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冒険者は塔に挑む  作者: 結城 からく


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第12話 塔に棲み着いてはならない

 あなたは残忍な殺人鬼だ。

 他の冒険者を殺すために塔内を徘徊している。

 それ以外に目的はない。

 己の殺戮衝動に従うことだけが、あなたの生き甲斐であった。


 あなたには特技がある。

 それは塔のルールを無視できる転移魔術だ。

 一度でも到達した階層なら、瞬時に移動することができる。

 逆に低階層まで戻ることも可能だ。


 本来、冒険者の塔は一方通行である。

 魔物を倒して進み続けるか、途中の魔法陣で脱出するしかない。

 どういった因果なのか、あなたはその法則から逸脱していた。

 あなた自身、どうしてそれが可能なのかよく分かっておらず、解明しようとも思わなかった。


 あなたにとって殺人こそがすべてなのだ。

 細々とした道理に興味はなく、ただ楽しめればそれでいい。

 己の名前や出自すら忘れた今、あなたは塔の魔物と同類――ともすれば魔物以上に厄介な存在と化していた。


 階層の間の階段で眠るあなたは、人間の気配を感じ取って目覚める。

 ちょうど数人の冒険者が上がってくるところだった。

 彼らはあなたを見ると、すぐさま武器を構えて戦闘態勢に移る。


 あなたの悪評は冒険者に知れ渡っていた。

 神出鬼没で残虐。

 人間を狩ることに慣れており、戦術を崩す動きを多用する。

 他の階層に逃げても転移魔術で追跡してくるため、戦って撃退するしかないとされていた。


 今回の冒険者もそれらの事項を憶えていたらしい。

 前衛を務める戦士が大盾で階段を塞ぎ、隙間から槍であなたを狙った。

 階段の狭さを利用して攻め立てていく。

 後衛の魔術師は、結界を張って補助を行っていた。


 徐々に押し込まれる展開に、あなたは焦ることなく対処する。

 転移魔術で冒険者達の背後に回り込むと、後衛の魔術師の背中にナイフを突き立てた。

 さらに首に手を回して人質にしつつ、慌てる別の冒険者の胸を刺す。

 首を刺された冒険者は、自分の血に溺れて息絶えた。


 残された大盾持ちの戦士は激昂する。

 しかし、仲間の魔術師が人質になっているので迂闊に動けない。

 あなたは嬉しそうに笑って、魔術師の首をナイフで掻き切る。

 そして戦士に向かって飛びかかった。


 階段を舞台にあなたと戦士は一騎打ちを演じる。

 実力は拮抗していた。

 重装備の戦士は、大盾と槍で攻防のバランスが取れている。

 対するあなたは軽装で、手持ちの武器はナイフのみだ。

 突きや切り付けは簡単に防がれてしまい、決め手に欠けるのは明らかだった。


 不利を強いられながらも、あなたは微笑を止めない。

 これくらいの状況は日常茶飯事だった。

 転移魔術の他に突出した才能を持たないあなたは、単独行動なのも相まって窮地に立たされることが多い。

 瀕死になって逃亡することも珍しくなかった。


 追い込まれるほど、あなたの攻撃は鋭さを増していく。

 乱暴な蹴りが大盾の守りをずらし、そこにナイフが突き込まれた。

 繰り出された槍の刺突を脇に挟んで止める。

 大盾に殴られてもお構いなしだった。

 鼻血を垂らしながらも、あなたの猛攻は止まらない。

 的確に相手の急所を狙っていく。


 戦士は焦り始めた。

 有利なはずなのに雲行きが怪しくなってきた。

 攻撃を当ててもあなたは怯まず、仕返しとばかりに過激な反撃を仕掛けてくる。

 その気迫に負けつつあるのだ。


 後ずさる戦士が滑って尻餅をついた。

 決定的な隙を前に、あなたが悠長に待つはずもない。

 大盾越しに圧し掛かると、振りかざしたナイフで戦死を滅多刺しにした。

 鎧の隙間を狙って刃先を潜り込ませて、何度も致命傷を与える。


 戦士は激しく吐血し、やがて動かなくなった。

 握られた槍はあなたの脇腹を貫いている。

 どさくさで突き出した一撃が上手く刺さったのだろう。


 あなたは槍を引き抜くと、手持ちの回復薬を傷口に塗り込んだ。

 そして布を当てて紐で縛り付けて止血を行う。

 応急処置にしても粗末すぎるが、あなたは満足そうに死体を漁り始める。

 塔での劣悪な生活に慣れたあなたは、少々の傷では死なない身体になっていた。


 死体から武器と道具を奪ったあなたは、転移魔術で別の階層へと消える。

 これからも死ぬまで冒険者を襲い続けるのだろう。

 殺人鬼の悪評が途絶えるのはまだ先になりそうだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 塔自身の性格(?)を考えると、この殺人鬼の事はわざと放置してるんじゃないかなと思いました。
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