19話 ホワイトロックのギン
新暦1341年 ガレリア大陸 ゴウホウ霊山本山頂上
トキは雛が生まれてからもつきっきりで世話をしている。
小さな器に水を入れておいたが、あまり口にしなかった。
餌は小動物の肉の切れ端からスタートしてパクパクと食べている。
雑食とまでは言わないが、肉切れだったらなんでも食べるようだ。
今では、ヘビやカエル、ウサギの肉などを与えており、小さいネズミなどは丸呑みしている。
ちとテントの中でグロが拡散しているが、我慢だ。
生後1ヶ月を迎えた今日、雛は倍以上に大きくなり元気に成長していた。
体毛や翼はまだ灰色っぽく、親鳥のような純白からは程遠いが、嘴をカチカチ鳴らしながら可愛らしい鳴き声をあげている。
「そろそろ名前を決めないとな。ホワイトロックか。う~ん……まぁシンプルなのがいいよな。どっちにしよう。……よし、お前の名前はギンだ。親みたいに翼が白銀色に煌めくだろうからな」
ピィエエ
「あ~可愛いなぁ///」
トキが可愛がるように毎回餌をくれるトキにギンも懐いていた。(トキが頑として老師に役を譲らず、その存在を見せまいとした結果である)
「お嬢ちゃん、餌と食料を持ってきたぞぃ」
「遅い!餌がなくなってギンが腹を空かしたらどうするんだ!」
「ピリピリするでない。完全に溺愛しよってからに。ところで、名前はギンにしたんじゃな」
「ああ!未来の鳥の王ホワイトロックのギンだ」
「気が早いのぉ。そろそろ、ギンもしばらくは目を離しても大丈夫になってきおったし、お主の修行を開始するかの」
「ああ、そういえばそうだったな。ギン、父は修行せねばならん。1羽でも寂しがるでないぞ」
「ほれ、とっとといくぞぃ」
「あぁぁ、ギーン!」
ピィエエエ
相思相愛な二人は老師によって引き離され、お互いに悲しい声をあげてしばし別れることになった。
「さて、お主にはあの試練の門を抜けてもらうことになる」
「試練の門?」
「うむ。あのアーチ状の門を抜けた先では、通り抜けた者の記憶の中から敵対者を生み出され、それが攻撃してくるのじゃ。その敵対者というのは頭の中で思い浮かべるとよい。人、普通の鳥獣、魔物、倒さずとも敵対した生物であればなんでも可能じゃ」
「え?大丈夫?熱でもあるんじゃない?ジジイがまともそうな修行を提案するなんて気味が悪いんですけど」
「失礼な弟子じゃの。言ったであろう。全てはこのためにしてきたのじゃと」
「じーーーーー」
「師匠をそんな目で疑うでないわ!でじゃ、あの門の中で受けたケガは記憶によるものじゃから外傷などはできないんじゃが、相応の精神的な痛みに変換されるんじゃ。これが厄介でな、攻撃を受け続けそのまま廃人の出来上がり、ということも有り得る。実際、自分や他人の記憶に殺される者もいると聞くので気をつけることじゃ」
「大体のとこは掴んだが、3つ質問がある。まず、あの門はどういうわけでここにあるんだ?」
「はるか昔、それこそ新暦以前の古代文明の遺産ではないかと言われておるが、その由来や当初の目的などはさっぱりわかっておらん」
「古代文明ね。巨大な魔道具かなんかかね。じゃ~次。俺は疾風の鎧を覚えたいんだが、そこはどうすんの?」
「ワシがまず入って例の迷宮の主を生み出す。それからお主が入って共に戦ってもらう。魔法なども使ってきよるから、その特性も備わっているはずじゃ。試したことはないがの。長期戦になるじゃろうし、何度魔力を吸収されれば覚えれるかわからぬ。儂より早いかもしれぬし、遅いかもしれぬ。無理だったら、また新たに生み出しての繰り返しじゃの。そうそう、一度入れば敵対者を倒さぬ限り出てくることはできんから気をつけるんじゃぞ」
「ジジイ。今日、なんか師匠っぽくね?」
「お主は儂になんぞ恨みでも……いや、詮無きことじゃ。で、3つ目はなんじゃ?」
「他人の記憶に殺されるって言ったけど、後から入った人の記憶からも新たに敵対者が生み出されるんじゃないのか?今回の場合だと2対2か。もしくは一人対複数の図式もあるのか?」
「いや、一度に出現する敵対者は必ず最初の1体のみじゃ。後から何人入ろうが同じじゃの。素材を剥ぎ取る事もできんし、そんな輩はおらんじゃろうがの。それと、敵対者を倒すとどういう仕掛けか、自動的に全員門の外に出されることになる」
「なるほどね~。おし、もういいぜ。なんかあればまた聞くわ」
「まず、相手の動きをよく見るんじゃ。儂からも指示は出すがの。魔法が効かぬから回復もできぬ。十分に隙ができたときだけ攻撃して、回避を優先させよ。では、いくぞぃ」
老師を先頭に門をくぐり抜けた。




