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この心臓に愛を  作者: 竜花
孤独の心臓 -前夜-
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45/56

第45話 独白

 ――あとひと月だ。

 闇に包まれた世界の片隅で、イクタはひっそりと息をする。

 次に月が消えた晩に、魔王様は世界へ舞い降りる。


 蘇生陣作成の打診はまだ来ないけれど、アンミくんはどうするつもりなんだろう? 最近は魔界に戻っている時間も短いようだし、拠点がバレたとか言っていたから、忙しいんだろうねぇ。まさか、蘇生以外の方法を見つけたのかな? だとしたら向こうにとっては好都合だろうねぇ。でも、それで成功するのかな? 人間の駆け引きのことはよくわからないけれど、事実上一度死んだことにしてしまった方がいいって、先代の魔人たちは言っていたけどなぁ。もし蘇生をするなら、誰の魂を提供してくれるんだろう? 情け深いアンミくんのことだから、魔人は差し出してくれないだろうなぁ。だとしたらドラゴンたちか。順当にいけば、数の多いテラドラゴンかな。うーんと……あ、平原に一匹湧いたのがいるな。あの辺りに湧いた魔獣はいつもすぐに倒されてしまうから、アンミくんならそこを利用しそうな気がする。もういっそ勝手に食べて陣を作ってしまおうかな。場所は……砂漠の、アンミくんやタキくんが今眠っている辺りなんかどうかな。あそこに集まっているということは、きっとあの辺りを拠点にしているんだろうしね。あれ、でも、全魔人が集まってるわけじゃないってことは、定住はしていないのかな? 強力な結界術を使えないって怖いねぇ。安全な場所がないってことだもんねぇ。陣を作るついでに、僕が結界を張ってあげようかな。なんなら、魔人の誰かにまた伝授したっていいな。どちらにせよエネルギーが必要だなぁ。でも、勝手に魂を食べると後で魔王様に叱られるんだよなぁ……。特に上級魔族は大事にしろって、ずっと昔に叱られたっけ。仕方がない、我慢我慢。――ただ、個人的には、蘇生術師の顔を見られないことが不安なんだよなぁ。ウイトくんは何も言わずに還っちゃうしさぁ。タキくんに聞いたら、魔人じゃなくて砂漠の民の人間が受け継いだとか言うじゃないか。そりゃあ、砂漠の民だって魔術は使えるけどさ。魔の力を手にしておきながら女神に服した民族の力を借りるなんて、屈辱的だと思うけどなぁ。人間の感覚はわからないや。うーん、でもやっぱり気になる。ボクも蘇生には携わっているんだから、術師の顔を見る権利はあるよねぇ? 今度見に行ってみようかな。あ、でも、それにもエネルギーが必要なんだった。低級魔獣一匹で足りた気がするな。食べちゃ駄目かなぁ。駄目かなぁ。駄目だよねぇ。魔王様に叱られたくないもんねぇ。砂漠の民を魔界に招く方法とかなかったっけ。今度誰かに相談してみよっと。


 ――あぁ、気付けば生ける魂たちが次々と現世に帰って行く。眠りから目覚めて活動を始める。

 朝だ。光の蔓延る時間だ。隠れなくちゃ。

 日の当たらぬ魔界の端で、イクタは身を縮こませて丸まった。

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