第86話 グレートリセットについて聞いてみた(2)
前回からの続きである。
『それでだ、地上での建て替えの動き──ナルトが7月あたりから見える形で出てきたという話をしようか』
「それが知りたかったんですよ」
『まずは今年(2026年)2月28日に始まったホルムズ海峡事態だ。イスラエルによる国際法無視のイラン攻撃に、アメリカも宣戦布告どころか最後通牒もないまま「爆弾で交渉する」と始めた第二次イラン紛争だ。それに対抗する形でイラン革命防衛隊が即日ホルムズ海峡を封鎖してから半年以上が経った。メディアはいっさい報じてないが、今のところはアメリカの負け戦だ』
「激しく爆撃してるので、圧してませんか?」
『勇ましく「爆弾で交渉する」と言って軍を動かしたトランプが、どうして会談での話し合いを求めて一方的に解決のための資金提供まで持ち出したと思う? あれは何と言い訳しようと、事実上の賠償金だ。だから今はアメリカが負けてるんだよ』
「戦力を見るとアメリカの方が圧倒してますから、にわかには信じられない話ですが……」
『ならば日本の第二次上海事変(1937年)と比較してみろ。日本は世界の雛形。日本で起きたことは、必ず世界でも起こる。あの時の日本は優勢に戦って、あと少しで蒋介石の率いる国民党軍を壊滅させるところまで追い込んでいた。ところが戦費拡大を抑えたい大蔵省が、いきなり軍事予算を止めちまったんだ。そのせいで日本は軍事物資の輸送にも事欠いて、まさに戦っている最前線で弾薬が枯渇するという、本来あってはならない事態に陥った。そのせいで、あと一歩のところで蒋介石を取り逃がしてしまったんだぞ。そのあとは歴史にある通りに日中戦争が長引いて、ズルズルと泥沼へと引きずり込まれている。大蔵省が軍事費が膨らんだのを見て閣議に逆らった結果、そのあとで何百倍もの戦費が必要になる大失態を招いたんだ』
一時的な出費をケチって大きなチャンスを取り逃がしただけでなく、そのせいで将来的にはケチった金額の何百倍、何千倍ものお金が出ていくという結果。これこそ愚か者の極みである。
このように国会が決めた方針に逆らう大蔵省の悪癖は、1920年頃に始まった。第一次世界大戦中の日本は大戦景気に沸いていたが、戦争が終わって特需景気が終わると、一転して戦後恐慌と呼ばれる深刻な大不況に見舞われた。平成不況のように株価や収入が3分の1、物価が半分にまで下がるデフレーションに苦しむことになり、それで財産を失って自暴自棄になった資産家の一部が、今でいう「無敵の人」化してテロリストになるという世紀末的な世の中になった。
そこで大掛かりな財政出動をして景気を下支えしようとしたのが、高橋是清などの当時の政府の重鎮たちだ。その時に進められようとしたのは鉄道のレール幅を1067mmから、国際標準軌である1435mmへと拡幅する『広軌改築計画』である。これは明治時代には狭いレール幅では経済成長のネックになるほど輸送力の限界が見えていたため、最初にレール幅を決めた大隈重信が「一世一代の不覚」と頭を抱えていたものだ。日露戦争の時にもレール幅1524mmのロシアに対して日本の1067mmでは運べる物量が圧倒的に少ないため、輸送力の小ささを痛感させられたのである。
ところがレール幅を広げる計画に先頭立って反対していたのは、財政緊縮派であった高橋是清だった。そのため積極財政派で日本の「近代資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一とは何度も激しい議論を闘わせる犬猿の仲だったと言われている。
そんな高橋是清ですら、戦後恐慌では財政出動が必要だと感じるほどの経済危機だった。それなのに大蔵官僚たちはレール幅の拡幅計画を含めて、すべての財政出動を潰すように抵抗するだけでなく、新聞記者出身──今でいうタレント議員であった原敬をそそのかして政界の裏で暗躍し、彼を首相に据えるだけでなく、財政出動をも潰すことに成功させてしまった。高橋是清にとっては、これまで同じ財政緊縮派として可愛がっていた飼い犬に噛みつかれたようなものだ。この国会を無視した大蔵省の暴走は、その後の関東大震災、昭和恐慌、世界恐慌と立て続けに来る経済危機でも緊縮を続けて経済を立て直そうとはせず、ついには太平洋戦争へと続く四半世紀の長い不況時代を生み出している。
ちなみに長い歴史上、不況時に20年以上緊縮財政をやらかして国力を衰えさせた例は、戦前と平成の日本のみである。多くの国は10年〜15年も不況が続くと国力が衰えたところを周辺国に狙われて滅んでしまうか、戦争を仕掛けられたためにイヤでも軍事費という積極財政が始まることで景気を取り戻すのが普通である。もっとも日本という国は長期不況の間に戦前は欧米各国から、平成以降はアメリカから2回、中国から3回もの経済戦争を仕掛けられている。中国からの3度目は今年(2026年2月)から現在進行系だ。だが、日本社会は日本人の特性と経済的な体力があったために緊縮財政のまま乗り切れてしまったことが、日本国民にはいろいろな意味で不幸だったのかもしれないが……。
『それと同じことが、今のアメリカでも起きている。こちらは第1次トランプ政権時代の2017年から、長年にわたって軍事費を削って弾薬の在庫量を減らしてきたツケが回ってきた。継戦能力を考えて戦争が始まっても1年は保つはずのミサイルが、ホルムズ海峡事態の発生から5か月で8割を使い尽くしてしまった。第二次上海事変の日本軍とは別の理由だが、弾薬不足で身動きが取れなくなった意味では同じ歴史を繰り返している』
「軍事費を削った理由こそ違いますが、似たような歴史が繰り返されてますね。さすがにアメリカが負けたとか、事実上の賠償金という言い方には疑問が出ますけど、未来からどのように見えるかを考えると頭からの否定もできませんが……」
『トランプ政権は第1期の時には過去の大統領とは違い、ただの1つも新たな軍事行動は起こしていない。それも経済戦争を含めてだ。前任のオバマの起こした戦争を、軍事衝突から軍事圧力程度に後退させ、海外に駐留する軍人たちの数を大幅に縮小させてきた。だからこそ第1期では軍事費を減らせたんだ』
「中国や北朝鮮とも話し合いで決着をつけようとしてましたね。さすがに対話に応じないシリアやイランの武装組織とは、そのまま武力による強硬手段で応じてましたけど……」
『トランプは第2期になっても最初のうちは第1期と同じように経済政策を優先にして、軍事費を縮小しつつ抱えている国際紛争を話し合いで解決させようとしてきた。そのついでに海外にある米軍基地の駐留経費を減らすために、日本や韓国、オーストラリアなどの個別に軍事同盟を組んでいる国や、NATO(北大西洋条約機構)のメンバー国に軍事費の負担を増やすようにも求めている。ロシア・ウクライナ戦争で支援を求めてくるゼレンスキーにも、アメリカばかりに頼るなとどやしつけてたしな』
「第2期が始まるとすぐに世界中の輸入品に関税をかけまくったのには驚きましたが、あくまでもいっさいの軍事介入はせず、経済政策に力を入れているという感じでしたね。ところが今年(2026年)に入ったと同時にベネズエラの首都カラカスに大規模な爆撃をしてマドゥロ大統領夫妻を拘束したのを皮切りに、イランやナイジェリアなど7か国を次々と爆撃したんですよねぇ。その中でもイランを爆撃して始まった第二次イラン紛争ではホルムズ海峡が封鎖されて、世界的な原油価格の高騰を招くことになって……」
イラン紛争は昨年(2025年)6月にイスラエルが、いきなりイランにある20か所以上の軍事施設を攻撃したことで始まった。その中にはウラン濃縮施設などの核関連施設も含まれてるが、どちらかというとイランの持つ弾道ミサイルを破壊するのが目的だったと言えるだろう。この第一次紛争が始まると原油価格は一時的に跳ね上がったものの、この時は12日間で戦闘が終わったため、原油価格はすぐに元に戻っている。おかげで大きな混乱には繋がらなかった。
ところが今年に入るとトランプはこれまでやらなかった軍事行動を起こして、イランに対しても大掛かりな空爆を始めた。当然、イランはすぐさま報復措置としてホルムズ海峡の通行禁止を通告し、それを無視しようとした船舶には民間の商船であろうと関係なくミサイルや無人機などで攻撃している。その結果、すべての船がホルムズ海峡を通れなくなり、世界的な石油不足と石油高騰を招くことになった。
『そのホルムズ海峡の封鎖は、今になってアメリカの国際的な信用を失う大きな材料になってるよな』
「封鎖したのはイランですよ?」
『原因を作ったのはアメリカだ。しかもイラン攻撃は宣戦布告どころか最後通牒すらない完全な奇襲攻撃だ。そのために不意を突かれて、イランは最高指導者のハメネイ氏を含めて30人以上の要人が逃げる間もなく殺された。他にも軍事施設と間違えて女子小学校にミサイルを撃ち込み、一度に180人もの民間人──それも子供を殺す事件を起こしている』
「事件のあった時の報道では、小学校の屋上に高射砲が据えられていたとか、レーダーが置かれてたとありましたが……」
『それは真っ赤なウソだ。小学校のあった場所は15年前(2011年)まで軍事施設として使われていたが、そこが閉鎖されたあとは小学校や病院などが建てられている。アメリカはそれを知らないまま15年以上前の情報を基に、衛星写真でその中でもっとも大きな建物を攻撃したのだろう。もしも病院の建物の方が大きかったら、爆撃されたのは病院だったかもしれん。こういうことの積み重ねが、5月を過ぎたあたりからジワジワとアメリカから信用を奪い始めているんだ』
「5月から? 事件が報道された3月の頭でも、世界でガソリン価格が急騰した3月下旬から4月じゃなくて? なんで5月?」
『アメリカやヨーロッパでは5月8日が第二次世界大戦の欧州戦線での戦勝記念日であることから、毎年のように特集番組が作られたり流されたりするんだ。そこでドイツも日本も宣戦布告をする前に奇襲をした卑怯者というフレーズが使われるのだが……。そこで今回のイラン紛争が宣戦布告どころか最後通牒すらない奇襲で始まったことが蒸し返されるだけでなく、実はアメリカは自分から戦争を仕掛ける時に、一度も宣戦布告をしたことのない国だったことが問題になってきてる。それに戦争をしたい時、相手から仕掛けるように裏工作や外向的な挑発をしてきた国だともな……』
「日本も太平洋戦争を起こす9年前の1932年から、あれやこれやとやられてましたからねぇ」
1932年、アメリカの大統領選でフランクリン・ローズベルトが勝った直後からだ。当時のアメリカは自分が発起人となって国際連盟を作っておきながら、自分では加盟してなかった。そんなアメリカが加盟国に裏から手を回して、当時の常任理事国であった日本を追い出すことに成功した。翌年の1933年3月27日の事件だ。中国大陸では武装勢力に武器や資金を与えるだけでなく、「アメリカとは関係ない有志による義勇軍」という名目で日本に対してゲリラ戦を仕掛けていた。そこはアメリカの軍需産業にとっては、新鋭機や新型兵器を実践投入する格好の試験場ともなっていた。
ちなみに当時のアメリカがそこまで日本を敵視する背景には、1905年の日露戦争の勝利がある。
日露戦争前のアメリカは中国大陸に権益を持っていた。アメリカの世論は日本を応援して一部の財界人も日本の国債を買って戦費の捻出を支えていたが、政治の世界では東洋の小国が大国ロシアに勝てるはずがないと高みの見物と洒落込みつつ、ロシアが勝ったあとの米露の権益バランスを模索していた。
ところが思惑に反して、日本が日露戦争に勝ってしまった。時の大統領であるセオドア・ローズベルトは、表向きはポーツマスで結ばれる講和会議の仲介役に名乗りを上げたが、その目論見は日本が強くなりすぎないように邪魔をすることだった。それは同席した実業家のハリマンが、満州から得られる権益の半分を起こせと言い出したことや、アメリカの用意した「ロシアに対して賠償金は求めない」という提案からも明らかだ。しかも「これを受け入れなければ欧米列強が次の相手になるぞ」という脅しまでかけてきて……だ。さすがに多くの血が流された以上、政府レベルでは何もせず高みの見物を決め込んでいたアメリカにタダで満州の権益を渡すことなどできない。それでも賠償金を受け取らないという、戦勝国の日本にとっては屈辱的な調停案は呑まされることになった。
アメリカ政府は日露戦争が終わったあとも、日本に対してずっと強い敵意と悪意を向け続けてきた。それがついに石油の禁輸によって逃げ道を塞がれ、太平洋戦争へと誘い込まれていったわけだ。
『戦後はアメリカが覇権国になったこともあり、戦前戦中のアメリカのやってきた暴挙や国際法違反は表立って指摘する者がいなくなった』
戦時中のアメリカは、勝つためなら平気で国際法を無視する国だった。民間人への攻撃は禁じられているのに、敵国である日本やドイツへの都市空爆や原爆の投下をやっただけではない。1944年のノルマンディー上陸作戦の時には上陸地点を特定させない欺瞞作戦のためだけに、味方であるフランスとベルギーにある沿岸の80か所以上の都市、集落を無差別爆撃して3万人以上の市民を殺してしまった。その事実は戦後も長いこと伏せられ、映画『史上最大の作戦』では完全に隠蔽、『プライベート・ライアン』では破壊されたサン=ローなどの街が舞台として描かれてはいるものの、そこが破壊された理由については何一つ触れてない。
歴史の本でもあまり触れられてこなかったが、第1期のトランプ政権での情報公開が影響したのか、最近、それも10年ほど前あたりから、その事実が急に語られるようになったと記憶している。
『それに戦後も最後通牒を宣戦布告に代わるものという理屈で通してきたのだが、さすがに今回は奇襲を成功させるために最後通告すらしてなかったからな』
「トランプ大統領による情報公開でUSAID(アメリカ国債開発局)やCIA(アメリカ中央情報局)の悪事が明るみにされたことも、名実ともに戦前の世界最大のならず者国家に戻ってしまいましたね」
というか、今の国連常任理事国のうちアメリカ、ロシア、中国の3国がそろって自分勝手で国際条約を無視する現代のならず者国家であるだけに、国際連合そのものの存在価値がゆらいできてるんだよねぇ。残りの常任理事国も、イギリスはブリカスと呼ばれるほどの二枚舌、三枚舌外交で国際問題を作りまくった詐欺国家だし、フランスは自国の独立と影響力を確保するためなら国体思想(国柄やその国のあり方を決める根幹の概念)ですらコロコロと変えてきたカメレオン国家だし……。
しかもアメリカは今回のイラン紛争の件でICC(国際刑事裁判所)がアメリカの戦争犯罪を調査したことに対して、「ICCを解体する」などと言い出したり、ICC幹部の逮捕状を作ってアメリカ国内にある資産を凍結したりするほどの傲慢さを見せつけたりして、更に国際的な信用を失っている。
ちなみにICCは第二次世界大戦におけるアメリカの無差別爆撃や原爆投下を『人道に関する罪』とし、東京裁判やニュルンベルク裁判も『事後法による違法裁判』として判決を無効としている。そのICCには世界125か国が加盟してるし、アメリカとイスラエルを除くOECD加盟国が、すべて加盟してる国際機関ではあるのだが……。アメリカ、ロシア、中国、イスラエル、インド、インドネシアなどの主要国や人口の多い国が未加盟や脱退したことから、世界人口的には半数をカバーできてない。そのために国際機関としては力が弱いという問題を抱えている。
『信用という意味では、ホルムズ海峡の封鎖でサウジアラビアの経済に大きな影響を与えたことが大きい。これによってアメリカドルの信用も大きく失われたことになったからな』
「サウジアラビアの経済とアメリカの信用の間に、何か関係があるのですか?」
『もちろんだ。アメリカとサウジアラビアの関係は、ペトロダラー協定によって成り立っていたものだ。このペトロダラー協定はニクソンショックで続けられなくなった金本位制に替わる通貨システムとして、1974年に石油産油国に対して軍事支援をする見返りに石油の取り引きをドル建てで行うように求めたものだ。いわゆる石油本位制だな。これによってアメリカは莫大な為替手数料を手にするとともに、世界の石油取り引きを裏から支配できる経済支配体制を完成させていたんだ』
「サウジアラビアは、アメリカと軍事同盟を結んでましたっけ?」
『湾岸戦争が終わった2003年にキリスト教徒に対するイスラム教徒の憎悪が強くなったため、サウジ政府と米軍の間で軍事同盟を解消する話し合いによってサウジアラビア内に置かれていた米軍基地を棄てて完全に撤退することになった。とはいえペトロダラー協定は50年の契約であったため、そのまま続くことになった』
「ペトロダラー協定は石油産油国に対する軍事支援が見返りですよね?」
『何も国内に米軍基地を置くだけが軍事同盟じゃない。サウジアラビア国内には基地がなくても、お隣のクェートやアラブ首長国連邦などに大きめの軍事基地が置かれてるからな。そこは政治的な判断だろう。ところが中東にとっては2017年のカタール危機を皮切りに民主化を進めたい各国の知識人とイスラムの伝統を守りたい武装勢力の対立が激しくなってきたため、サウジアラビアは2019年に再びアメリカに軍事基地を置いてもらうことにしたんだ』
「だけどサウジアラビアはその甲斐もなくホルムズ海峡を封鎖されて、石油を輸出できなくなってますよね?」
『そこは問題ない。サウジアラビアはペルシャ湾の地政学的なリスクを考えて、米軍基地に戻ってもらった2019年に、それまで天然ガスのみだった紅海側の港でも石油の積み込みが行えるように、パイプラインの一部を原油用に転換してもいたんだ。さすがにまだ施設が充実してないのでペルシャ湾にある港の完全な肩代わりはできないが、すぐに石油を減産せずに済むぐらいには紅海側へ石油を回せるみたいだぞ』
「でも、長引くと減産せざるを得ないと……」
『長引けばそうなる。それに紅海側の港はフーシ派に襲われてるから、それによる影響も気がかりだ』
「ところでペトロダラー協定の方は、どうなってますかね? 1974年から50年ですから、2024年には更新時期を迎えますよね。見返りの軍事施設を置くわけですから……」
『いや、サウジアラビアは更新を拒んだぞ。ペトロダラー協定では石油価格はテキサスで決まると言われるほどアメリカの石油メジャーの支配力が強いため、サウジアラビアを始めとする産油国──OPEC(石油輸出国機構)には主導的な価格決定権がなかったからな。だから、サウジアラビアは価格を決める権利を取り戻すとともに、そこで石油本位制を終わらせたというわけだ』
「その割にはまだ石油メジャーの示す先物価格で取り引きされてるように見えますが……」
『価格の決定権があると言っても、何事にも市場価格がある。その金額がおかしくない限り、そこから大きくハズレることはできんさ』
「おかしな金額って、最近2年間の米価格みたいな……ですか?」
『そうだ。中間業者が入ってくる市場では高止まりしてたが、その中間業者を排除した限定ルートでは高騰前の価格のままだっただろ』
「そういう話は聞きましたけど、それを確認できない一市民には、ただの都市伝説ですよ」
『ははは。そこは難しい問題だな。──で、話を戻すが、アメリカとのペトロダラー協定を解除したサウジアラビアは、ホルムズ海峡事態への対抗策として、8月7日にメッカ協定という共同防衛協定をトルコ、パキスタンと結んだ。加盟国に対する武力攻撃があったら、協定に参加した3か国すべてへの攻撃と見なしていっせいに反撃するというものだ。いわゆる「中東版NATO(北大西洋条約機構)」と呼ばれてるものだ』
「イラン問題やイスラエル問題が大きくなってますからね。それとイスラム原理主義の武装勢力も……」
『それもあるだろうが、これはサウジアラビアがアメリカを信用できなくなったからこそ始まった軍事同盟だ。第2次トランプ政権が「アメリカ・ファースト」と言って関税圧力をかけたり、66もの国際機関から脱退しようとしたり、軍を撤退させて安全保障を疎かにしたりしたからな。サウジアラビアに限らず多くの国がアメリカ・リスクを回避するためにアメリカ離れをする動きが大きくなってきた。具体的には軍事力の自立や兵器の独自開発、交易を自国通貨建てにする脱ドル化、そして輸出先のアメリカ依存を見直して交易相手の多角化などを模索し始めている』
「アメリカの信用ですか。幕末の学者たちがアメリカの偽善について見抜いて、いつか自分の語る偽善でアメリカは自分の首を絞める日が来るとか言ってたらしいですけど、それが今ですかね?」
『日月神示にある「学問の知」「学の鼻高さん、鼻ポキン」「金を積んでも、どうにもならん」だ。改心できんエリートが勝ち組同士で共食いして、一人勝ちするまで互いに搾取を続ける醜い時代が今だ。そのあとの反撃を恐れて「負け組は死ね。地球は3〜5億人ぐらいがちょうどいい」などと身勝手なことを言い出してる時代だな』
「それを言い出した人、呆れるほど性根が腐ってますよねぇ」
『そういう連中が「九分九分九厘で鼻ポキン」となる大グレンが迫ってきてる』
「それは日本をおかしくしている財務官僚や、財界人もですね」
『「学問の世は済みたぞ、学者は閉口するぞ。商売の世も済みたから商売人も閉口するぞ」だな。IQが高ければ必ずしも良いとは言わんが、IQは考える力だ。それが低い連中が受験の英才教育によって高い学歴を得やすくなってるのが今の時代だ。日本は世界に先んじて、低知能高学歴の者がエリートとなる良くない時代に突入した。遅れて世界も1980年代に学問の民主化などという間違った改革を始めたせいで、エリートが急速に劣化している』
「学問の民主化……ですか?」
『旧来の教師が一方的に学生の成績を評価するというやり方を封建的と見なして、学生の側からも教師を評価するべきだという理想論だ。それで能力不足の教師を学生投票で排除できれば理想的だったのだが……』
「学生の側に正しく評価できる理性がありますかね?」
『ないね。実際には教育熱心な教師が熱苦しいと疎まれたり、容赦なく不合格を出す厳しい教師ほど逆恨みされて悪い評価を受けて大学から追い出されるという衆愚化を起こしてしまった。そのせいで学校側は成績の悪い学生であっても、簡単には留年や退学にはできない圧力で身動きが取れなくなった』
「まさに衆愚化ですね」
『更に2001年以降になると政治的に正しいを教育現場や受験にも押しつける動きが出てきた。その結果、世界一の名門であるハーバード大学ですら、性別、出身地、人種などの多様性のためだけに、カテゴリー別の定員を埋めるために分数の計算すらできないような学生でも合格させ、しかも留年も退学もさせられないまま学位を与えて卒業させる事態に追い込まれている。そのせいで在学中には講義についてこれなかった学生でも、ハーバード大卒という肩書きで社会へ出てエリートになっている』
「ハーバード大云々の話、最近になって急に出てきましたよね」
日本でもポリコレとは関係ないが、文部科学省の「高学歴社会にするために大卒者の割合を増やしたい」という愚かな目的のために、1990年代の半ばから規制緩和してたくさんの4年制大学を作らせただけでなく、すでにあった大学にも学業不信による留年や除籍を禁じる圧力をかけてきた。それまでの大学では卒業生の学力レベルを保証するために、大学や学部によっては成績の良くない学生をどんどん落として、卒業する頃には学生の数が3分の1にまで減ってることがあった。そういうところですら入学さえできたら4年で自動的に卒業できるようになったら、どのくらいの学生がマジメに勉強するだろうか。
ところが海外では日本以上に大学生の学力が劣化したところが出てきたわけだ。
『日本では政権が変わっても、事務次官などの政府幹部ポストは各省庁のキャリア官僚が占めるため、行政の体質を変えるのはなかなか難しいところがある。ところがアメリカはキャリア官僚の身分は保証するものの、事務次官どころか各省庁の政府高官ポストを大統領の方針に沿って根こそぎ入れ替えてしまうんだ。その中にはイーロン・マスクのような、時の実業家が何人も政権入りすることになる。大統領に誘われて、報道官としてニュースキャスターや芸能タレントが政府高官に抜擢されることもある。とはいえ、その数は3000人〜4000人という大人数だ。さすがに大統領がすべてを決めることはできない。そこで各省庁の主要ポストを任された者が、自分の仲間や人脈を使って集めた者たちを引き連れて政府高官の残ったポストを埋めていくことになる。その中には30代、40代という若いエリートも大勢いる』
「つまり、その中に肩書きだけで、学力が伴ってない人が……」
『いたから問題になって、話題にされてるんだ。入れ替えられた政府高官全員にちゃんとした実績があれば理想的だ。だが、数か月でそれを求めるのは無理だ。だから、人脈や最終学歴で適当な人材を引っ張ってくることになる。ところがかつては能力を保証していた最終学歴が、今ではまったく意味をなさなくなっている。むしろ呼びかけに応じてすぐに動けるような人材は……』
「最終学歴という肩書きだけで、ポストを与えても仕事のできない無能だった可能性が高いと……」
『そういうことだ』
このウワサがわざわざハーバード大の名前で流れてたのは、実際にあったからだろう。ポリコレの多様性にある出身地は、留学生の出身国だけの話ではない。アメリカ国内にある、おそらく東海岸地域、中部地域、西海岸地域などの州や地域ごとの区分けもあるようだ。それが始まった2001年以降となると、今は45歳以下の若手エリートだろうか。だが、留年や除籍退学の減った1990年代までを考えると、50代にもそういう怪しい人材がいるのかもしれない。
「それで、グレートリセット……というか建て替えの動きですが……?」
『着々と進んでるぞ。今は動きが見える形で出てくるのを待つところだ。急に全面的な円高が始まるか、その前にアメリカ発の株式の暴落が始まるか……』
「リーマン・ショックみたいなことが起こりますかね?」
『その可能性は否定できんが、地上の建て替え──ナルトが経済の混乱から始まるとは限らん。中東に続いて、東アジアでも軍事衝突が起こる可能性も出てきてる。ヨーロッパでもだ』
「いよいよ第三次世界大戦が始まるんですか?」
『そこはまだ安心できないが、高市政権に変わってから日本の政治が動き始めたので、最悪の事態を回避する動きは出てきている。闇の勢力はグレートリセットを起こすためにも仕掛けようとしてるが、今は破滅的な第三次世界大戦は、ほぼ起こらない世界線に入った』
「破滅的じゃない世界大戦なんてあるんですか?」
『際限のない核兵器の応酬になったら、文明そのものが崩壊してしまうだろ。今の世界線はそのような世界大戦にはならず、核兵器は使われないか、使われても限定的で済むという未来に向かっていると見ている』
「懸念されてる日中戦争や日韓戦争は?」
『それはどちらも不可避だ。あとは日本の政治と戦争が起きた時のインドの動き方で、世界大戦が破滅的なものになるか、次の時代につながる紛争規模の創造的破壊で済むかという状況だ』
「日本の政治と、インドの動き……ですか?」
『日本に関しては、日月神示にある「日本の人民良くならねば、世界の人民良くならんぞ、日本の上の人良くならねば、日本人良くならんぞ」ってアレだ』
祭りの巻 第16帖にある文言だ。
「日本人が良くなったとして、それでどうして世界が良くなるのですか?」
『理屈は単純だ。きみたちには日常すぎて思いもしないかもしれんが、日本人というか日本語には世界を変える力がある。日本語には言霊が乗ってるからだ。だから「正しい日本語を使え」「良い日本語を使え」「カッコつけだけのカタカナ言葉はやめろ」だ』
このあたりは第80話をご参照願いたい。
『それに日本という社会の品格の高さだ。「品格」というと自虐思想に毒された人たちは拒絶するだろうが、海外から見た日本の社会は、幕末の頃から清潔で人々に教養と秩序があり、それに加えて安全で食文化も豊かという天国ような理想の世界だ。今の日本での暮らしは地獄の最底辺にされているが、旅行に来て見て回るだけなら世界の模範となっている事実は間違いない。日月神示が最初に示した「日本はお土が上がる、外国はお土が下がる」は始まってるぞ』
最後のは上つ巻 第1帖の文言である。
『とはいえ今の日本社会は腐りきった官僚機構や目先の損得しか見なくなった大企業経営者たちによって、30年もの長きにわたって地獄の最底辺に置かれてきた。その裏では闇の勢力が暗躍して、日本から多くの富を貪り盗ってきた。表の顔ではそういう連中から日本を守ろうとしてるように見せながら、裏の顔では巨悪を覆い隠していた裏切り者もいる。日本神話の神々の中にも、実は悪に通じていた裏切り者がいたようだがな。それが少しずつ暴かれようとしている』
「そういう話は確認は取れませんけど、あちこちから聞かれるようになりましたね」
『さっきも言ったが、高市政権になってからようやく政治が正される動きが出てきた。政治が自らの力で膿を出して正常化しないと、一般市民がいつまでも苦しい生活を強いられて本領を発揮できない。きみたち日本人には、ただ普通に暮らしているだけで、自然と世界を変える力がある。それに気づいた闇の勢力は、何かと難癖をつけて日本文化を壊そうとしている。日本の中にも裏切り者がいて、日本らしさを壊す方向へ世論を動かそうとしている。とにかく連中は日本人が力を取り戻すのを恐れているんだ。だからこそ闇の勢力は工作員を送り込んで、日本を地獄にし続けようと悪知恵を絞っている』
「これまで、好きなようにやられてましたね」
『表向きは……な。それに日本人には当たり前だが、もう1つ世界を変える大きな力として工夫する力を持っている』
「工夫する力? そんなもの、どの民族にもあるはずですよね?」
『それは日本人が思ってるほど大きくない。理由は日本が災害大国のため、常に変化を求められてきた……というか強いられてきた社会だからだ』
「変化って、資本主義の基本じゃないですか。赤の女王理論です。同じ場所にいたかったら、常に走り続けろって……」
『それは物事の一面しか見てないぞ。赤の女王理論は現状維持のためのたとえ話だ。川の流れで考えてみろ。見た目は変わらないが、流れる水は1つとしてそこに留まってはいない。人の暮らしも同じだ。誰もが歳を取るし、いつかは病気にも罹る。建物も道具も経年劣化するものだから、いつかは新しいものに換える必要がある。街に住む人たちも移り変わっていく。そんな中でいつまでも若いつもりで、古い道具を使って商売を続けるわけにはいかないというだけの話だ』
「いつまでも古いパソコンで仕事を続けるんじゃないって感じですね」
パソコンも古くなるとOSのアップデート対象外にされるとか、周辺機器が壊れると接続できる機種が売ってないとかあるからねぇ。
『だが、俺の言いたい変化は、世の中の移り変わりじゃない。日本人は困難や問題が起きた時の対応が特殊なんだ。海外では災害は一生に一度のものだから、被害が出てもただ復旧することだけを考えやすい。たとえばそれが悪意のある人災で起きた場合でも、原因となる人物やグループを排除できれば元に戻ると考えて自分が変わることをしない。相手の理不尽には、こちらも徹底抗戦。自分が何かを変えたら、それは負けを認めたことになる。それが普通だ』
「自分を変えない……ですか。日本では『自分を変えれば世界も変わる』と言いますよね」
『まさに、それが日本人の強みだ。日本では災害が多いから、誰もが一生のうちに何度も身の回りで大きな災害を経験する。だから、ただ復旧しただけでは、また同じような被害が出てしまうと痛感してきた。それゆえに問題が起きたら、次に同じことが起きても大丈夫なようにと、何らかの対策を講じて変わっていくのが日本での普通だ。それが天災ではなく、人による悪意から来る理不尽な困難でも同じだ』
「悪意というと、日本が強くなるたびに欧米や中国が始めるルール変更がありますよね」
『そうやって日本が不利になるようにルールを変えるのは、欧米がよくやってきたことだ。普通はルールを作る方が有利だ。自分に都合の良いようにルールを変えれば、相手が対応してくるまで最低でも10年ぐらいは優位でいられる。その間に革新的な新技術が出てくれば、相手が追いつくまで更に1世代分の余裕が生まれるはず……だった。ところが日本だけは数年でもっと強くなって、むしろルールを作った方が自分の作ったルールで苦しむハメになるのが定番のようになってきた。日本が新しいルールに対応したところで、欧米では自分たちは誰もルールを守れなかったからとルール変更を撤回するケースも増えてきてる』
欧米によるルール変更というと、日本選手が優勝するたびにルールを変えるスポーツや、日本車を締め出すために自動車競技団体がレギュレーションを何度も変えてきたのはよく聞く話だ。
近いところでは国際柔道連盟が今年(2026年)1月、安全対策という口実で体格の小さな日本選手が不利になるように組み手争いや寝技の予備動作が引っかかるように制限を加えてきた。これで体格の大きな欧米の選手が有利になると思っていたようだが、むしろ日本選手は戦い方を変えて柔道本来の一撃離脱の投げ技による一本勝ちを連発するようになった。観客にとっては派手で面白くなったけど、柔道連盟にとっては日本が圧勝してる上に競技時間が短くなるという問題が起きているそうだ。
他に有名なところでは1960年代前半、日本製の安い腕時計が市場を席巻してきたため、スイスの時計工業界が日本向けに輸出していた精密部品の価格を10倍以上に引き上げて衰退させようとしてきたケースもある。ところが日本は自力でその部品を作ってしまったり、機械式に替わるトランジスタ時計やクォーツ時計という電気式時計を生み出したりして、もっと安くて正確な時計を量産するようになった。この時のクォーツショックによって、スイスの時計工業界は逆に自分たちが衰退するハメに追い込まれた。
また航空宇宙産業界や自動車業界でも2000年代に日本企業を締め出そうと、アルミ製品を前提とした国際規格や構造計算を変更したり、品質の向上と称して高い工作精度を求めたりしたことがあった。ところが日本企業はそれに対して炭素繊維でもっと高い基準のものを出したり、欧米よりも一桁以上高い工作精度の製品を出したりしてきた。しかも、その精度を測定できるのが日本製品しかないというオマケ付きでだ。おかげで、その後は日本製品がないと、もう産業が立ち行かない状況へと追い込まれている。
「最近、『日本をあまり刺激するな』と言う人も出てきましたよね」
『日本を締め上げれば締め上げるほど強くなって戻ってくるし、そのせいで自分たちの方がボロボロになっていくのだから、そりゃあそう言いたくもなるだろうさ。それに日本人は普段おとなしいだけに、ブチ切れて怒らせた時が怖い。それを太平洋戦争で思い知ったアメリカは日本が立ち直れないように根深い呪いを仕掛けてくれたし、中国、ロシア、イギリスは完全に日本との戦いがトラウマになってる』
「自分たちは軍備を拡大してるのに、中国とロシアは日本が軍備を拡大しようとすると拒絶反応を起こして喚き散らしますもんね。アメリカはアメリカで日本に軍備を拡張するように求めながら、そのための条件を好き勝手言ってきてますし……」
軍の指揮権をアメリカに与えろとか、軍事開発したら技術を寄越せとか……。
『まあ、ブチ切れて怒る方の日本はあまり見たくないものだが、日本人が目覚めた時の障害を乗り越えようとする底力は、今以上に神がかってくるだろうな』
「そのあたりが日本人の本領発揮なんでしょうかねぇ?」
そういえば日本は戦国時代の頃ですら、種子島にたった2挺の鉄砲が持ち込まれた年から、半世紀で10万挺もの鉄砲を保有する軍事大国になったんだよねぇ。それなのに同じ頃のヨーロッパでは各国の鉄砲をかき集めても6000挺しかなかったんだ。黄金の国ジパングを目指した大航海時代の始まりから半世紀──第1次植民地化時代早々には日本に到達していたものの、最後まで植民地にできないどころか目論見を見破られて国外追放まで喰らってしまった。その時にはもう日本が強くなりすぎて、黙って従うしかない状況になっていた。
そんな戦国時代の日本に来た宣教師ルイス・フロイスの手記によると、峠の茶屋で売り子をしてた町娘が、会計を暗算でやったとか、店の奥で笑いながら本を読んでいたとか、ヨーロッパの感覚では信じられない教養の高さを見て驚いたという記録を残している。あの頃から日本では庶民の中にも文学少女がいたという、間違いのない文化先進国だったようだ。
余談だがあの当時の御伽草子って、今でいうライトノベルそのものだったりする。町娘が読んでいたのも、そのラノベ……ではなく御伽草子の貸本だったのだろう。
同様にキリスト教を布教しようとした宣教師フランシスコ・ザビエルも、日本では農民ですら翻訳された聖書を読み込んで矛盾をどんどんぶつけてくるので、それに答えられずに頭を抱えていたらしいし……。
『それで、日本の政治が変わり始めてる話に戻すぞ。戦後占領時代のGHQによる日本を弱体化する仕掛けと1973年のCIAによる再占領工作によって、政策を監視する外部委員に外国人もご意見番として入れるように強要してきた』
「そのせいで日本の政治は国民よりもアメリカの顔色を窺ったり、外国を優先したりする政策になりがちなんですね」
外部委員とは政府を監視するために設けられた、学者や影響のある業界の代表などの専門家、有識者からなる市民の代表だ。官僚が身内だけで進めると不正やとんでもない間違いが生まれやすい。だから学者や実業家などの民間の有識者を招いて、的外れな政府方針にならないように目を光らせてもらうわけだ。とはいえ時折選ばれたメンバーが、実績の怪しい御用学者や利権団体だけが呼ばれたなどの疑惑が言われるアレだ。
『アメリカは自分たちがその席を陣取って日本を裏から支配するつもりだったようだが、今は中国人が何喰わぬ顔で入り込んできているな』
「そもそもとして、ご意見番なんて要るんですか?」
『そこは民主主義国家の標準だぞ。そこに外国人を招き入れるのもな。このあたりは企業の社外取締役と同じだ』
「企業の社外取締役というと、その人が仲間を呼び込んで会社を乗っ取ったなんて話を時々聞きますけど……」
『今の日本に足りないのは、外部委員などの仕組みの悪用を防ぐ法律がないところだ。日本はまだスパイ防止法が整備されてないだけでなく、人の善意が前提になってる法律が多いんだ。そのせいで外国人の外部委員による内政干渉や出身国への利益誘導、重要インフラへの安全保障侵害などを完全に食い止める手立てがないんだ。だから相手が悪意を持って乗り込んできたら野放図にやられるしかない状態になってる』
「中華系企業が山を切り崩して中国製太陽電池パネルを並べまくるとか、市民生活に関わる水道事業を外国資本に売ってしまうとか、そんな問題が出まくってますからねぇ」
政府とは少し違うけど、2017年に兵庫県弁護士会の会長に韓国人がなり、そのあとの2019年、近畿地方を中心とする強い推薦でそのまま日弁連(日本弁護士連合会)の会長にまで成りかねなかったという事件があった。同じ年、韓国の最高裁であった歴史をプロパガンダで捏造した慰安婦判決や徴用工判決を受けて国内の在日系や人権派の弁護士たちが日本ならびに日本企業は判決に従えという政治運動が強くなっていたため、その人が本当に会長になっていたらこの事件はどのような展開になっていたか気がかりである。
『今、日本はそういう問題を排除するために、GHQやCIAによって仕掛けられた仕組みを壊して、普通の国に戻ろうとしてるんだ。もちろん、これまでも多くの政治家がそれに挑んできたが、これまでのアメリカの大統領たちや闇の勢力がそれを絶対に許さなかった。CIAに裏工作をさせて、それをやろうとした者たちの政治家生命を潰してきた。だが、トランプだけは違っていた。トランプは政治的な感覚よりも商売人としての感覚から、日本を普通の国にした方がアメリカの負担がなくなると考えている』
「だからアベノミクスの時の改革も、ある程度は軌道に乗ってたんですね」
『日本を弱くしておきたい闇の勢力にとってトランプは目の上のタンコブかもしれないが、日本にとっては普通の国に戻る大きなチャンスになった。そのおかげで経済は上向きになったが、その恩恵は庶民に届かないまま、次のバイデン政権に変わってまた普通の国に戻る動きは潰されたけどな。それがまたトランプの時代に戻ったことは大きい。それに今回は闇の勢力自体の力がグレートリセットを必要とするほど落ちてきている』
「今度こそGHQの残した、日本を弱体化させる呪いを払拭できますかね?」
『そこは庶民からは声を上げたところで、闇に染まった連中の耳には届かないから見守るしかないな。その最たる存在である財務省と日本銀行は今、政策金利の利上げも国債発行もためらってる』
「おかげで円安によるスタグフレーションが起きてますよね」
『その円安によるコストプッシュ型のインフレを抑えるためには、金利を上げて円高へ誘導する必要がある。だが、今の景気状態でそれをやったらタダでさえ設備投資に消極的な企業が、何も設備投資しなくなるどころか人員整理を始めて街に失業者を増やしてしまう。かと言って世の中がインフレを許容できるように、景気刺激策としての補助金を出すための国債発行も難しい。どちらをやっても「国債を出しすぎた負担で財政が破綻する」と言ってきた大ウソが何も起こらないことでバレてしまうからな』
「『国の借金が多いから、利子が上がると利払いで破綻する。これ以上国債を出したら借金で国は破綻する』ですね。それを片山財務大臣が、アメリカのベッセント長官に『でも、財政の懸念は、G20の中でもっとも少ないですよ』と暴露してたらしいですが」
『その通り。繰り返して言うが、日本の財政は主要国の中ではもっとも健全すぎるから不況になってるんだ。それなのに金利の引き上げも国債の発行もしないから、代わりに物価だけがジリジリと上がっている。とはいえ利上げを遅らせれば、それだけ円キャリートレードで儲けてきた機関投資家を延命させることになる。もちろん代わりに国債を発行しても多くの機関投資家が助かる。トランプが日本に利上げを求める理由も、そこにあるんだ』
「闇の勢力にトドメを刺したいんでしょうね」
『しかし日本を30年もの長い不況へと追い込んだ財務省と日本銀行にとっては、何かと理由をつけて利上げも国債の新規発行を渋ってきたんだ。世の中が利上げに注目してる中で、利上げをすることも、国債を出して逃げ切るマネもメンツが邪魔をしてできんだろう』
「しょーもない八方塞がりですね」
『八方塞がりといえば、日本人の工夫する力や努力も同じだ。先ほどは日本人の強みや特異性として語ったが、30年の不況の中ではそれが自分たちを苦しめる原因にも成り続けた』
「工夫や努力が無駄だったんですか?」
『その通り。無駄にされたから30年も苦しんだ。どんなに景気が悪くても、工夫したり努力したりする人が少ない世の中だったら、それをできる人だけが成功して豊かになっていく。多くの国ではそれが普通で、他人の成功を真似ることすらせず、ひたすら同じことを繰り返すだけの人が多いんだ。その性格がわかりやすく出てくるのが日々の食事だ。日本人には「食べ飽きる」という感覚があるが、多くの国では毎日同じものを食べ続けてても気にしない人が多い。これは生き物の本能として、日々の食事はもっとも保守的になるからだ。だけど日本人とネコだけは、そういう生き物の本能からハズレてるんだよ』
「災害のことを考えると、突然、一部の食材が入ってこなくなる可能性があるから、日々の食事の時点でいろいろなものを食べられるように慣らしてるのかもしれませんね」
ネコの場合は栄養が偏らないようにするための本能だったかな?
その意味で最近2年の米価格の高騰は、仕掛けた農水省やJAにとってはとんでもない悪手になっただろうね。日本人の本能として、そういう災害リスクのある食べ物には手を出さなくなる傾向がある。おそらく高騰前よりも安くなっても、しばらくは思ったほどお米は買われないかもしれない。
『それでだ。多くの国では努力した者から豊かになって景気も回復していくものだ。ところ日本では努力する人の方が多い社会だ。それをやると差がつかない上に工夫も難しくなる。周りとは別の工夫に挑戦して失敗した者は、工夫に使った時間の分だけ他人より遅れを取ることになるからな。その工夫が間違ってたとは言わん。一時は成功したからこそ周りからの嫉妬などの悪意で潰される者も出てくる。「出る杭は打たれる」というヤツだ。だから工夫も何もせず、愚直に現状維持の努力だけをした人の方が成功する場合もある。それどころか今の不況では労働基準法を守らない方が儲かると多くの企業が始めてしまったから、ルールをマジメに守ってる企業が不利になってしまった。その結果、世の中が無用な努力、苦しいだけの働き方に疲弊して、しかも貧しくなっていった。サボったら遅れを取る。ルールを守っても不利になる。工夫に失敗してもあとから追いつくのが苦しくなる。それどころか多くの人が努力しても成果が出てこない。成果が見えないから周りに「努力不足」や「サボってる」と言われて精神が蝕まれていく。これは経済学でいう「合成の誤謬」という世の中の行き詰まりだ』
「その罠に気づいて声を上げても、最初にルールを守ったり無意味な努力をやめたりした人ほど損をするチキンレースになってますよね」
『まさに誰も得をしない泥沼だ。だから日本ではそんな地獄が30年も続いてしまった。それをようやく法律の改正で業界ごとにやめさせ、マジメに働いた者が損をしないように正し始めている。とはいえ現場を知らない学力エリートが法律に手を加えるついでに、世の中を混乱させるだけの愚かなルール改正まで作りまくってるようだがな』
「北海道で、雪で道路が白くなったら時速30km制限とか……ですか。それを広い北海道でやったら、冬場の物流が崩壊しますよねぇ」
9月から始まった道路交通法改正で、話題になった法解釈である。これはネタではなく、この原稿を書いている時点での北海道警察の公式見解だ。
ゼークト将軍の言うマジメに働くほど損害を増やし続ける「殺すしかない無能な働き者」の典型だ。
さて、話はまだ続くが、今回も長くなったため、もう一度切らせていただく。
あとは結論だけで済む……だろうか?




