表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パーティメンバー全員に嫌われている様なので潔く脱退します  作者: 排水溝の忍者


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/16

再会1/2


『地牙狼 アース・ウルフェリオン』との死闘からはや3日。俺は相変わらずベッドの上に突っ伏していた。


流石に2日目を過ぎた辺りで心配したミシェラが様子を見に来てくれた。そのお陰で食事を摂ることが出来たし身体も拭いてもらうこともできた。


食事に関しては大変不甲斐ないが手の空いている【ウルリパの癒し】の従業員に食べさせて貰い、清拭に関しても<洗浄(クリーン)>が有るので頻発に行う必要は無いと言っているのだが、半ば強制的に毎日身体を拭いて貰っている。


身体の方は<自然治癒(ピュアーリング)>を定期的にかけ直してはいるものの一定の山場を超えてからは同じ痛みが続いている。これ以上は回復速度は上がらない、つまり痛みもマシにならないだろう。


「はぁ〜....ミシェラさんのお陰で何とか飢え死にせずに済んだけど...クエスト受ける度にこうなってたら....ソロで活動なんて出来やしないな。」


ベッドの上で考えるのは今後について。同じような思考をずっと順繰りさせては決まらぬ答えに悶々とする日々。身動きが取れない以上、出来る事は限られる。一人で部屋に居ると余計な事まで考えてしまって非常に良くない。


「......ダメだダメだ!今は絶対安静、治す事だけ考えよう。」


頭を左右に振り要らぬ考えを排除すると俺は自分に<睡眠(スリープ)>を掛けて再び眠りについた。こんな感じのひとり問答を続けて今日で3日目になる。





戦擊の妖精(ヴァルキュリア)】side


乗り合い馬車の関係で【記念都市ファルン】にて1日だけ滞在した私達は、次の日朝イチの乗り合い馬車で直接【セスレナ】へと向かった。


道中で適当にモンスターを狩り、相変わらず会話の少ない空気の中馬車に揺られること2日。私達はとうとう【セスレナ】に辿り着いた。【メーギビア】から向かえば半日程度で着いた事を考えれば 無駄な時間を過ごしたとも言えるがジュラネルさんと話せたのは大きかったと思う。


「ここに、イフルールが....」


私を含む【戦擊の妖精(ヴァルキュリア)】のメンバー全員が分かりやすく顔を綻ばせる。しかし、この後に待っているのは地獄かもしれない。一体どんな顔をしてイフルールに会えばいいのか、そう思うだけで綻んだ顔は次第に暗く沈んでいく。


「......先ずはギルドに行ってみようか。」


パウルの一言で私達は止めた足を動かし始める。久々に訪れた【セスレナ】の街は以前と変わらず程良い賑わいに満ちていたが私には何故か色褪せて見えた。



〜冒険者ギルド〜



「はい、現在イフルール様は此方のギルドに所属されています。」


冒険者ギルドに来た私達は一目散に受付カウンターに直行した。対応してくれた受付嬢が聞きたかった答えをくれて内心ホッとする。


「今どこに居るか分かりますか?」


「......失礼ですが、貴方達は?」


「私達は【戦擊の妖精(ヴァルキュリア)】というパーティで活動している、私はリーダーのパウル。イフルールは私達のパーティメンバーでな、手違いがありリーダーである私の許可なく脱退してしまったのだ。だから会いに来た」


尤もらしい理由。別に嘘は言ってないし咎めるつもりもない。それにパウルが名乗ったお陰で受付嬢も私達の事を認識してくれたみたいだ、話はスムーズに進む。


「イフルール様は現在【ウルリパの癒し】で療養中と報告を受けています。何でも部屋から一歩も出れないとか....場所は────」





イフルールside


少し騒がしく感じた。眠りが浅かったのか瞼は閉じたまま、意識だけ段々と覚醒していく。


「────────!!」


「───────!」


部屋の外で何やら口論が聞こえる。俺はゆっくりと目を開くと一度外を見た。陽の高さからしてさっき眠ってから然程、時間は経って無さそうだ。


「ですから!今はお部屋の中に入れる訳にはいきません!


「なんでよ!アンタ達は入ってるんでしょ!」


聞き知った声に寒気が襲う。まさか、そんな筈は、一体何故?、色々な思考が頭の中を支配する。全身から嫌な汗が流れ鳥肌が止まらない。


「い、いやいや....まさかセスレナにいる訳....。でも、今のは絶対にルルレットの声だ、俺が聞き間違えるはずがない。」


2年もの間、寝食を共にした仲間だ。酷い扱いを受けていても声を聞き間違えたりなしない。それにルルレットが居るという事はパウルとティルベーアも一緒という事だ。


「連れ戻しに来たとか?.....ふっ、それは絶対無いな....」


何にせよ自分で動く事が出来ない俺はこのベッドと部屋からは逃げられない。覚悟を決めた俺はもう一度<睡眠(スリープ)>を発動しようとするが、


ガチャ


無慈悲にも扉は突然開かれた。


【ウルリパの癒し】の従業員の静止する声を振り切り中に入ってきたのは見た事の無い表情を浮かべた【戦擊の妖精(ヴァルキュリア)】の3人だった。


「............」


目が合った瞬間、全員の時が止まった。それは一瞬にも永遠にも思える程、刹那が生み出した静寂。息が詰まり、呼吸をするのも忘れてしまう。


「イ....イフ、ルール」


最初に口を開いたのはルルレットだった。聞いた事の無い声色に耳を疑い胸の奥がギュッと締め付けられる。【ウルリパの癒し】の従業員も尋常じゃない空気を察したのか気が付けば立ち去っていて、部屋の中には俺と【戦擊の妖精(ヴァルキュリア)】のメンバーだけになる。


「酷い怪我だって聞いたけど大丈夫?ここ最近部屋からも出てないみたいだし.....」


何から話せばいいか、恐らく全員が同じ事を考えていただろう。しかしティルベーアはそんな空気を意に返さず何事も無い様に普通に話し始めた。


意外だったのは俺の身体を心配してくれた事だ。今まで一緒に冒険してきて俺の心配をする事なんて一度もなかった。それが返ってこの空気を変えるのには最適だったのかもしれない。


「あ.....うん。だ、だいじょうぶ、、では、ないかな?…...でも何とか無事だよ...」


「そう.....。でも良かったイフルールが生きててくれて....ほん...と、本当に良かった......」


話している途中でティルベーアが涙を流し始めた。一度、決壊してしまったダムは止まることなく、勢いを増しながら頬を伝い床にこぼれ落ちていく。


「ご....ごめん、ごめんなさい。イフルールに何時も酷い事言って...、本当はずっとイフルールの事が好きだったのに、素直な気持ちが言えなくて、胸が苦しくて、気が付けばイフルールを傷付ける事ばかり言ってた。謝って....済む問題じゃないし許して貰おうなんて思ってない....だけど、これだけは伝えたかった。今まで本当にごめんなさい!」


ティルベーアが深々と頭を下げ謝罪した。あのティルベーアが、だ。考えられない、というか有り得ない。俺の知るティルベーア・クラウンなら俺がどんだけ死にかけていても心配する事なんてしない筈だ。それどころか更に追い打ちの罵倒を浴びせてくる事まで予想できる。


そんなティルベーアが今までの言動や態度を省み、挙句俺の事が好きだと言う。俺は先程まで呼吸すら苦しかった事を忘れて口から今感じた言葉を吐いた。


「.......お前は誰だ?」


「え?」


「ティルベーアは俺に謝ったりしない!特に頭なんか絶対に下げたりしないし、挙句の果てには俺が好き?有り得ないにも程がある!嘘をつくならもっとマシな嘘つけ!何が目的で

戦擊の妖精(ヴァルキュリア)】のみんなに化けているのか知らないが、俺の目は誤魔化せないぞ!」


的外れ、そんな事は百も承知だ。勿論みんなが偽物じゃ無いことは分かっている。けれど、ティルベーアの言った話を信じる気にも聞く気にもなれなかった。


驚きの表情から一転、直ぐに絶望へと顔を染めていくティルベーア。その一歩後ろで今のやり取りを見ていたルルレットとパウルはただ黙って顔を伏せている。


「ち...ちがう、、違うのよイフルール、私は、私達は....」


「皆は俺が嫌いなんだろ!?早く出て行って欲しかったから強く当たって遠回しに嫌がらせをしてたんだろ!?だから望み通り居なくなってやったんだよ!!それなのに.....何を今更!何を言うんだよ!!」


自分でもビックリした。次々に言葉が溢れ出て来て止まらないのだ。感情の波が押し寄せ、溜まっていた無限大の鬱憤が濁流となって吐露される。


〜続く〜


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ