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この心臓に愛を  作者: 竜花
孤独の心臓 -救出-
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第43話 正直者

 城の地下牢近くの小部屋で、ウィルは騎士たちと向かい合って座っていた。部屋が狭いせいか、騎士たちの持つ剣がやけに厳つく見える。


「少なくとも、お前の妻は盗賊に攫われ、救出したのがレベリオだったってことは間違いないんだな?」

「はい」

「救出をレベリオに依頼したのは、お前か?」

「……本当に偶然、レベリオが現れたんです。内通していたわけでは」

「そんな偶然あるかねぇ」


 尋問係の騎士が、腕を組みながら目を細めてこちらを見た。決して嘘はついていないのに、証明する術がない。だが、偶然を証明しろと言われてできる人の方が少ないだろう。困ったものだ。

 重い沈黙が落ちる。いつまで続けていればいいのだろう。もういっそ、自分が内通者だと告白してみせようか。もちろん、今のレベリオの居場所は明かさずに。ウィル一人の立場が危うくなったって、捨て駒くらいにはなれる。ハピを一人にしてしまうのは辛いが、この状況なら彼女を巻き込まずに済む。

 意を決し口を開きかけたところで、部屋の扉がノックとともに開かれた。


「失礼します。ウィルさんの容疑について話したいという者を二人連れてきました」

「入れろ」


 ハピか。族長か。まさかアンミは来ないだろうと思った。だが、思い浮かべたどの顔でもなかった。

 現れたのは、城下町で宿屋を営む老婆と、レベリオの青年――ラードだった。


「何の用だ?」

「ウィルさんの疑いを晴らしに来ました」

「とはいってもな。こいつがレベリオに助けを求めたのはこいつ自身も認めてる」

「でも、会ったのは偶然なんですよ」


 呆れたように溜息をついた騎士の前に、宿屋の主が一歩前に出た。


「実はあたしゃ、レベリオに文通友達がいるんだよ」

「何?」

「そんで、ちょうどウィルさんの嫁さんが攫われた時期にレベリオが来てたって証明ができる手紙があるんでねぇ。持ってきたさね」


 老婆が両手で握りしめていた数通の手紙が騎士の手に渡る。封を切って中を読んだ騎士は、鬱陶しそうに老婆を見た。


「てことは、あんたもレベリオの協力者ってことか? 今レベリオはどこにいる?」

「んなこと知らないよ。友達は夏に会ってすぐ死んじまったようでねぇ。それが最後の手紙さね。もう文通はしてないよ」

「宛名は……山峡村か。ふむ……」


 騎士は、それぞれの手紙を開いて目を通した。読み進める度に眉間の深い皺が段々と消えていくのを、ウィルは固唾を呑んでじっと見守っていた。騎士が一通り目を通したところで、ラードが口を開いた。


「少なくとも、ウィルさんが自分から連絡する手段は持ってないように思いませんか? 魔術も使えないわけですし。あとは、彼の家に手紙をやり取りした形跡がないかとか、身体に魔力を使われた跡がないかを見れば、今はもう繋がりはないことはわかるんじゃないかと」

「……そうだな」


 その肯定を受けて、ウィルはほっと息を吐く。ちらとラードに視線を送ると、気付いた彼は小さく微笑んで頷いて見せた。


「ところで、婆さんが来たのはわかるがお前は何者だ?」


 騎士がラードを振り向く。まだ疑いは晴れてないと、そう言いたげな声色だった。しかし、そちらに視線を戻したラードは、怖気づくこともなく、悠々と微笑んでみせた。


「しがない旅人です。一回空腹で倒れそうだったときに、ウィルさんにご飯をご馳走してもらったことがあるんですよ。彼の店のパエリア、美味しいので今度食べてみてください」


 何一つ、嘘はついていない。ただ、行き止まりを提示しただけだ。

 彼のとぼけた様子に、思わずウィルはくすりと笑った。

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