表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/34

花咲くマロニエの枝とサボンソウの根

 異世界へ転移した日本人が我慢できないと言えば、まず食事、次に風呂というのが相場かな。そこで今回は風呂…というか衛生観念というか、石鹸について考えてみた。


 その前に、風呂については前提条件をよく考えておきたい。中世ヨーロッパ風の異世界なら気候も乾燥しているんだろう。そうすると、そもそも汗をかかない。汗をかいてもすぐ乾く。だから風呂に入って汗を流すという思考にはならない。教会が風呂を非難したしね。退廃の象徴で不道徳の温床で、しかも贅沢品だったから。


 余談だけど、マリー・アントワネットには入浴の習慣があり、潔癖症と揶揄されたらしい。日本人からすると信じられないけどな。ちなみに彼女の入浴は親の躾の賜物で、そもそも出身地のオーストリアでは入浴の習慣があったらしいんだよね。教会の主張と違うから、何かあったんじゃないかと想像してるけど、そこまでは調べ切れなかった。何か知ってる方は教えて欲しい。


 中世のキリスト教世界はそんな感じだった。しかし古代ギリシアでは公衆浴場が普及していた。古代ローマ人は風呂を愛した。異世界では、どんな教会がどんな教義に基づいてどう判断するんだろうか。


 やっぱりね、いくら汗が流れなくても、体を洗わないのは不潔だ。臭うし、吹き出物やら皮膚疾患の温床にもなる。清潔大好き日本人としては、石鹸で皮脂を落として、適温の湯に浸かりたい。自律神経を整える作用もあるし。言い換えれば、そう、気持ちイイ。


 さっぱりして気持ちイイと言えば服の洗濯もあるな。水や湯に晒して揉んだり叩いたりってのが洗濯法の主流かな。そうすると洗濯板だけでも結構な発明品になるんだが、しかしまぁ、それはそれとして石鹸が欲しい。


 洗濯物を腐ったオシッコに漬けて奴隷が素足で何時間も踏み続けるなんていう虐待みたいな洗濯をしてたのは古代ローマ時代だった。うん。何としても石鹸を発明してやりたいね。


 一番簡単なのはサポニンを含む植物の利用だ。サポニンというのは何種類かの植物性の物質の総称で、いわゆるえぐみとか苦みとかの素になったりする奴らしいが、これには洗浄作用もある。石鹸に似ていて、油と水の仲を取り持つ性質がある。油を包み込んで水中に分散させるんだ。だから油汚れが落ちる。


 汚れ落としとして昔から使われていた木があるようだ。ムクロジとかエゴノキとかサイカチとか。ただねぇ、こいつらはねぇ、東アジアとかの木なんだよね。サイカチに至っては日本の固有種だとか。サイカチの仲間は一応は北米に生えてるようだけど、北米と言ったら新大陸だもんね。中世ヨーロッパの世界観とは合わないね。


 ヨーロッパで汚れ落としに使えそうな植物というとマロニエがある。マロニエエキスと言えば現代日本でも有名だが、それは薬用として。その実は羊毛とか麻とかの脱色に使われていて、汚れ落としとしての使い方もあったらしい。


 もう一つ、サボンソウというのもあった。こいつは根を乾燥させて、やっぱり薬用だ。咳を鎮めて痰を切る作用があるんだとか。水に入れてよく振ると泡が立ち、これも汚れ落としとして使われた。


 うん、マロニエとかサボンソウなら異世界にもよく似合う。


 と、ここまで色々紹介しておいてナンだけど、サポニンは洗浄作用が弱い。やっぱり石鹸には敵わないんだよね。石鹸、作りたいなぁ。


 石鹸の作り方についてはちょっと探せば掃いて捨てる程の記事が出てくる。基本的にはそういうのを参照すればいいんだけどさ、ネットの記事は玉石混交だ。怪しげな解説も腐る程あるので眉に唾して調べてくれ。


 で、だ。理系の人として俺が思うに、石鹸という物は化学工業製品の入り口じゃなかろうか。手作りも出来るが、それなりの知識と技能が要る。まず高校程度の化学知識は必須。そして理系大学の一般教養程度には化学実験の技能が必要だと思う。


 え~、だって油と灰を混ぜ混ぜすればいいんでしょ?と考えるなら、それは甘過ぎる。歴史的には色々あったようだけどね、実際問題として、文字通りに油と灰を混ぜたって石鹸にはならないよ。年単位で時間を掛けたらどうか知らないけどさ。実験室でちょっとやってぱぱっと結果を見るような話にはならないんだな。


 古文書には油と灰を混ぜるって書いてあったらしいんだけどさ。ネットの解説記事は酷いもんで、とても信用できない。専門用語を並べれば何となく信頼性が高くなったような気分になるのか、その点で平然と嘘を書いてる記事まである。


 いいかい。人は自分の見たいものを見る。無知が原因の思い込みを補強するような噂を信じちゃいけないよ。きちんとした知識に基づいて、根拠に納得するまで確認しなきゃ駄目だ。その為に高校程度の化学知識が必要になるんだ。


 説教が入ってゲンナリしたよね。ま、今回はこの辺で勘弁しておいてやろうじゃないか、なんてね。次回はいよいよ石鹸を作ろう。さぁて、化学の時間だ!

2019/12/14

> 文字通りに油と灰を混ぜたって石鹸にはならないよ。

申し訳ない。石鹸になりそうだ。その代わり別の意味で難しい。詳細は下記参照。

異世界化学工業・石鹸はチートの夢を見るか

https://ncode.syosetu.com/n1755ei/28/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ