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この心臓に愛を  作者: 竜花
孤独の心臓 -前夜-
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第46話 作戦会議

「先に聞いておく。変身術で赤子を取り替えるのは、不可能とみていいな?」


 砂漠に集まった面々を前に、アンミは問う。念のため、変身術が上手いトラ、操獣術の上手いタキとディーフも連れてきたのだが……。皆一様に首を横に振ってみせた。


「じゃあ、処刑された後に蘇生する作戦でいく」


 ラードに視線をやると、彼は緊張した面持ちで小さく頷いた。と、そこへ、トラが申し訳なさそうに小さく片手を挙げながら、「すんません」と口を挟んだ。


「処刑前に誘拐できないのはなんでっスか? レベリオのせいだってバレても、こっちの拠点が見つかってなけりゃ向こうも攻められないんじゃ?」

「死ぬ気で探して捕まえに来るだけだからだ」

「こっちも死ぬ気で隠れ続けたら諦めてくれるとかは?」

「ない。体裁ってのがあるんだよ」


 特に、魔王の処刑失敗なんて大事件なんかが起これば。たとえレベリオが逃げようと、たとえ国民が戦争を嫌がろうと、体裁として、王家は戦わなければならないのだ。


「そっスか……」

「だが、処刑の際は心臓を刺されるんだろう?」


 今度はディーフが声を上げる。


「俺たちからしたら、心臓を刺されたら一発アウトだ。蘇生もできない」


 王家側は、魔族の弱点が心臓であることを知っている。心臓を刺さないと、蘇生され得ることに気付いている。大昔の魔王の処刑は、赤子を崖に落とすだけのものだったという。だが、レベリオの祖先が蘇生によって赤子を保護してきたことで、向こうも対策として先に心臓を刺すことにしたのだろう。


「それは語弊があるわ」


 ディーフの言葉には、タキが反論する。


「致命的ってだけで、絶対ではない。実際、アンミくんは心臓を刺されたけどマダムの蘇生で生き延びたでしょ?」

「でもそれは大前提マダムの技術が高かったからですよ。少なくとも今の僕には、傷ついた魂を扱えるほどの技量はありません」

「ラードの言う通りだ。それに、仮に成功したとしてもしんどいだけだろ」


 アンミの言葉を聞いて、タキは意外そうに目を丸くし、「そう」と呟いた。


「つーわけで、蘇生をより確実にするために、魔王に少しばかり細工をしなきゃならない」

「どうにか心臓を刺さないように誘導できないのか? 弱点は実は心臓じゃなくて首だって誤解させるとか」

「今更信じるかしらね。せいぜい二か所とも刺されるのがオチだと思うけど」

「じゃあ、心臓にだけ防御結界を張るとかどうだ? できるか? パロウ、ムロウ」


 先程から黙っていた双子の結界術師が呼ばれる。兄のパロウは困ったように肩を竦め、妹のムロウは気まずそうに視線を逸らしながら、首を横に振って答えた。


「あたしの結界術は、隠れるのに向いていないんだ。心臓に結界を張るだけなら可能だが、攻撃したら防御されたという感触が残ってしまう」

「パロウもか?」

「僕の方の結界はバレにくいけど、僕の術は範囲的なものだから、赤子の心臓くらい小さな局所に張るのは難しいんだ」


 皆が口々に言い合う中で、アンミはパンパンッと手を叩いた。皆の視線が集まったところで、口を開く。


「そんな難しいことしなくていいよ。要は、刺されるときに心臓に魂がなければ傷つかないってことだろ」


 その場の全員がぽかんと口を開いてアンミを見つめた。


「二回殺すってことか?」

「いや。それも考えたけど、時間的にも、魔王の負担的にも難しいと思う」

「じゃあどういうことだ?」


 全く。この中の半分は魔人だというのに、気が付かないものか。いやむしろ、当たり前すぎるから意識することもないのだろうな。


「簡単なことだよ。刺される瞬間に深く眠っていればいい」


 理解の早いタキとラードが、息を呑んだ。ディーフとトラはまだ理解が追いついていないようで、きょとんとしている。パロウとムロウは、魔人じゃないからわからなくても仕方がない。


「え、でも肉体は死んじゃうんだから、死は死で変わらないんじゃないの?」

「もちろん。だからどちらにせよ蘇生は必要になる。でも、魂が傷つくのは避けられる」

「衝撃で目が覚めちゃうとかもないんですか?」

「そうならないように、睡眠薬を飲ませる必要はあるだろうな」


 実際、魂と心臓の結びつきも、物理がどれほど魂に干渉しているのかもわからない。だが、マダムに散々言われた。眠れ、魂を休めろと。魔界に行けば魂も癒されるからと。その言葉が、アンミを導いた。

 この事実まではきっと、王国側も知らない。


「蘇生が必要なら陣も必要よね。でもカンさんが残したのは消しちゃったんでしょ?」


 そう言ったタキの方を振り向く。そう、その話が今日の本題だ。


「だから、これからドラゴンを倒さなきゃならない」


 上級魔族の魂を一つ、イクタに捧げに行く。

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