18話 小さな命、新たな家族
新暦1341年 ガレリア大陸 ゴウホウ霊山本山頂上
「登ってる最中にいつかの巨鳥よりもでかい鳥に襲われて撃退したんだが、卵が残ったから温めながら登ってきたんだよ。そういうわけだ、わかったか?」
「なるほどの。いや、驚いたぞぃ」
昨日の誤解を解くために、目を覚ましたトキは卵を見せながら事の経緯を簡単に説明した。
「十分にてめーの頭がおかしいことは理解していているつもりだったが、それでも足りていなかったことに俺は驚いたよ」
「ふぉ?いや、それもなんじゃがな。この卵のことじゃ」
「ん?これがどうかしたのか?」
「この親鳥なんじゃがな、巨大といったが見とれるような白さではなかったかいの?」
「ああ、ジジイ知ってんのか?」
「儂も見たことはないが、このゴウホウ霊山にこの世のものとは思えないような白く巨大で美しい霊鳥がいると聞いたことがある。確か霊鳥ホワイトロックといったかの」
『霊獣』
ゴウホウ霊山本山またはその一帯に生息する獣。鳥の場合は霊鳥という。
生息数がとても少なく、絶滅したと思われる種も存在する。
霊獣・霊鳥はもれなく何らかの魔法を行使し、縄張りに侵入した敵対者を排除しようとするが、魔獣と異なり、その生息は普通の鳥獣に類似するとされている。
「霊鳥……。もしかして殺したらまずかったか?」
「ふむ、ゴウホウ霊山に住む鳥獣の多くは霊獣、霊鳥として扱われておってな。それらを信仰とする者も少なからずおったと思うが、まぁ大丈夫じゃろ、たぶん」
「てめーの大丈夫は大丈夫じゃねーんだよ。……はぁ」
「どれも生息数が極端に少ないからのぅ。そういう点ではまずいことは確かじゃ」
「じゃあ、この卵も孵化させて育てるべきなのか」
「親殺しが親代わりか。なんとも言えんの」
「言うなよ、考えると凹む。まぁ仕方ねーか。放っておくのもかわいそうだし。じゃ~修行は一旦放置して孵化するまでは安静に温める方向で」
「そうじゃの。まぁ儂も食料くらいは調達してやろうかの」
「ああ、頼む」
魔法の開発や修練に励みながら、孵化を待ち続ける。
体が鈍りそうなので、老師に温め役を代わってもらおうかとも思ったが、アホが移りそうなので止めておいた。
ひと月半を過ぎると、微かに動く気配を感じ、生きていることに一安心した。
人肌では適温にならないのではないかと心配したが、杞憂だったようだ。
そして、ある朝起きると横にしていた卵(丸みを帯びた方)からヒビが入っていた。
割ってしまったかと心配したが、様子を観察していると、次第に非常にゆっくりとだがヒビが大きくなっている気がする。
孵化が始まった。
そろそろかと思っていたが、緊急事態にテンパるトキ。
ちょうど老師は出かけていて、今は自分しかいない。
どうするべきかわからなかったが、自然の中で生まれたことを想定し、特に用意するものもないかと判断した。
手助けしてやりたいのをぐっと堪えて見守る。
卵からは小さくピイピイ鳴く声が聞こえる。
ヒビが穴となり、そこから白っぽい嘴が見えた頃には夕方になっていた。
懸命に嘴で殻を割る雛にガンバレと声援を送り続ける。
うとうとしながら様子を見守り、明けた翌朝。
ついに、丸めた体ごと転がるように殻を破って……生まれた。
濡れたようにへばりついた灰色と茶色の体毛をした雛が割った殻の上でもがいている。
目はまだ開いていないが、鳴き声と弱々しさが可愛らしい。
(名前は……今つけたら愛着湧いて、育成トチって死んだりしたら泣きそうだから止めておこう)
1ヶ月生き延びたら名前を授ける。
トキはそう決めて、願った。
(どうか、この子が元気に育ちますように)
今頃になってプロットらしきものを書き始めました。




