再会2/2
〜続き〜
「はぁ...はぁ...いっだぁ!いだだ!」
「あ、イフルール....」
昂った気持ちの発露を一頻り終えた途端、身体中の痛みが蘇ってくる。忘れていた激痛が再び身体中を駆け巡りベッドの上で悶えてしまう。
心配した様子の3人がオロオロと近付いてくる。俺の言葉を最後まで黙って聞いても尚、心配してくれるのだ。
「ぐっ...ふぅ.....ふぅ....。み、みんなは、な、なにしに、来たんだ?」
痛みで少し冷静になる。単純に何しにここに来たのか、其れが気になり3人の方に顔を向け尋ねた。目には大きな涙を溜め、それでも泣くまいと必死に耐えるその姿に再び胸が締め付けられる。
「イ、イフ、ルールに、あ、謝りに、きだの゛、ほ、ほんどに゛....」
ルルレットは口を開いた途端に涙を零し始めた。溢れる大粒の雫は今まで言えなかった気持ちや思いの分だけ止めどなく流れ続ける。
そして、ルルレットを皮切りにパウルとティルベーアも大涙を流し泣き始める。嗚咽混じりに謝罪の言葉を続け全員の啜り泣く声が部屋の中を覆い尽くす。
何て声を掛けたらいいのか分からず、収集の付かない事態に困惑していると様子を見に来たミシェラさんが慌てて中に入ってきてくれた。
「ちょっとちょっと!どういう状況ですか??皆さん、取り敢えず落ち着いて下さい!イフルールさんは怪我人なんですから安静ですよ!安静!」
「ずびぃぃーー!....ず、ずみまぜん...」
「あぁ〜もぉ〜!お顔がぐちゃぐちゃですよ!イフルールさん大丈夫ですか?何があったんですか?」
「ミ、ミシェラさん....」
俺はミシェラさんにこれ迄の経緯とこの部屋での出来事、諸々の事情を全て説明した。
今の現状を理解したミシェラさんは取り敢えず泣きじゃくる3人を引き連れ部屋から出て行った。ミシェラさん曰く今はお互いに落ち着く時間が必要だろうとの事。
嵐が去った後の部屋の中はいつになく静かに思えた。脳裏に過ぎる皆の泣き顔、謝罪、その全てが俺の思考を支配する。静寂に包まれたベッドの上で考えても出ることない答えに只管悩みながら、途切れ途切れになる意識を手放すのだった。
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目を覚ました時には既に陽は落ちており、部屋の中は月明かりだげが差し込んでいた。相変わらず身体を動かす事は出来ないが心做しか痛みが和らいでいる気がする。
「はぁ〜....どうしてこうなった?俺は何か間違えたのか?」
吐き捨てた独白、其れは後悔や懺悔とは違う別の何か。いや、本当は後悔しているのかもしれない。そんな事さえ、今の自分の感情が分からない。
「もう一度ちゃんと皆と話そう。そうしないと、俺達は先に、未来に進めない。」
遅すぎたのかもしれない。本当はもっと早くに本音をぶつけ合い本心を語らうべきだったのだろう。だが誰かが死んでしまった訳ではない、まだ間に合うのだ。
なら話そう。自分達の気持ちを確認し、そうしてからこの先自分自身がどうするのかを決めよう。
「....って言っても動けないんだけどね」
固めた決意も虚しく身動きが取れない事に憤りを覚える。痛みは和らいでいるし最初の反動に比べればだいぶマシになったが動けるか?と聞かれれば答えは いいえ だ。
『地牙狼 アース・ウルフェリオン』との戦闘後に関しては多少のアドレナリンと気合いで何とか死に物狂いで街まで戻ってきてギルドにも顔をだせた。が、其方の無理も重なったのかあの日から今日までずっとこんな調子である。
コンコンコン
「ん?いだっ!っっっ....は、はーい!」
突然のノックに驚き身体を動かしてしまう。痛みに耐えつつ返事をすると扉はゆっくりと開かれていく。
「イフルールさん、起きてらしたんですね。先程来た時はぐっすりでしたので、一応お食事をお持ちしたんですけど どうされますか?」
「あ、ミシェラさん....。ありがとうございます、頂きます」
ミシェラさんが部屋に明かりを灯し食事を運んでくれる。昨日から朝昼夜と食事を持ってきては食べさせて貰っている何とも不甲斐ない状態だが、状態が状態なだけに今は思う存分頼りにする事にしていた。
「イフルールさん、少しは落ち着きましたか?」
「はい。お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ないです。」
「いえいえ、私は大丈夫ですよ!......でしたら、あの御三方ともう一度お話になりますか?」
「え?」
食事が始まるよりも先に話を始めたミシェラさん。その言葉に少しだけ思考が停止した。だが、俺の気持ちは決まっている。もう一度話したい、皆としっかり話し合って、それから自分達の今後を決めていきたい、と。
俺は思った気持ちを素直にミシェラさんに伝えた。すると彼女は一言だけ「わかりました。」と言いその場から離れ部屋を出て行ってしまう。
何故か止める気にはなれずミシェラさんの背中をそのまま見送る。予感、そう予感がしたんだ。確信にも近いその予感は息付く暇もなく的中した。
「.....イフルール」
ミシェラさんと入れ替わる様に【戦擊の妖精】の面々が顔を出した。泣き腫らした目元は赤くなり、未だに目元には涙が溜まっている。それでも、皆の顔立ちから先程とは何かが違うと感じた。
「イフルール、今少しいいだろうか」
「うん、俺も皆と話したかった。」
「そうか....。ありがとう。」
扉を閉めこちらへ近付いて来る。再び4人だけの空間になるが不思議と気まづくはなかった。俺は少しだけ痛む身体を奥へ寄せると3人を座るように促した。
沈黙が訪れる。最初に均衡を破ったのはティルベーアだった。ゆっくりと腰掛け、見下ろす視線が交差する。
何時ものゴミを見るような目ではなく、慈しむそんな視線だった。ティルベーアに続いてパウル、ルルレットが腰を掛けベッドが少し軋む。
ギィ
「......流石に4人は重いんじゃない?」
「こんな事なら少し痩せとくんだったな....」
「最近一気に痩せたでしょ、みんなして....」
なんて事の無い会話。何だかこの空気も久しぶりな気がする。「久しぶり」というのも おかしな話だが「いつもの」感じに少しホッとした事は確かだ。
「......何で痩せたの?」
「それ聞くぅ〜?」
「イフルール以外の料理は美味しくない....食べる気になれないんだ。」
「.....うん、ほんと、ほんとに.....」
明るく返答したルルレット、恥ずかしそうに答えたパウル、その2人と違いティルベーアは嗚咽混じり話した。
「ご、ごめん....泣くつもりじゃ....でも、ホントに、ホントに今までこ....」
「聞かせてよ.....みんなの事、みんなの思ってた事、俺も話すから...」
この日の事は一生忘れないだろう。夜がこんなにも長く遠
く、それでいて早く短く感じた刹那の遠夜を。
語るべきだった2年の塾炎した心音を晒け出し、受け止めては受け止められるを繰り返した長暗なる月下を。




