23話 ジジイの扱いはこんなもの
新暦1344年 ガレリア大陸 ゴウホウ霊山本山頂上
「ふむ。今日はここまでとしとこうかの」
「うぃ~したっ!」
あれからもずっと修行を続けていたトキは10歳になっていた。
せっかくの異世界だから冒険したい、という気持ちがないわけではなかったが、自分の強さ(主に疾風の鎧の完成度)に納得がいかなかったトキは以前からのサイクルを続けていた。
それに、冒険するのにも先立つものが必要だ。
そんなわけで、ギンとの休日には本山を降りて薬草を採取したり、獣を狩ったりして少しずつ貯蓄していたのだった。
最初はつまずいたが、疾風の鎧を使って、連動した複雑な高速行動も可能になり、現在では老師と地上戦の戦闘訓練で10回に3回は勝てるほどまでになっていた。
空中戦はまだまだ苦手なのはご愛嬌。
ちなみに、現在のトキの装備は以下の通り。
ロクスの短剣、ナイフ、スローングナイフ(各所に装備)、獣皮の手甲、(状態異常無効化はついていない)リリーのリボン、ロクスのジャケット、獣皮の胸当て(ギンが止まれるように左肩もカバー)、獣皮のブーツ。
ロクスの遺した短剣も戦闘訓練のせいでガタがきている。
老師の大型ナイフをちゃっかり狙っていたりするのだが、よほど愛着があるのだろう、いいお返事はもらえていない。
ギンは今日も元気です。
病気になることは一度もなかった。
もう3歳になるが大人と言えるのだろうか。
寿命もよくわからないからなんとも言えない。
繁殖期を迎えて相手が見つかったら挨拶にきてほしいと思うトキ。
ちなみに生まれてからずっとギンの性別は不明だ。
見分け方がわからないから性別はギン、ということにしている。
戦闘訓練が終わり、肩に乗ったギンと戯れていると、老師が話をきりだした。
「お主は今後のことや将来のことをどう考えておるんじゃ?」
「ジジイ。いつから職業を変人から進路指導役の教師に変えたんだ?」
「変人は職業ではないわ!いや、それより師匠をそんな風に見とるのか!?」
「ギン。目の前のジジイが『師匠』だと思えば1回、『変人』だと思うなら2回、『教師』だと思うなら3回鳴いてみな」
キュエエ キュエエ
「被告人、異議は?」
「鳥に!鳥にさえも、儂はっ!」
鳥にまで変人扱いされた老師は地面を叩きながら泣いていた。
老師の変人度が職業レベルだと疑ってもいないトキは、今後の予定を考えてみた。
「やることは一応あるな。冒険者ギルドに登録することと侯爵様へ一度顔見せなきゃな。あとは故郷へ墓参りするくらいか。将来は……もう一度あの村を、パイオニル村を復興させたい、かな。今度は守れるくらい強くなってからだけど」
「侯爵?大丈夫なのか?その貴族は」
「ああ、いい人だったよ。貴族と思えないくらいに。命を救われた恩があってな」
「ふむぅ。よし、では儂もついてまいろう。貴族というのは油断ならんし、村の復興も一人ではできんし、道中儂がおればお主も安心じゃろ」
「ギンせんせ~職業変人がなんかほざいてるよ~」
キュエエエ
「却下、だってさ」
「嘘つくでない!そんなこと言ったはずがなかろうが!」
「じゃ~ギン。さっきの言葉が『僕も安心大賛成』なら1回、『足引っ張るんじゃねーぞ』なら2回、『却下、死刑』なら3か「待て!待つんじゃ!いや、待ってください」
「被告人、目をそらさず現実を見てください。大丈夫、少しの勇気をもってください」
「儂のライフがなくなってしまうぅ。……わかった。儂も連れて行ってください」
「では、誓いの言葉を。あなたは、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しいときも、我らトキとギンを敬い、これを助け、その命ある限り、真心を尽くすことを誓いますか?」
「ち、誓うのじゃ。……なんか変なもんを誓わされたような気がするんじゃが、気のせいかいの?」
「気のせいです」
キュエエエ
この日、長く生活してきたゴウホウ霊山を離れることになった2人と1羽。
最寄りの街を辿って、目指すはファウスタイン侯爵領。




