴史に詳しい人がいたら聞いてみよう)


結局具体策は出なかったが、今できることをするとトキは決めた。


(まずは、王都で冒険者として稼ぎながら、入学試験のために勉強と魔法に励む)


ギンと連れ立ってよく晴れた空を進んでいく。





王都に着いたトキは、冒険者ギルドで聞いたお勧めの宿へ来ていた。


ギルドにほど近いその宿は『渡り鳥の宿り木亭』といい、値段の割に食事がおいしいと評判らしい。


前回のこともありギンをどうしようかと思ったが、別居生活を嫌って年間金貨1枚という税金を払うことにした。


王都内で動物を飼う場合には税金の支払い義務があり、余裕のある貴族や富裕層では見られるが一般市民で飼う人はそう多くない。


そのうちでも冒険者や行商人が移動用の馬車や馬を持っている場合がほとんどである。


もちろんギンが街中で騒動を起こしたらトキの責任となるが、これで堂々と街中を歩けるようになった。


注目を集めてしまうため今は上空に飛ばしているが、問題を先送りしているだけであろう。


宿を選ぶ際にトキが出した条件は『動物同伴可』であった。


厩舎があるところはそこそこ多いらしいが、王都内でそれに該当するのは2件のみだった。


両方共話を聞いてみて、地理や食事がよさそうなここにしたのだ。



「こんにちは。部屋空いてますか?」


「いらっしゃいませ。お一人ですか?」



石造りの壁に内装は木造で奥行きのある2階建ての宿屋に入ると、恰幅のいいおばさんが丁寧に応対した。



「はい。それと鳥が1羽いるのですが、大丈夫ですか?」


「ええ、問題ありません。ですが、躾のできていない動物の食堂への立ち入りはご遠慮願っています。また、できる限り動物は清潔にし、病気を患っていない証明書を月に一度提出してください」


「その証明書はどこで手に入りますか?」


「ここを出て、右へまっすぐ歩いた左手、第2区画の手前に動物を見る医療院がありますので、そこに行ってください」


「分かりました。ではまずそこに行って、証明書を手に入れてからまた来ます」



第2区画とは中間防壁の奥にある、行政関連施設や貴族・富裕層の住宅街のことだ。


ギンはこれまで病気になったりしたことがないから大丈夫だろうと思っていた通り、さほど問題なく証明書を受け取った。


さほどというのは、これも想像した通りギンを見て動物医が驚いたことと診療費として銀貨5枚が必要だったからだ。


しかし、ギンのためなら惜しまないトキはその分稼げばいいと迷わなかった。


1時間もせず再度宿屋へ来たトキは先程は違い、肩にギンを乗せていた。



「あの……証明書をもらってきたんですが」


「……ハッ。失礼しました。いや、それにしても見事な鳥ですね。こんな美しい鳥は初めて見ました。ああ、証明書ですね。確かに」


「私はトキニア=ゼペルルクスといいます。こっちはホワイトロックのギン。ギンは賢いし、私の言うことは聞きますので、問題ないかと思います。ギン、挨拶しな」


キュエエ


「は~大したことで。分かりました。では、宿の説明をしますね。食事付きで一泊銀貨1枚銅貨5枚、動物を連れた場合は銀貨2枚になります。食事は日の出の1の鐘から2の鐘まで、昼は言ってもらえれば傷みにくいものをお渡しします。夕食は5の鐘以降で、あまり遅くならないまでにお願いします。掃除は昼に行いますのでご了承ください。鍵はかかりますが、貴重品は部屋に置かないようにしてください。体を洗うのには裏の井戸をご自由にお使いくださいますよう。以上ですが、質問はありますか?」


「いえ、大丈夫です。とりあえず10日分お願いします。冒険者として2年近くは王都で活動する予定ですので、それからもお世話になると思います」


「はい、確かにお預かりしました。そうですか。お気を付けください」


(見た目と言葉遣いのギャップをすごく感じる人だな)



失礼なことを思ったトキは2階の部屋に案内された。


ベッドと机と椅子があるだけの部屋だ。


窓から日が差しているが、隣の建物があるので景色は眺めれない。


窓を全開にしてギンが出れるようにしてから、ベッドで横になった。


(今日のところは必要な日用品だけ買ってから寝るか。あっ、ギンの分って食事も含むのかな?あとで聞いとこ)


トキの冒険者の道は明日からとなる。


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